全景

第十九回 陽当りのシミュレーション

前回書いたように、僕の中では間取りはもともとの案(旧案)で納得していた。しかし、配置図を見た父は、A棟ととりわけB棟の陽当りがよくないのではと疑問を呈した。かねがね父は、「この敷地は陽当りがいいので、西日対策は考えて欲しい」と建築家の栗原さんに要望していたが、陽当りがよくないと言い出したのは、やや意外だった。

配置図を再掲する。

確かにA棟とB棟は、陽当りの良い南東と南西に面した部屋は寝室なので、大きな窓は取らず壁の面積が大きい。したがって、そこから室内に陽射しを取り込むことはあまりできない。それがもったいないという。言われてみれば確かにそうだ。

そもそもこういった配置や間取りになったのは、こんな経緯からだった。

平屋にしたい→ただ、南西側の里山の眺望を少しは取り込みたい→南側にロフトを設けそこに窓を付ける→ロフトの下の部屋はあまり天井を高くできないので、寝室にする→南側に窓が小さく壁が多い寝室を設ける

その上、A棟は駐車場からの入りやすさを考え、寝室のある大棟を東側に置き、またB棟は井戸があるため大棟は西側に置かねばならばい。また、B棟の南側には高い屋根の母屋(実家)があるので、そちらに近い側は日影になりやすい。

こうした条件の中で、連立方程式を解くようにして、栗原さんは設計しているのだ。栗原さんは、A棟とB棟の陽当りはそれほど心配しなくてもいいのではと言ってくれたものの、いまいち父も納得できない。

その日(10月22日)の打ち合わせも、既に正午近くになっていた。しかも快晴だ。僕は閃いた。そうだ、この建物模型を外に出し方角を合わせて置き、最も太陽が高い時間帯の採光がどうなっているか実験してみよう。この時間に陽当りが悪いようであれば問題だ。

それが下の東側から撮った写真だ。右側にB棟があり左側に二階建の母屋、その奥にD棟。真ん中の瓦屋根は、古屋を解体したときに出た廃材を活用した井戸端会議用?東屋だ。

こうして実際に試してみると、それほど壁により陽射しが妨げられるわけではになさそうだ。またB棟は、高い母屋によって日影になってしまわないかも心配だったが、それほど日影にはなっていない。父も納得した。これで、間取りは決定した。

ところで、井戸端会議用東屋以外にも廃材利用のアイデアを出してくれた。

下の写真の木の棒のようなものは、古屋の梁だ。梁をベンチのように置くことで、井戸の東屋までアプローチにしようというわけだ。

また、古屋の建具再利用アイデアとして、街灯も考えてくれた。

玄関へのアプローチの横に、古材と瓦屋根を枠にして硝子障子を二枚固定し、その間から電灯で照らし街灯がわりにするというアイデア。行燈のイメージらしい。最初これを見たときは何だろうと思ったが、この硝子障子確かに見覚えがある。古屋にあった硝子障子8枚を残してあり、ちょうど4棟分ある。実現するかどうかはわからないが、なんだか面白そうだ。

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