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第20回 床フローリングで悩む(1):素材

ずっと前から迷っていることがある。床のフローリングをどうするかだ。和室はないので、床は基本すべてフローリングにする。どんなフローリングにするかで迷っているのだ。

僕自身、自宅マンション、オフィス、別荘(タイトル画像)と三か所でフローリングに接しているわけだが、フローリングについて何もわかっていなかった。例えば、何となく無垢材がいい気がしてはいたが、何をもって無垢材というのか。そこで、今回自分なりにフローリングについて調べてみることにした。

フローリングは、無垢材と複合フローリングに分かれる。無垢材は複合フローリングに対して単層フローリングとも呼ばれる。日本の住宅の主流は複合フローリングだ。

まず主流の複合フローリングから説明しよう。材料は集成材いわゆる合板だ。集成材は、小さい板材を複数枚(5枚が一般的)接着剤で接着しつくられる。断面が地層のようになっているので、断面を見ればすぐにわかる。その集成材の上に、床表面が木目に見えるように、スライス単板(木の表面をスライスしたもの)を接着剤で張り付けて出来上がり。スライス単板も、突き板と挽き板の2種類がある。突き板は、木をスライスした0.3~1.5ミリの薄板で、挽き板はのこぎりで木を薄く挽いた3~5ミリの薄板だ。完成したばかりの頃の床表面は、見事なまでに美しい。

最近は表面に、木目調の印刷シート(塩化ビニル樹脂製など)を張る製品ももある。見た目だけでなく、触ったときのざらざらした質感までも、印刷で再現できる。当然だが、耐水性抜群。

合板だから軽くて反りも少なく、加工もしやすい。当然、無垢材に比べて安い。手入れも不要だ。表面的には、施工業者にとっても施主にとっても好ましい。だから主流になっている。

しかし、デメリットも多い。まず、接着剤が大量に使用される。傷はつきにくいが、もし傷がついたら修復はおおごとで、専門家に頼まざるを得ない。当然、木が持つ調湿機能はない。表面の美しさは完成直後がピークで、ものによっては10年もたてば、見た目もみすぼらしくなる。古い家の台所の床フローリングの隅っこの方で、表面の木目シートがめくれている悲しい姿を見たことがある方も多いのでは。消耗品のような日本の建築には絶好の工業製品だ。

以下写真は、築23年の自宅マンションのフローリング。表面を触ると木の肌合いが感じられる。表面のはがれなどは全くないが、傷の部分をよく観察すると集合フローリングだとかろうじてわかる。

下の写真は築2年弱のオフィスの床だ。これも無垢材に見えるが、調べたら複合フローリングだった。2mmの突き板が貼られているようで、触っても見分けがつかない。本当によくできている。


さて、一方の無垢材。無垢材は自然の木そのものなので、サイズは何とでもなりそうだが、生産性から規格はあるようだ。一般的には6尺=1820mmが標準の長さで、幅は90mm、厚さ15mmが標準だそうだ。

長さ1820mmを一枚の板だけで取るものをOPCといい、200-500mmの板をフィンガージョイントでつなぎあわせて1820mmにしたものをUNIという。OPCはワンピース、UNIは統合の意味らしい。OPCの方が見ためは断然綺麗だが、一枚板ゆえ歪みや反りに弱そう。値段も高め。UNIは、それぞれの木が欠点を打ち消し合うため、環境変化に強い。

見出し写真は築14年の別荘の床。檜の無垢材で無塗装OPC。ご覧の通り、節が多いため安い。無塗装ということもあり、素足で歩いたときの感覚は、やはり複合材とは全く異なる。何となく柔らかく、足が微かに沈みこむような感触があり、また自宅やオフィスの複合材と比べて、何となく温かみを感じる。

新に選ぶとすると、無垢材であるがゆえに、樹の種類やグレードにバリエーションが多数ある。グレードとは、節の有無や多さが最も重要だ。また、産地もこだわりだしたらきりがない。

床フローリングの選択には、耐久性、体で感じる心地よさ、見た目、補修の容易さ、工事の容易さ、出火時の安全度、価格というように、多くの変数が存在する。自分なりの優先順位を見つけるのも、容易ではない。これで迷わない方が不思議だと、僕は思う。しかし現実は、設計者が値段と見た目重視で勝手に決めているに違いない。これまでは、施主や住人が気にしなかった(僕もそうだった)ので、選択肢を提示するまでもなかったのだろう。

さらに、塗装にもバリエーションがある。それは次回。

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