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第二回 建築家を探す

住宅メーカーからの提案書を見てもしっくりこなかった僕は、やはり標準品をつくることを前提とした住宅メーカーに頼るのは止めようと判断した。既製品ではなく、オーダーメイドでつくるということだ。

僕は、14年前にある建築家に設計してもらって、八ヶ岳に別荘を建てた。建築家に知り合いはいなかったが、八ヶ岳に遊びに行くときによく寄った喫茶店の建物が気にいり、設計した建築家Yさんを紹介してもらうことができた。紹介してくれたのは、喫茶店のとなりにあり、これまたよく泊まっていたペンションのオーナー。彼も元建築家だということもあり、Yさんとは親しかったのだ。ただ、あとから分かるのだが、オーナーは緻密で理論的な左脳派で、Yさんは感性重視の右脳派と、同じ建築家でもだいぶタイプは異なった。そのYさんに設計を依頼し別荘を完成させた。

それまで家など建てたこともなく、ましてや建築家に依頼するなんて、大金持ちのすることだとなんとなく思っていた。でも、実際やってみてメリットの方が大きいと実感した。建築家が施工会社との交渉を一手に引きうけてくれるので、施主にまるっきり知識がなくても安心だ。厳しい値段交渉もしてくれた。また、建築中もしばしば現場に足を運び、工事が予定通りに進んでいるかチェックしてくれる。設計料はもちろん発生するが、それに見合う仕事はしてくれたのではないだろうか。そして、もちろんオーダーメイドなのだから、僕らの要望はできるだけ反映させようと努めてくれる。例えば地下室は、僕の身長にあわせて高さを決めた。僕らの知識不足もあり、意見が合わないこともあったが、有益な提案をたくさんもらったし、話し合ううちに新しいアイデアが生まれるようなこともあった。別荘は十分満足できる仕上がりで、手を入れつつ今も活用している。

今回、実家での計画を考える際に、まずその建築家に相談してみた。しかし、予想通りではあったが、愛知県では遠すぎると断られてしまう。頻繁に現場に通うことは難しいのだから当然である。だとすれば、実家からそう遠くないところの建築家を探さなければならない。

僕がよく行く東京・神保町に建築専門の書店がある。たまたま寄った時、建築専門誌『新建築』8月号を手にとった。集合住宅特集だったからだ。早速購入し、熟読した。

まだ新しい数多くの集合住宅が紹介されていた。もちろんそれを設計した建築家も。その中に、愛知県岡崎市に事務所を構える建築家を見つけた。多分、実家から車で20分もかからないだろう。その作品「美浜町営住宅河和団地」は、木をふんだんに使用した軽やかな平屋住宅によって形成されており、好感を持った。(上の表紙の写真も「美浜町営住宅河和団地」)

結局、その事務所に連絡を取ることにした。2017年11月2日のことだ。

初めて設計のご相談で、メールさせていただきます。XXと申します。

私は東京に住んでいますが、実家が●●にあります。
そこには高齢の両親が住んでいますが、隣接地350坪くらいが更地になってます。(まだ一部古い家が残っていますが、取り壊す予定です)

その更地に戸建の賃貸住宅を4、5軒程度建てたいと考えています。
それほど便利な場所ではありませんが、里山に面した緑が豊富な場所です。

そこに、周囲の風景に馴染んだ違和感のない家が建てられればと思います。
将来的には、今両親が住んでいる二階建の家も取り壊すなりリフォームして貸すことも考えています。

御事務所は新建築8月号で知り、イメージが合うかと勝手に感じました。

住所は以下です。
愛知県・・・・・・

このような相談に乗っていただけるのかどうかわかりませんが、
ご検討をよろしくお願いします。

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