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第十三回 ロフト案でいいのか

平屋の戸建にすることは、最初のプレゼンで決めた。ただ、眺望を少しでもよくしようとロフトをつけることにした。僕の頭の中には、単なる平屋、ロフト付き平屋、二階建の3パターンしかなかった。そこでの二階建てとは、ほぼ一階と同じか、あるいは一階の7掛け程度の広さを持つ二階居室を、暗黙に想定し、それは却下した。でも、建築家の栗原さんは、他の考え方もあるという。もう少しよく考えてみてはと、投げがかけてくれた。

2018年8月9日の打ち合わせ時に、三種類の図面を見せながら説明してくれた。知らないことばかりだった。素人からすれば、ロフトだって天井の低い二階部屋とも思える。しかし、建築法や不動産業界の慣習では、厳密な区別がなされている。

●ロフト:用途はあくまで物置。最高の高さが1.4m以下かつロフト下の部屋の天井高さが2.1m以上かつ、ロフト直下階の面積の半分以下であれば認められる。そうすれば、ロフトの面積は床面積には加算されず、例えば「40平米+ロフト」と別立てで表示される。もちろん、2LDKといった表示にロフト分は含めない。床面積に加算されないため、固定資産税は平屋と同等になり、後の2案より安くなる。登り下りは、取り外し可能の梯子を使う。窓をつけても構わないことは、役所に確認した。見出し画像が、その図面だ。

●納戸:床面積の1/7以上の広さの窓を取れなければ、建築基準法上の「居室」にはならない。床面積には加算されるが、居室ではないため、不動産会社は例えば、2LDK+N(納戸)というように別立て表示しなければならない。階段の寸法は、建築基準法施行令によって、建物の用途と面積規模によって定められている。

●二階居室:ロフトでも納戸でもなく、二階にある通常の居室。階段の寸法は、建築基準法施行令によって、建物の用途と面積規模によって定められている。もちろん床面積に加算されるし、3LDKといった表示にも加えられる。

なるほど、1部屋だけ二階居室にすれば、床面積を拡大しながら、見た目は平屋とそうは変わらない作りにもできそうだ。僕は頭が固くなっていることを、自覚することになった。

建築費用は、建物全体の高さが上がることで壁面積が大きくなる影響で、ロフト、納戸、二階居室の順で高くなる。それに対して、家賃はその順で高くできるはず。それぞれ投資増に対して、どれだけの収益増が見込めるのだろうか?投資効果が見込めるのであれば、ロフト以外の選択肢を探ってもいいのではないだろうか。次の打ち合わせ迄に、追加費用を見積もってもらうことにした。

そして、次の打ち合わせ(8月31日)で、2階居室にした場合のロフトに比べての追加費用は、4軒分で145万円だと提示された。それは想定している総予算の2.1%だ。シミュレーションによれば、2階居室にしても家賃を月額2,700円/軒ほど引き上げることができれば、収益率は維持できる。床面積60平米+ロフトが、70平米になるのなら、直感的にはその程度の家賃引き上げは可能に思えた。しかし、ただでさえ周辺相場よりも高い賃料想定だ。支払い上限を超えてしまわないだろうか。どれだけいい物件であっても、借り手が見つからなければ意味はない。

また、気になるのは、たった1室を増やすだけのために、通常のサイズの階段を設けなければならない点だ。それほど広くもない一階フロアに、階段のための無駄なスペースができてしまう。複数の二階部屋のためならともかく、わずか1室のためにだけだ。

父とも相談し大いに悩んだが、やはり当初決めた通りロフト案でいくことにした。納戸案や二階居室案にすると、階段の存在に代表されるように、二階建てと平屋のどっちつかずになってしまい、コンセプトがブレてしまいそうに感じたからだ。やはり、初志貫徹で平屋のメリットを強調したい。

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