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第26回 借入の交渉

施工会社が決まり、見積もり金額が決定したことで、やっと借入の交渉に入ることができる。父がかつて織物工場を経営していた頃から付き合いのある、地元のM信用金庫から借りることは決めていた。これまでも何度か、支店長と融資担当者とに、計画の内容について話をしてきた。

信用金庫は信用金庫法によって、地元在住の者にしか融資出来ない。なので、84才の年金生活者である父にしか融資できない。そこで、僕が保証人になり、父が借入をするのである。いわゆる頭金は、全額僕が入れる。その負担比率に応じて、これから建設する建物を共有することになる。そして、いずれ相続が発生するときは、敷地と建物の父の持ち分と借入全額を僕が相続するのだ。

僕は、総投資額8000万円のうち、5,500万円を借入れ、残り2,500万円を自己資金とすることを予定していた。借入期間は22年。これは木造住宅の減価償却期間に合わせる。もっと長く借りることはできるかもしれないが、償却期間を超えて返済するのは、なんとなく不自然だと思うからだ。

僕は融資担当のSさんと、電話で交渉を進めることになる(メールは使えない)。2月半ば、僕はSさんに確定申告書2年分、施工見積もり書、建物の簡単な設計図面、敷地配置図(下の図面)、そして収支計画書を郵送した。それとは別に、父が実家土地の固定資産課税明細書を渡した。これらでSさんは稟議書を書くのだ。

収支計画書では、家賃11万円/月・軒で稼働率は85%とした。以前は、各家に設置する2台分の駐車場代を別に見込んでいたが、駐車場も含む敷地ごと貸すというコンセプトなので、駐車場代込みの家賃とした。

3月に入ってから、Sさんから電話があり、僕が東京で保有する賃貸マンション2軒の固定資産課税明細書を追加で郵送した。保証人の保証能力をM信用金庫も把握したいだろうから、明細書を郵送することは当然だ。東京の賃貸マンションの担保価値の方が、実家の土地よりも大きいだろうし。場合によっては、それらを担保に入れてもいいと思っていた。

またSさんから電話で、もし賃借人が入らないような事態が起きたときは、僕が父の代わりに借入返済するかとの質問を受けた。考えたくない事態だが、保証人とはそういうときに保証するから保証人だろう。おかしな質問だ。きっとそういう社内手続きになっているのだろう。勿論僕が返済すると伝えた。

S建設との契約日が、3月26日と決まった。それまでに、建築確認申請が受理され、また融資の内定も得ることが必要だ。建築許可がおりていないとか、融資許可がまだ下りない状態で、施工契約だけ結ぶのはリスキーだ。しかし、3月中に契約しなければならない理由がある。消費税の増税だ。契約が4月以降にずれ込んでしまうと、消費税は10%になってしまうからだ。スケジュールはタイトだが、間に合うと思っていた。


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