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第七回 建築家のプレゼンテーション

2018年2月15日、建築家の栗原さんによる最初のプレゼンが実家で行われた。建築家にプレゼンを受けるのは、僕も初めての経験だ。仕事柄プレゼンというと、プロジェクターでパワーポイントを投影しながら説明するのかと想像していたが、そうではなかった。実家にきた栗原さんと事務所スタッフの鈴木さんは、何やら大きな模型のようなものを運び込んできた。さすが建築家、二次元ではなく三次元で説明するのだ。

驚いたことに栗原さんらは5つもプランを用意してきた。第1案から見ていこう(実家居間なので、お見苦しい点はご容赦願いたい)。上にある見出し画像がそうだ。緑色のプレートが父が保有する土地で、その右側に建つ二階建ての瓦屋根の家が実家だ。その前の土地を含む100坪は、今回はプロジェクトの対象ではない。左側約2/3が対象だ。第一案は中央の広場を囲むように箱型二階建を5軒建てる案(右上の一軒は屋根を外して中を見せている)。五家族の一体感ができやすく、いいコミュニティーができそうだ。

次は、以下の写真は第2案。やはり箱型の二階建てが、南東向きに間隔をおいて並んでいる。一軒ずつの独立性が高く、また広々としている。


以下の第3案は、屋根をL字型に接続して一体感を持たせて、内側に広い庭を確保するパターン。1つ屋根の下の建物は、2棟続きは2つと1棟という構成だ。武家屋敷の門のようで、なかなかユニークで面白い。


第4案は、平屋5軒のパターンだ。(左下の1軒は屋根を外して中を見せている)

これまで、賃貸住宅は当然2階建てと思っていたから、この案は意外だった。栗原さんによると、小さい子供に対して目が届きやすいとか、掃除が楽だと言った理由で平屋を望む家族も一定の比率でいるらしいとのこと。なるほど・・・。また、父によると、賃貸住宅で平屋の物件は圧倒的に少ないらしい。

確かに、限られた敷地で効率を重視すれば、必然的に2階建てになる。でもそれは供給者の論理だ。案外需要者のニーズとはズレているのかもおしれない。この時点で、平屋というオプションに惹かれ始めていた。ただ、平屋であるがゆえ、同じ居住面積を確保しようとすれば、込み入った印象の敷地とならざるをえない。それぞれ自動車2台分の駐車場を確保しなければならないので、庭らしいスペースはなくなってしまう。そんな話をしたあと、栗原さんは最後の第5案を示した。

第5案は、平屋で4軒というプランだった。第4案に比べて、やはりゆったりしている。しかし、単純に考えれば、賃料を同じとすれば5軒に比べ二割賃料収入が減ってしまう。ただでさえ収益性は低いのに、大丈夫だろうか。その点を皆で話し合った。

あまり想定していなかった平屋4軒というプランだったが、プレゼン模型で比べると、空間のゆとりの差は歴然としていた。悩みに悩んだが、結局この第5案で行こうと決めた。最後は、自分がそこに住みたいかどうかを基準にした。4軒でも(総投資額が変わらなければ)二割賃料が高く設定できるような、魅力的な建物や空間にすればいいのだ。平屋のデメリットは、居住面積が限られることと、二階がないことによって眺望に不満が出ることだ。

以下は実家二階からの眺望だ(第一回の見出し画像を再掲)。自分の実家ということもあるが、田んぼや山の緑が見えてほっとできる景色だ。平屋ではこういう景色は楽しめないだろう。そのことが少し気がかりだった。

栗原さんは第5案に、居住面積を少しでも広くするようにロフトをつけていた。ロフトを山側にし、小さな窓をつけることで、眺望が少しは楽しめるかもしれないという。

この最初のプレゼンでは、それまで想定しなかった「平屋4軒」でいくことを決めた。そして、眺望を配慮した再提案を1ヵ月月後の3月13日にしてもらうことになった。

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