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第17回 コレクティブハウスの見学

建築設計のプランを設計事務所と進めながら、並行してコレクティブハウス に関する勉強を始めていた。何はともあれ現地に足を運び、直接住人の話を聞くことが最も大切だと考える。

コレクティブハウス 大泉学園

2022年1月22日、コレクティブハウス 大泉学園を訪れた。NPO法人コレクティブハウジング社と住人が共同か開催しているリアルの見学会に参加した。コロナの影響もあり、参加者は僕一人。

地元社会福祉法人とNPO法人コレクティブハウジング社(CHC)が連携して、障害のある人もない人も共に暮らすことを目指して、2007年に「大泉学園にコレクティブハウス を作る会」を結成したことが始まり。そして物件を探していたところ、2009年に建設会社の社員寮だったいまの建物に出会った。その旧社員寮をある不動産会社が一括で借り受け、コレクティブハウス 用にリフォームし賃貸住宅事業として始めたものだ。そうして、2010年7月にオープン。企画したCHCによると、できるだけ安い賃料とすべく、徹底的に改築費用を抑える工夫をしたそう。社員寮時代の大浴場いまも使っており、住人は24時間いつでも入浴できる。全13住戸。

ふたりの住人(女性)は、僕の細かい質問にも丁寧に答えてくださった。印象に残った言葉は、
「コモンミールは楽しみ。帰宅して他人が作ってくれた食事を食べられるのがこんなに有難いとは思わなかった」
「コモンミールは、お食事会ではなく家事のシェア」
「帰宅して玄関に入ると、ほっとする」
「いろんな住人がいるが、毎月定例の総会で話しあえるので、トラブルは発生しない」
「コレクティブハウス のメリットを事前に十分理解してもらうことが重要。入居希望者には、事前に総会かオープンミールに参加してもらう。それがなければ一般に、メリットは見えにくく、デメリットは見えやすいから」

自主管理のための工夫が、とても練られている印象。あまり固定的に考えず、不都合があれば話し合って柔軟に変更しているそうだ。

コレクティブハウス かんかん森

次に少し時間が空いたが、2022年5月21日、日暮里にある「コレクティブハウス かんかん森」のリアル見学会に参加した。今回は僕以外にも4組が参加。

ここは2003年オープンの、日本最初の本格的コレクティブハウス 。戸数も28と多い。スウェーデンのコレクティブハウス を日本でも実現しようとの活動が、初めて結実したもの。2000年からプロジェクトを開始し、更地の段階からあるべきコレクティブハウス 像を目指してきた。当時日本にはまだモデルがなく、思いのこもった人々が結集して、試行錯誤しながら現在の姿を形作ってきたのだろう。

出所:https://chc.or.jp/chcproject/kankan.html

12階建ビルの2&3階部分がコレクティブハウス で、4階から上は高齢者施設、1階には認証保育園になっている。

ここの運営面の特徴は、2007年から居住者有志が立ち上げた株式会社コレクティブハウスが一括借り上げして入居者募集を行い、管理・運営は居住者組合「森の風」が行っていることだろう。空室リスクを居住者の一部も担うことになるため、住人の意識が個よりも全体として住まい方の魅力を高める方向に向きやすくなると考えるがどうだろうか?

小さな子供が多い印象で、子供用のスペースを増やしているそう。今回もふたりの住人(女性と男性)にお話を伺った。以下、印象に残ったコメント。

「総会は全員一致で決定。決まらなければ、何度も開催し、ワークショップで決めることも。決まらないことは、ほとんどなかった。企業ではなく、暮らしの場なので、多数決は合わない。」
「親グループでメーリングリストを作り、子供のお迎えを融通したりしている。ただだと頼みにくいので、独自通貨で支払いをしている」
「ある程度の人数がいれば、少しは気に入らない人がいても中和されるので、コミュニティーが維持しやすい」
「共用ランドリーやガーデニングや野菜づくりは、とてもいいコミュニケーションの場になる」
「掲示板は、デジタルを使用しても、必ずアナログも用意する」

20年の歴史の知恵が蓄積されているよう。変えてもいいことと、変えるべきではないことの峻別がしっかりなされていると感じた。変えるべきでないことの最たるものは、総会での全一致の原則と全ての大人は自主管理のためのグループに必ず参加すること。なるほどと思った。変えてもいいことは、共用部分の使い方やレイアウトやルール。住人の変化に合わせて、柔軟に変えているよう。

コモンダイニングからコモンキッチンを見たところ。キッチン設備はプロ仕様(二階は吹き抜け)

ハードとしての建物の魅力以上に、住人コミュニティとしての住まい方の工夫の重要性を再確認させられた。



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