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第十四回 敷地を定めるための長い道のり

2018年8月31日の打ち合わせで、いよいよ敷地設定、つまり近隣との境界を公式に明確にしなければならないという問題が出てきた。

少しややこしいが説明する。今回のプロジェクトの敷地は5筆(不動産登記簿では、1つの土地を1筆とよぶ)に分割されている。なぜ5筆もに分割されているかの経緯はよくわからない。きっと、江戸時代からの長い歴史の中でそうなっていったのだろう。

建築基準法では、ひとつの土地(1筆)に一軒しか建物を建てることができない。もし、ひとつの土地の中で2軒建てたい場合は、2分割する必要がある。それを分筆という。普通の住宅地であれば、「机上分筆」という手が使える。それは、登記上の分筆はしないが、建築確認申請を通すためだけに敷地を「机上」、つまり紙の上だけで分けることだ。机上なので、あまり費用はかからない。

それに対して、机上ではなく実際に測量して正確に分割し、それを登記することを「分筆登記」という。測量士に測量してもらうため、それなりの費用がかかる。

当初父も建築家の栗原さんも、机上分筆でいけると考えていたようだ。机上分筆で現在の5筆をいったん1筆にまとめ(合筆という)、その上で4軒の建物に対応する4筆に分筆する、その作業を机上でやろうとしていたのだ。

しかし、栗原さんが地域の建設事務所建築課に相談したところ、市街化調整区域では、机上分筆は不可で、登記上の分筆をしなければならないと指摘されてしまった。今回の敷地は市街化調整区域だ。家を積極的に建てさせたくないので、ハードルが高いのだ。

問題は費用がかかることだけではない。机上分筆であれば、近隣との境界は現状をベースに決めることができるが、分筆登記ともなれば公式記録として残るために、より厳密に測量し、境界を近隣住民と正式に合意しなければならない。現状と過去の記録(公図や地積測量図)が必ずしも一致していないため、すんなり合意とはならないかもしれない。いわば、寝た子を起こすことにもなりかねないのだ。

では、境界はどうやって決めるのか?以下、Wikipediaによる説明。

一般に、土地の境界は境界標(筆界点にある永続性のある石杭又は金属標)によって示されるが、設置された時期が古いなどの理由から、正しい境界が示されているとは限らない。そのような場合、地積測量図から判断して確からしい場合には、その境界標の推定力は高いといえる。境界は、境界標および地積測量図のほか、公図、地形、占有の状況等から総合的に判断される。

「・・総合的に判断される。」出来ればお近づきになりたくない言葉だ。

ここで、土地の図面類を整理しておこう。いくつも種類がありややこしい。

1)公図:法務局に備え付けられている、土地の位置や形状を確定するための図面。地番という番号が、それぞれの土地にふられている

2)地積測量図:分筆登記等の際に添付される測量図で、登記所に申請書類として保管されているもの。面積だけでなく、土地の形状や隣接地との位置関係、境界標の位置、地積の求積方法などが記載。確定測量図であるとは限らない(以下サンプル。byイオン銀行)

3)確定測量図:全ての隣地所有者立会のもとで合意され、境界が確定されたもの

4)現況測量図(仮測量図):現況を測量したもの。確定測量図とは違って、隣接地所有者が合意したものではない

今回の敷地では、現況測量図を作成した上で、隣接所有者の立会を経て確定測量図を作成しなければ、分筆登記もできず建築許可もおりない。しかも、公図と現況のズレが大きいところは道路に隣接しており、道路を保有する役所との調整も必要になってくる。

見出し画像は、栗原さんが作成した公図と現況(約40年前に実家を新築した際の現況測量図と思われる)を照合した図面だ。黒点線が現況で、黄色が公図の境界。最下部が道路だ。

さらに、隣接住民のうちの一軒は、ご主人が行方不明になっており、戸主に承諾をもらうのが難しそうだという問題も発覚した。

以上のことが、8/31の打ち合わせで発覚したわけだ。測量するには測量士か土地家屋調査士に依頼しなければならない。栗原さんは既に6社から見積もりを取っており、現況測量と確定測量、分筆登記まででもっと安く提示したH事務所を推薦してくれた。

僕と父は即賛成し、その場でH氏に電話。そして、翌日H氏は実家に来てくれることになった。翌日、父と栗原さんに会ってもらい、今後の進め方を相談することになる。日帰りの僕は同席できない。

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