キッチン2

第43回 キッチン仕様の検討(続)

10/8の打合せの後、何度か鈴木さんとメールや電話でのやりとりを経て、新案をベースにした新案2を作成してもらった。それが以下図面だ。新案では、シンク下に収納スペースがないので、そこに無印の収納ケースなどを賃借人に推奨し、自分で買ってもらう。他に、棚板は二枚とも水切り板ではない奥行30cmの集成材とする。(水切り板は25cmだった)。棚を三段にする検討もしてもらったが、最上段が180cmの高さになり使い勝手が悪いとのことで、二枚に留めるまたコンロ前には、フライパンなどを吊るせるバーを付ける。

キッチン3


それでもまだ考えあぐねた僕は、できるだけ多くの知り合い(特にキッチンを主として使用する方)に旧案、新案、新案2を示し意見を聞くことにした。結局合計10人が回答してくれた。(ありがとうございました!)

それらの意見からキッチン仕様を、使用する立場から評価するいくつか視点が見えてきた。

1)収納力の大きさ:これはもちろん大きければ大きいほどいい

2)掃除のしやすさ:広々として、空いている空間が大きいほどいい。あるいは、簡単にモノの移動がしやすい(キャスター付ワゴンなど)。グリルは掃除が難しいとの声は多い

3)見栄えの良さ:主観に大きく左右され、いくつかの立場に分かれる。(A)収納物ができるだけ隠れることを重視、(B)見せる収納。つまり自分で工夫して、美しく収納されていることを見せてアピール、(C)ミニマリスト。モノができるだけ少ないことが美しく、それをアピール

4)使い勝手&機能:キッチンの主目的たる「調理」、及び「片づけ」や「収納」が効率的かつ効果的にできる。ただし、どの程度、どのような調理をするかの個人差は大きいので、判断は分かれる(引き出しの多さ、スペースの有効活用、水切り板の有無、調理時の備品の配置、魚用グリルの有無、暗室の有無など)

5)工夫の余地:出来合いの標準装備があることを楽でいいと考えるか、逆に標準装備は最小限にして、できるだけ自分で備品、什器を等を買い揃え、自分ならではのキッチンを作りたいと考えるかの二極がありそう。最近は無印やIKEAなどの通販も充実していることが、背景にあるのだろう。

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以下に、代表的コメントを列記する。

1)収納力の大きさ:「どこであっても全体として収納量が多いことが魅力の一つだと思うので、やはりシンク下に鍋等を設置できるようにしたほうがいいと思います。(引き出し式になっていればさほど汚れないと思いますし、出し入れがしやすいです。棚をつくったり100円ラックを買ってきて設置するほうが面倒)」、「新案の収納はお洒落だけど、置くもの沢山ある、丸見えの棚に置くには栗原はるみセットで揃えないとならないから高くつくね(笑)」、「私は収納ないとダメだから。あのまま(新案)にはならないと思う。」、「収納は多ければ多いほどありがたいですし、結局収納家具を用意しなければなりません。一般的な箱型から引っ越す人は、一式揃えなければなりません」、「収納を考えると、ある程度設置されていたほうが、便利かつきれいに使っていただけるかと・・・。」、「湿気が溜まらない工夫は大事ですけど、お米や油など、料理するしないに関わらずペットボトルやカップ麺など、これからの時代はますます防災対策としてストックが必要だから、結局シンク下の空洞を利用しなくてはならないと思います。」

2)掃除のしやすさ:「シンク下が汚れやすく、収納しづらいので、できれば棚(ラック)を最初からつけてもらうか、各自で自由に工夫してもらえるといいですね。」、「(新案の)シンクの下の空洞って洒落てるけど、ワゴンみたいな可動式収納(掃除もしやすい)とかあるといいね。」、「魚焼きグリルは難しいですね・・・。必須ではないと思います。(今は色々便利な調理器具がありますし、グリルの掃除をいやがる人、においがつくことをいやがる人も)」、「グリルは汚れやすいので、多くの人に貸し出すことを考えると、むしろつけない、という選択肢もあるかもしれません。」、「グリル庫内に油が飛び散った汚れが取りにくいこと(グリル本体は分解できないため)と魚のにおいが残ることの2点が気になるとのことから、グリル無しのコンロを選択しており、必要な場合は魚焼き専用のホイルを使ってフライパンで焼いています。」

3)見栄えの良さ:「賃貸であっても、片付けがしやすく、そもそも部屋がすっきりと見えること、友人を呼んで楽しく過ごせそうな感じのお部屋は、若い層にもニーズが高いのではないでしょうか。」、「(新案2は)ミニマルで美しいものを選んでおり、減ってしまった収納などのスペースも無印の収納で住人のニーズに合わせて代用可能なので、機能的にも大きな問題はないかと感じました。」、「魅せる収納という価値観もあり、しまうというよりかは並べておいたり、掛けたりして陳列されているようにするのも増えているように感じるので、そういったことも踏まえても(新案2は)良いかなと思います。」、「若者ならばみんな綺麗に見せる収納ができるというものでもありません。」、「キッチン上の収納は高い位置なのであってもあまり使う機会がなく、それよりかは美しく見えるような、ミニマルな仕上げが良いかと思います。」、「オープン棚も流行っているので、流行りを考えると上は吊戸棚でなくてもオープン棚でも・・・とも思います。ただし、地震の時はやや心配です。」

4)使い勝手&機能:「最近のグリルはお魚焼くだけじゃなくてパエリア作ったりパン焼いたりオーブン料理みたいの出来たりいろいろだから料理するなら必要かな。」、「料理は結構する方だと思うのですが、それでもあまりグリルまでは使うイメージはありませんね、あればあるので嬉しいかもしれませんが、貧しい若者としてはグリルをつけるくらいならば無しでも家賃をやすくして欲しいな、なんて思ってしまいますね。」、「水切り板の有無は正直住人の好みかな、という気もします。水切りかごが元々置いてあれば問題ないかもしれません」、「私は暗室も欲しいです。 オリーブオイルとか暗室で保管したいので。」、「吊り棚は箱でなくて、小さな棚板2枚+水切り(最上段は175mm弱?)です。水切りカゴを置くスペースがないので水切り棚は便利です。」、「棚板については、水切り板は必要なく、棚板を二段用意し、コンロ前にはフライパンなどを引掛けることができるバーを付けている」、「私も実家も水切り棚は使い勝手が良いです!シンクの下は収納(一部はゴミ箱を置くスペース)となっています!グリルはなくても困ってませんよー」、「調理作業をするスペースを広く取れるようにすることが重要」

5)工夫の余地:「推奨ならいっそ備え付けにしていただきたいです。と、私が借りるならそう思います。」、「シンク下を全部なくしてしまって、自分たちでシンク下にあうものを探して工夫して使うよりは、身軽に入居できるほうが、一般的にはニーズが高いように思います」、「最近は無印良品やイケア、ニトリなどの棚やボックスをうまく使って整理する女性も多いです。(余談ですが、イケアや無印良品、ニトリなどは最近、キッチンの設計も手掛けていてそれぞれおしゃれで好評みたいです。)」
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まさに十人十色だが、何となく傾向は見えてきた気がする。次にオーナー、つまり僕の視点も整理しておこう。賃借人が入りたくなるようなキッチンにすることは最重要だが、当然オーナーならではの要望もある。

1)初期投資額:今回、新案にした場合、15,000円が各棟に追加で必要。また、無印等で賃借人が自分で買え揃えて、転居時には持っていく形の方が好ましい(以下2も同様)。

2)賃借人が入れ替わる際のメンテナンスコスト:オーナーが用意する備付什器(流し台など)が少ない方がいい。また汚れにくく、壊れづらく掃除しやすい方がいい。

3)借りて欲しい方のイメージ伝達:こういう方にこの住宅に住んで欲しいというオーナーの想いが、賃借人候補に伝わることが望ましい。そうすることによって、入っていただいた賃借人同士の連帯感を強くし、後々の住みやすさにつながると思う。では、どんなイメージか?まだ僕自身あまり明確になってはいないが、できるだけ長く住んで欲しい/しっかり調理をして健康的な生活を送ってほしい/建物の中も外もできるだけ綺麗に整然としてほしい/外部の方から素敵なエリアだと言われるような、憧れの対象となってほしい/などか。

随分贅沢な注文だと、自分でも思う。








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