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第九回 地味で面倒なプロセス:例えば雨水排水計画

3月13日の二回目のプレゼンで、建物の概要はほぼ決まった。模型もあり、これであとは設計、施工会社選定、施工開始、と先が見通せるような気がした。しかし、そうではなかった。まだまだ先は長いのだ。

僕ら素人は、住宅がどういったプロセスでできあがるのかほとんど知らない。目に見える建物そのものについては注目するが、目に見えないインフラにあたる、上下水道、電気、ガス、ネット回線、地盤などが整わなければ住むことはできない。住宅を建ててもいい土地であることは既に確認済み(第四回参照)だが、他にも以下のようなプロセスが必要。地味でややこしく面倒だが重要だ。

1)古屋の解体工事

2)敷地となる土地の境界の確定(確定測量)

3)水道、雨水排水計画の策定と承認

4)電気、ケーブルの引き込みルートの確定

5)地盤調査

6)建築許可相談、建築確認申請

7)工務店入札

これらは、ある程度同時並行で進められるものと、順番が決まるものもある。例えば、土地境界が確定しなければ建物の正確な配置が決まらず、それが決まらなければ、建物の基礎の強度を確認するための地盤調査を実施できない。また、地盤調査は必要とされる地点深くに杭を打ちこむため、古屋も解体しておかなければならない。

一方、水道、雨水排水、電気などのインフラは、敷地境界が大きく変わらない限り、境界確定を待たずに計画策定を進めることができる。ただこれらも、役所との調整が必要で、そう簡単ではない。

上記の作業が完了して、初めて設計図面を完成することができ、それが完成して初めて建築確認申請することができ、また施工してもらう工務店入札をすることができる。なお、今回の土地は市街化調整区域のため、建築確認申請を提出する前に、事前相談も必要だとのこと。

それぞれの作業は、現状確認→関連する役所等に相談→大まかな作業方針決定→依頼候補業者への見積もり依頼→見積もり比較→業者選定→業者と詳細の詰め の段階を踏むことになる。多分、一般住宅メーカーであれば、委託業者が決まっており、選択の余地はないだろう。しかし、建築事務所では、少しでも安くするために、相見積もりを欠かさない。手間はかかるが、ぼったくられるリスクは下がるので、施主にとっては安心だ。この面倒な作業は、建築事務所がやってくれるので、僕らは結果を比較し選定さえすればいい。

例えば水道と雨水排水計画を見てみよう。上水道工事はわかりやすい。近くに通る水道管に接続し、敷地内に引き込む工事だ。公的窓口は地元役所の水道課。ややこしいのは、雨水排水工事だ。知らなかったのだが、雨といなどから流れ出る雨水もトイレなどからの汚水も、まとめて同じ汚水管に流し込めばいいように思えるが、現在は公共の雨水管と汚水管にそれぞれ流し込まねばならないそうだ(分流式)。そして、公共の雨水管までの排水路も、施主の責任で整備しなければならない。この雨水排水処理は、地元役所の土木課と相談しなければならない。

上下水道、雨水処理の工事は水道設備工事店に依頼する。ただ、地元役所が指定する指定給水装置工事事業者でなければならない。2018年6月28日の打ち合わせ時、建築家の栗原さんは4社(栗原さんがリストアップ)からの見積を用意し示してくれた。その中で「I設備」が最も安かった。たまたま、I設備は以前から我が家と付き合いがある業者さんで、両親ともよく知っていた。実家の水道設備は、すべてI設備にお願いしたそう。現状をよく知っているはずで好都合だ。それを知った父は、その場でI設備に電話したが社長は不在。後に連絡し、見積もりより安くやってもらうように直談判したが、既にギリギリの値段を提示しているとのことで、安くはならなかったそう。

栗原さんによると、4軒の雨水を流し込むべき公共の雨水管は、西側の道路反対側の側溝(以下図面左側の道路の左側二重線)だそうだ。当初、各戸からの雨水は、道路手前から自然排水して側溝に流し込む予定だったが、土木課に確認したところ、「対面側に側溝がある場合は、道路占有許可を申請し、道路内を配管し、側溝に接続させなければならない。道路占有許可は5年ごとに更新申請が必要。道路上に雨水を流し、対岸の側溝に流すことは許されない。」との回答。つまり、西側道路の地下を横断する配管を通し、しかも5年ごとにその申請を更新しなければならない。

道路(地下)を使用する申請には毎回20万円もかかるらしい。それもあって、水道設備工事見積が当初予定の二倍以上になってしまった。こういう事態が判明したため、少しでも水道設備工事費を安くしたいと考えたのだが、うまくはいかず。こういった指導は必ずしも規則で決まっているわけではなく、窓口担当者に裁量余地があるようだ。(こういうときに、地方議員へのロビー活動が有効なのかもしれない)

このように水道設備工事だけでも、一筋縄ではいかない。これからも、同じような獣道に踏み込んでいかなければならないのだろうか。先が思いやられる。







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