現場の努力と涙

今シーズンは無冠が決定してしまった、鬼木体制になって6年目にして初めてと言えばこれまでがすごかったように見えるが重要なのはこれから先の話。過去の栄光に浸って自惚れていては優勝どころか静岡のようになってしまう可能性すらある。そういう危機感を強く感じる1年だった。

大体の総括は各タイトルを失った後の文章や、もうマリノスの優勝ほぼ決まったなって時期に書いているので真新しいことはそんなにないが、今シーズンの反省すべき点と思う所や悪いなりにもよくやれていた点を書いていこうと思う。
それからまだまだ未確定な部分は多数あるが、来年に向けての話なんかも。

過去一で現場は辛かった1年


サッカーというのは「最後の笛が鳴った瞬間に相手より多く得点を取ったチームが勝つ」というスポーツなので、最終節のタマシコのように、道中に紆余曲折がいくらあっても、最後の瞬間にスコアが上回っていれば勝ち。
逆を言えばカップ戦とかで何度も経験したように、最後の瞬間に追いつかれたとか7~8割試合を支配してもスコアできなければ負けたり引き分けたりする。

この基本中の基本に立ち返ってこれまでの鬼木監督のリーグ戦の得失点関係をまとめてみると

2017 71 32 +39
2018 57 27 +30
2019 68 38 +30
2020 88 31 +57
2021 81 28 +53
2022 65 42 +23

という並びになるが、3連覇単位で考えるときれいに初年度から3年目に向けて下降していった2020~2022の流れがわかる。そして就任後最小となった得失点差のプラスと失点数。これは数字を見るだけでいかに今年が辛かったかがよく分かる。

考えながらツイートを連投したのでそれをそのまま貼り付けておいた。

今年の反省すべき点は去年に比べて30減った得失点差、を中心に見ていけば数値化されて定量化しやすく再現性などの方面でも有意義な考察ができると思う。

30点を失った理由と穴埋めしたかどうか


得失点差が1年で一気に30も減ったクラブなんてのは調べたら意外と見つかりそうで見つからない気がする。
普通のクラブならおそらく優勝争いから残留争いまで転落できるだけの数字だから、そういう急降下したクラブを調べていったら見つかる可能性はありそうだが。42試合あるJ2の方が発生しやすいかもしれないとかそっちの意味でも調べたら楽しそう。

その原因となりそうなのをいくつか考察してみよう。

・三笘
今この文章を書いている間にプレミアで三笘が大活躍している、彼を失ったことで得点量が減ったことは間違いない。

・旗手と碧→橘田
この2人の守備面での貢献はかなり大きかったが、橘田という後継者がシーズンをほぼやりきってくれたことである程度の穴埋めはできたとは思う。だが2:1の人数差はどうしようもない。

・ジェジエウ不在期間
どう考えても彼の居なかった時期は苦しかった。彼が戻ってきてもそこまで失点数は改善してない印象だが、1年通して居てくれれば5点くらいは減らせるだけの差を生める選手であると信じている。

・小林・ダミアンの劣化と知念の伸び悩み
今年はCFが全然点を取れないシーズンで、この3人の中では知念の7点が最高で合計17点しか取れていない。大久保の得点王は最小でも18なので3人の得点数が大久保の1年未満と言ってしまえばいかに少ないかがよくわかる。
日本代表がそうであるように、やはりCFの得点が伸び悩むチームは攻撃の安定感や爆発力にどうしても物足りなさを感じやすい。

・マルシーニョと脇坂の成長
今年数値をプラス方向に持って行ってくれた筆頭格はこの2人、マルシーニョは決定力やパターンを増やして12得点、脇坂も波はあるけど100%の日はFKやミドルで数字を出した。彼らが今年の出来じゃなかったらACL圏外だった。

・家長の成熟というかカイザー化
家長は本当にチームの王であった、チームどころかリーグの王といっていいぐらいで、そういう意味でキングではなくカイザーと称したい。
詳しく書き出すと1本どころじゃなくnoteを書くことになる。敬意を持って割愛。

・大島の不在はある意味プラマイゼロ
去年も今年もほぼ居なかったのでどちらにも関与せず止まり、ある意味最高に異質な存在。

・怪我人多数
これもいつもの事なのでそんなに大きなマイナスを生んだとは思いにくいが、重なったタイミングと人数が悪かったのは実際そうだと思う。過密日程だからダメージも大きかったが、それは他のクラブも同じなので。

・過密日程
鬼木監督ははっきり言ってターンオーバーが苦手な監督だ。それはもうこれまでの長期政権でずっとそうだったし改善も見当たらない。
そもそも試合で使えるメンバーが20人を切り、スタメンで信じて出せるメンバーは15人を切りかねない。だから基本的には同じメンバーで何年もやってる。そういう監督だ。
だから今年は鬼木監督にとって一番難しいシーズンだったと思う。
加えて即戦力補強が乏しく年間通して出場と成績を残した選手がゼロという散々なオフシーズンの結果を、最大限の所まで引き留めてくれたのは偉業と言っていいレベル。

・3連覇4冠を目指してるとは到底思えない選手獲得
獲得した選手に問題があるとすればチャナティップぐらいで、その他の選手は入ってきた時点で想定されていた妥当な仕事内容だったと思う、若干瀬古は前評判から見劣りはしたけれども、5億円と比べればまだまだ。
前年に主力を一気に抜かれた状態でも大きな目標を掲げたのであれば、落ちたチーム力を戻すためにリソースを使うのは当然。だが今年の上層部は良く言えばポジティブに、悪く言えば傲慢な選択をした。
新卒の将来性投資に枠の大部分を費やし、8人の新加入の内リーグ出場0が5人、残り3人を合計して2406分。これじゃ選手のやりくりもあったもんじゃない。
しかも夏に塚川放出だ。

・チャナティップのコスパの悪さ
フィットが遅いなと思ってたら怪我して、そこそこ出てくるようになってきたと思ったら代表で強行出場して怪我。結局得点力を求めて獲得したのにACLで格下相手から2点取っただけ、アシスト数もおそらく片手で数えられるくらいだろう。
コスパははっきり言ってフロンターレ史に残る悪さ。来年以降もこの感じだと大事にするようだけど、マジでちゃんと数字出してもらわないと困る。
試合出てる所を見ると、確かに上手いんだが上手いだけ止まり。サイズもフィジカルも無いので運動量でカバーするにも限度が低い。じゃあマルシーニョみたいに強引に行っちゃえるかって言うとやけに後ろ向き横向きな選択が多いので、家長・いい時の脇坂・出てこれたら大島らへんに比べると怖さが圧倒的に足りない。
フィットしてきてチームのやり方を覚えたとして、大島が怪我完治したり小塚が仕上がってきたりしたら自然とベンチ外になりそうな予感が…


総括


もうシーズン前半から言い続けている通り、チーム編成が舐め腐っていた結果がそのまんま出た。鬼木監督とスタッフと選手の努力でリーグ2位までなんとか踏ん張った。現場には称賛を、フロントには叱責を。

最終節の試合後の橘田の涙やカップ戦を敗退した後の涙、これら全部現場の皆がそこまで頑張ったけど足りなかったことへの悔しさの表れであって、そういう結果にさせたのはフロント。
選手に苦労を強いて当然の失敗をさせて泣かせる。それが今年のフロンターレがやったこと。これはちゃんと強く厳しく言わないといけない。

来年に向けてやるべきこと


少し前にツイートしたのでそちらを。

とにかくお金の心配が第一、加えてここ数年入れ続けてきた新卒選手が戦力としてどこまで計算できるか。だけど枠も空いてるし補強は必須。即戦力が来てくれるなら欲しい。
小林とダミアンが今年同様、もしくはそれ以下になってしまうようなら苦しい話だが世代交代も喫緊の課題。
ソンリョンと家長も超人的な活躍をしているけど年齢で考えれば衰退して全くおかしくない年齢なので、そこのリスクは潜在的にあるし、世代交代の先延ばしはそんなにできない重要課題。

世代交代の必要性とそれが現保有メンバーでどれだけの割合達成できるか、これは試合に出てすらいないのがほとんどなので私に正確な予想はできそうにない。だが必要性が去年一昨年以上に高まっているのは事実。
ここを失敗してしまうと一気にACL圏外どころかマリノスの過渡期のような景色すらありえるので慎重にやっていきたいところだが、かといって遅らせてばかりいるとそれこそ一瞬で降格とかも普通にありえる。
そういうリスクからは逃げられない時期に入ってしまった以上、覚悟を持ってビジョンを策定してそこ目指して走るしか成功する道はない。

ビジョンについてはユースの方針まで含めた大きな話だし、ユースに関しては成功していると行っていい方向を向いているはずなので、おそらく間違えるということは無いはず。だが目指してる場所が正しくてもたどり着く道が成功一本とは限らない。
まずはビジョンの設定として鬼木監督の続投、ヘッドコーチやユース監督も続投で今の路線を確保すること。その上で戦力を整理し必要なピースを加える。
そういう方向で動くと現時点では思っている。そしてその選択を私は支持する。

ただし、マルシーニョに移籍話が来たことや、ダミアンの去就が不透明になったこと、橘田を筆頭に欧州行って更に伸びてほしい選手と、今いるメンバーですら不透明な点が多いので、とにかく公式リリースが出てくるまではなんとも言えない。
国内外の動き、W杯での結果、昇降格クラブの戦力整理、J2クラブの動き
さらっと書くだけでもこれだけ今後変動する要素があるので、これらの動きが決まって来次第臨機応変に考えていく必要がある。
基本は今の形やり方をベースに、だが危機感を持って手を加える。
そういうスタンスは確定させておこう。

お気持ちよろしくです。