トポロいなり


甲「いや〜食った食った〜。バイキングなんて久しぶりに来たな〜」

乙「それにしても随分食べたな〜」

甲「ちょうど腹減ってたからな〜。ところでどうしたの?珍しいじゃん。お前から飯に誘ってくるなんて。しかもこの店、値段結構するんじゃない?」

乙「いや、まぁちょっと、臨時収入というかさ。」

甲「何?パチンコで勝ったとか?」

乙「まぁそんな感じかな?」

甲「何?ハッキリしないね。いくら勝ったの?」

乙「まぁ、これから数えるんだけど。」

甲「何?意味わかんない。」

乙「この前さ、一緒に飲みに行ったじゃん?」

甲「あー、確か1ヶ月くらい前。」

乙「そうそう。その時にさ。話した内容覚えてる?」

甲「まぁ全部ではないけど」

乙「最後の方でさ、好きな食べ物の話になったじゃん?」

甲「うん」

乙「『もう一生ひとつの料理しか食べちゃダメってなったら何選ぶ?』って話になってさ。お前、おいなりさんって答えたよね?」

甲「そう言えばそんな話したね。」

乙「でさ、俺が『じゃあほんとにおいなりさんしか食べちゃダメって言われたらできるか?』って聞いたら『できる』って言ったよな?で『じゃあこれから先、俺の前でおいなりさん以外の物を食べたら一品ごとに罰金一万円な!』って言ったら『いいよ』って言ったよな?」

甲「...うん...言ったね....え?何?あれ冗談でしょ。」

乙「んなわけないだろ。ホラ!酒の上とはいえ男と男の約束だ!こんなに色んな物食べたんだから、払ってもらうよ。」

甲「え?もしかしてそれのためにこうやって誘ってきたの?うわ汚ねえ〜。...いや、わかったよ!男と男の約束なんだろ!じゃあいくらなんだよ!」

乙「まずは、確か、ちらし寿司食べてたな。」

甲「ちょっと待て、ちらし寿司はノーカンだよ。」

乙「なんでだよ!」

甲「だって考えてみろ。ちらし寿司とおいなりさんは同じ物だろ!」

乙「いやおかしいだろ!寿司の仲間かもしれないけど、同じ物ではないよ。」

甲「い〜や!同じ物だ。だって考えてみろよ。おいなりさんってのは、ちらし寿司を油揚げで包んだ物だろ?って事は、おいなりさんの油揚げが無いバージョンって事になる!よって、ちらし寿司はおいなりさんと同じ!証明終わり」

乙「何だよその理屈!ダメだよそんなの!」

甲「じゃあお前、カタツムリは好きだけどナメクジは嫌いって人見たことあんのか?無いだろ!だから一緒なんだよ!」

乙「何だよそれ!まぁいいよ!じゃあちらし寿司はノーカンな!」

甲「いいの?良かった〜。言ってみるもんだな〜」

乙「まだ色々あるからな一個くらい大目にみてやるよ。つぎはそうはいかないからな。握り寿司も食べてただろこれは同じじゃないぞ!ま、俺も鬼じゃないからな。何種類かあったけどまとめて一品にしといてやる」

甲「それもノーカンだよ。」

乙「またきたよ!なんでノーカンなんだよ?」

甲「だってな。ちらし寿司に入ってる具が大きくなって酢飯が小さくなったら握り寿司になるだろ?だから握り寿司とちらし寿司は同じなんだよ。で、さっきも言った通りちらし寿司とおいなりさんは同じ。よって、握り寿司とおいなりさんは同じ!証明終わり。」

乙「その証明終わりってのやめろよ!変な理屈こねやがって!わかったよ!ノーカンでいいよ!まだまだあるんだ。餃子も食べてたな。」

甲「それもノーカン。」

乙「またか..」

甲「いなり寿司はご飯を油揚げで包んだ物、餃子も具を皮で包んだ物だから餃子はいなり寿司の油揚げを皮に替えてご飯が具になったバージョンだから餃子もおいなりさんと同じ!」

乙「同じか〜。」

甲「ちなみに同じ理屈で春巻とトルティーヤも一緒だからね。」

乙「わかったよ!まだあるんだ。ピザも食ってたな。ピザは包んでないし素材も違うだろ。」

甲「いや、ピザも一緒。」

乙「どこがだよ!」

甲「いいか。餃子の皮を広げて、その皮全体に具を広げてくだろ?それをそのまま大きくすればピザと同じになるだろ!だからピザと餃子は同じ。ゆえにピザはおいなりさん!」

乙「変な理屈だな〜。わかったよ。おいなりさんとピザも一緒なんだな。わかった。
でも、その後うどん食べてたよな。コレは違う」

甲「違わない」

乙「いや、違う」

甲「違わない!オレ食べてたのキツネうどんだもん。キツネうどんはおいなりさんの中身がご飯から麺に代わって、それがどんぶりの中に出てるだけ。だから一緒」

乙「なんだよそれ〜。じゃあ最後の方にソフトクリーム食べてたよな?じゃああれも一緒か?」

甲「そうだよ!だってあのコーンの部分は」

乙「わかった!一緒なんだな!いいよもう。
でもその後パフェ食べてたよ。コレはさすがに」

甲「一緒!」

乙「なんでだよ!全然違う」

甲「いや、パフェは、ソフトクリームのコーンの部分が食べられないくらいの硬さになった物だから同じ。」

乙「だんだん無理矢理になってきてる気がするなぁ。」

甲「ちなみにクレープも一緒だからね」

乙「わかったよ。」

甲「で、今から俺、食後の薬飲むけどコレカプセルのやつだから...」

乙「いいよもう!聞いてないだろ!なんだよオイ。今日はお前に払わせようと思ってここまで連れてきたのに俺が払うのかよ。」

甲「ごちそうさまです。」

乙「うるさいよ!あ〜チクショウ。変な理屈ばかりこねやがって、お前の事ボコボコにしたい気分だよ。」

甲「別に構わないよ。」

乙「本当か?」

甲「ああ、打つなり蹴るなりすきにしてもらって構わない。だけど一つだけ条件がある」

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