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第十五回 仮測量に基づく敷地設定の方針決め

9月1日(土)、土地家屋調査士のH氏が実家を訪れた。僕は前日東京に戻っていたので同席できず。その日のことは、後に栗原さんさんから聞いた。

H氏によると、計画敷地だけではなく、周辺の土地を含めた広域を仮測量して現況を把握する作業が必要だとのこと。そのため、2週間ほどかかるらしく、9/21~9/24完了予定だそうだ。

確定測量に当たっては「公図」がベース資料として扱われるようで、自分の土地以外にも接する近隣地の全てを測量し、各土地の公図とのズレを地域的に総合的に示した上で、自分の土地境界を主張することになる。もし、周りの土地が公図とほとんど誤差が無かった場合には、今回計画している敷地についても、公図を無視した主張は認められない。

つまり、周辺含めた仮測量の結果と公図を照らし合わせて、敷地の境界をどう設定していくかの方針を決めることになる。もちろん、隣接住人や道路を保有する役所という相手があることなので、どこまで認められるかはわからない。栗原さんは、これまでの設計プランに影響が出ることを危惧していた。

状況確認後、早速H氏と(父ではなく)母で隣接地の家々を回った。ご近所づきあいは、母のほうが得意なんだろう。周辺の測量をすることのご挨拶だ。

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仮測量が完了した後、9月27日にH氏からの報告を聞き、方針を決める打合せを行った。

測量の結果は、僕らにとって好ましいものではなかった。以下がH氏が作成した仮測量図だ。見づらいが、真ん中の黒線で囲われた六角形の敷地(16-3外)が、現在父が保有する土地。この六角形の黒線は、H氏が公図と仮測量をもとに引いた境界線だ。またオレンジの点線は、現況の境界線。中をタテに走る道路の端(黒線)と、オレンジ色の境界線が上に行く程ずれている。つまり、現況は本来道路である土地を、父が占有している形となっている。その分、現況道路は左側隣接地(K氏保有の29-1外)を占有している。


下の図面は、当初想定していた現況に基づく境界線と、上記の公図と仮測量に基づきH氏が適切と判断した境界線を重ねあわせたものだ(上の仮測量図を左に90度回転)。H氏によると、計画敷地の周辺は、おおかた公図と測量が一致していたという。そうなると、公図を信じざるを得ない。そうしてH氏が判断し引いた境界線と現況のギャップが黄色の部分だ。思いの外広い。設計上の建物の一部が掛かってしまっている。H氏の判断に従えばこれだけ、現況から敷地が削られることになる。下側は道路であり、道路幅を1.8m取るとすれば1.1mセットバックが必要で、その部分には建物を建てることはできない。従って、さらに建築面積が減ってしまう。

現況では計画地の南側(下側)は直線道路だが、公図によるとその部分は役所の保有ではなく、隣接地を所有するK氏の保有地である。その道路の下には水道管も埋設されている。つまり、(公図上では)K氏の所有地にアスファルトが敷かれた道路となり、その下には水道管が埋設されているというおかしな状態になっているということになる。もし、厳密に今回この公図に従って登記することになれば、計画地側(上側)に道路も水道管も移動させなければならない。その費用は、当然K氏ではなく役所が負担することになるだろうが、果たして役所がそれを実行するだろうか?

(以下写真で、奥にのびるアスファルト敷かれた部分が問題の道路)

相談の結果、まずH氏が役所の担当者と測量結果を見せながら道路の扱いを交渉し、その結果を受けてH氏と父とで南側の隣接住人であるK氏に相談を持ちかけることにした。K氏には現況の境界と公図の境界の中間地点あたりを境界にすることを認めてもらえるように、ひたすらお願いするしかない。事実としては、我が家がK氏の土地の一部を占有してしまっているのだから。もし、それが認められず公図通りの境界を主張されてしまえば、設計プランを見直さなければならないだろう。

もう一点。この照合した図面ではわかりにくいが、右上の直線部分の境界が少し公図と測量図でずれている。その隣接住人はT氏だ。T氏は平成5年にそこで自宅を建て替えた。父によると、その際新しい家の敷地の一部が、父の所有地にかかっていたという。そこで不動産の知識を持つ父はT氏と話をし、かかっている土地を売却する契約を結ぼうとした。しかし、契約書を作成し渡したものの、その後何の連絡もないという。T氏は購入契約を結ばないまま、新築してしまった。信じがたい話ではあるが、T氏と父はそのまま放置していた。ただで勝手に使われてしまったのだ。そのため、図面の公図と現況でわずかに差がある。

その境界を、今回どう処理するかが問題だ。しかも、T氏は数年前から行方不明になっている。奥さんもお子さんも、連絡が付かないという。土地を返してもらうにも、あるいは当初の予定通り買い取ってもらうにもT氏の捺印が必要だ。奥さんはT氏に黙って捺印したら叱られるからと、拒んでいる。土地を返してもらうための裁判を起こせば勝てるだろが、費用と時間がかかってしまうので、それは避けたい。

一同相談の結果、それほど今回のプランに影響する部分でもないので、現況を認めて、境界を確定してしまおうということになった。T氏にただで土地を提供することになるが、時間と手間を考えたらやむを得ないだろう。しかし、このような譲歩を確定するにも、行方不明のT氏の捺印が必要になるかもしれない。なんということだ・・・。

9/27の打ち合わせは、このように敷地設定の方針を決めて終えた。土地家屋調査士のH氏の名刺には、「民間紛争解決手続代理関係業務認定」と書かれていた。それが何を意味するのかよくわからないが、なんだかH氏が頼もしく思えた、・・・というか思いたかった。

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