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第21回 床フローリングで悩む(2):塗装

複合フローリングであれば、塗装で悩む必要はない。工業製品のようなものなので、塗装もすんでいる。問題は無垢材だ。

以前、僕は無垢材に塗装をするとは思ってもいなかった。無垢材を選ぶのは、木の自然な肌触りや色や匂いを楽しむためなのだから、塗装してしまったらわざわざ無垢材を使う意味がなくなると、漠然と思っていた。しかし、そうではないことが、今回よくわかった。

塗装の目的はふたつある。着色と保護だ。一般に塗装というと、着色のイメージが強いが、フローリングであれば保護の意味で使うことが多いだろう。無塗装の無垢材は、とにかく水や汚れ、傷に弱い。水分を無垢フローリングの上でこぼしてしまうと、すぐに浸みこんでしまう可能性が高い。ひっかき傷なども、木の表面に直接ついてしまう。デリケートな素材なのだ。だから、塗装によって保護するのが一般的なのだ。

恥ずかしいことに、別荘の桧無垢フローリングは無塗装だったと、今回調べて初めてわかった。たしかに、足さわりはすごく気持いい。木の香りは、14年経った今でも消えない。調湿効果もあるように感じる。ただ、傷や汚れには明らかに弱い。下の写真をご覧いただこう。水滴が浸みこんで、何度拭いても取れない。たくさんの引っ掻き傷は、愛猫によるものだ。ここだけ見ると無残だ。

設計者のY氏によると、桧に多く含まれる油精分が天然のワックスの役割を果たしてくれる。そのため、独特の深みのあるつやが、時間が経つにつれて出てくる。同じ人が使い続ける建物であれば、その経年変化を楽しむこともできるだろう。また、傷や汚れも「思い出」と感じることもできるかもしれない。だから塗装はしなかったという。そんな相談された記憶は僕にはない。きっと相談もされなかったのだろう。14年たって、Y氏のいうことも一理ある。僕は真剣に汚れや傷を直そうとは思っていない。汚れや傷を、愛着だとも思えなくもないのだ。

さて、無垢材への塗装だが、選択軸は着色するかどうか、塗装の方法の二つだと考えればいいだろう。着色するかどうかとは、無垢材の本来の色をそのまま残すために透明な材料を塗るか、それともあえて他の色を塗るかどうかだ。白っぽい無垢材に、濃い茶系の塗料を塗りチークのような雰囲気を出したいといったニーズが考えられる。

次の塗装方法とは、コーティング系塗装をするか、浸透性塗装をするかの選択だ。コーティング系とは、ウレタン塗装に代表される木の表面に塗膜をつくることで強力に保護しようというものだ。水分や傷に強く、ツヤやツルツルした質感を楽しめる。メンテナンスは不要だ。しかし、欠点も多い。傷がついてしまった際、補修は困難だ。プロに頼むしかない。そもそも、せっかく無垢材にしたのに、木が本来備えている調湿機能は限定され、触感も味わうことはできない。傷みやすい台所などでは有効かもしれないが、それ以外ではどうだろうか。(複合フローリングは全てコーティング塗装だろう)

浸透性塗装とは、表面に塗膜をつくるのではなく、文字通り木の内部にオイルを浸透させる方法だ。浸透したオイルが内部で硬化することで表面を硬くし保護する。オイルは天然素材の各種植物性オイルや蜜蝋が使われる。ひまわり油を主成分としたオスモ社の塗料が有名だ。長所短所は、コーティング系の裏返しだ。汚れや傷は相対的には付きやすい。また、半年から1年ごとにメンテナンスが必要。ただ、触感や調湿機能などの無垢材の長所は維持されやすい。へこみや傷などの補修は、サンドペーパーを使って自分でできる。

以下の写真は、桧の無垢材に浸透性であるオスモ社の半透明着色塗料を塗ったサンプルだ。上から、バーチ、パイン、オーク、チーク、アンチックパインの樹種に似せた各色。ラベルが貼られたラインは透明テープが貼られているため無垢材の色がそのまま残り、比較できるようになっている。(無着色塗料サンプルはない)

なかなか悩ましいが、それにさらに費用の違いが加わる・・。

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