引揚救助について
※記事の内容は関係者にしか分からないような言葉、単語が多く含まれます。
先日後輩から引揚救助についての記事を書いてほしいとの声があったので、引揚救助についてのお話をまとめてみようと思います。
ちなみにこのnoteの過去記事を後輩に見られたことに気づき、死ぬほど恥ずかしくなりました。記事の中ですごく偉そうに語っているので。
私が引揚救助で全国大会に出場したのはもう17年ぐらい前の話なので、かなり古い話ではあるのですが、ルールが昔とほとんど変わってないので、ある程度通用すると思います。で、当時私達のチームが何を考えてどういうことをやっていたのかを語ります。何か参考になればうれしいです。
当時、県大会に関しては、県内のチームがそこまでレベルが高くなかったので、大きなミスさえなければ通過できました。2番員、3番員が熟練のメンバーだったため余裕でした。私は2番員です。
問題はその先で、地区大会。ここで上位2位に入らないと全国大会にはいけません。周りも強豪ばかり。事前の練習会で他のチームを見ていると分かりやすくタイムが速いです。しかもどのチームも。じゃあどこで差がつくの?って話なんですが、
3番員の縛着するところ。2番員が要救助者にカラビナを掛けるところ。この2箇所です。当時私達はこの部分を速くしないと勝てないよねって感じで、とても重要視して練習していました。
3番員の方はチームのリーダーで、私は全幅の信頼を寄せていたので3番員の縛着の部分は完全に任せていました。練習もしっかりされていたので本番とても早かったです。
3番員が登はん開始するまでのタイムが35秒台だったと思います。このタイムは今の時代でもなかなか出ないと思います。前半のタイムは2番3番の良し悪しで決まります。このチームは2番3番が熟練者で普段から早かったので本番当日そのタイムが出せたのは偶然ではありません。すごく集中していたと思います。
そして、チームとしてもっとも重要視していたのが、要救助者にカラビナを掛けるところです。
ここのタイムが勝敗を分けます。(当時ね)
いかに強豪チームでも、ここの連携、技術がないとタイムが出せません。この部分は1番2番3番4番員、全員の連携なので、1人も失敗が許されない部分です。1人ミスったら1秒損します。そして2番員としては1番難しい部分になります。面体つけて視野は狭い。体力的に1番追い込まれるタイミングでカラビナがどこに降ってくるか分からない。ここに欲しいっていう場所に塔上のメンバーがちゃんと降ろしてくれるかは分からない。カラビナの向き、安全環の向きはバラバラ。この局面で冷静にカラビナを3つ掛けるのは相当の練習が必要です。
普段訓練している場所でいくらプレッシャーかけられても失敗はしません。本番という失敗したら終わる舞台、普段と違う施設、環境、空気で本番1発勝負だから難しい。
そのため、どんな強豪チームでもここは失敗する確率が非常に高いといえます。
なのでここ以外の部分のタイムが早くても、このカラビナの部分で2秒くらいロスして全体通してタイムが遅くなり負けているチームをよくみました。
この部分でのミスによるタイムロスがとにかく大きいといった感じですかね。
それが分かっていたので、この部分をいかに失敗せず、かつ早く作業するかということをひたすら考えて日々過ごしていたという感じです。
そのためどういった練習をしていたかというと、部分訓練は全くやらず通しのみ行いました。どういうこと?って話なんですけども、カラビナの部分の練習をしたいから、スタートからカラビナのところまで流れでやって、そのままカラビナの練習をして、せっかくだから最後までやってしまおうっていう感じです。なので、ただの通しです。
部分訓練をいくらやっても状況がまったく違から練習にならないと判断して部分訓練はあえて全くしませんでした。
なので、地区大会の練習期間に入ってからはほぼ通ししかしませんでした。細かいところは全て通しの中で修正してました。もしくは練習時間以外の時間で部分的にしてました。練習時間は3時間半ほどありましたけど、ずっと通しなので、基本毎当務通し10本やってたと思います。現代は分かりませんが、当時は狂ったように通しだけしてましたね。体力も精神も鍛えるためにひたすら量をこなしていたって感じです。もちろん、ただ回数こなすだけでなく1本1本修正するところ洗い出して微調整の繰り返しです。
1番員は筋力的にきつかったと思いますけど、そんなもん知らねーよって感じで2番3番も塔下を走り回ってるので同じでしょってことで、時間いっぱいボロボロになるまでやってました。
要救助者のカラビナの部分をやたらと重要視しているけど、登はんや救出が早ければいいじゃないって思うと思うけども、もちろんそこも重要なんだけど、地区大会になると、そこのタイムってどこのチームもけっこう早いんですね。3番の登はんも早いし、救出も早いし、脱出も早い。他のチームと差がつかないんです。しかも縦もので失敗することがほぼない。ロープ引くだけなので。
というわけで、全ての部分を強化していく中で、特に他のチームと差が生まれやすい縛着とカラビナの部分、ここを重要視して常に練習していました。
大会本番当日はうまくいってカラビナの部分のタイムは9.2秒くらいに収まりました。1年くらいかけて練習していたものが決まった瞬間でした。うまくいったとか言ってますがこれは相当難しいことで、ずっと試行錯誤してやっとこさ出せたタイムです。
ちなみに本番のタイムは73秒くらいだったと思います。
カラビナの部分で技術的なことをいうと型みたいなものは前年からできあがっていて、問題は精神のコントロールとかで、速くやらなきゃいけない状況で、いかに速く動こうとする手を失敗しないギリギリのスピードで動かす冷静さが大事だったりします。まあ、この辺を語り出すと10日ぐらいかかるので飛ばします。
あと、まだまだ取り組んだことはあるんですけども、1個1個語ってたらマジで10日くらいかかるので、私達のチーム以降やってるチームを全く見かけなくて効果があったなと思う取り組みを紹介します。
それは、あえて環境を悪く悪く設定していくといった方法です。分かりやすいのは安全マット。これを毎当務変えてました。今日は硬いマット。今日は柔らかくて沈むマット、といった感じ。本番当日が自分たちの施設なら全く問題ないんですね。失敗なんかしないんです。普段とほとんど変わらないので。本番当日がいつもと違う施設でやるから幾多のチームが失敗して散っていっている。
なので、施設が変わっても対応できる身体を身につけるために、マットを毎日変えてました。やってみたらどうなるか、沈むマットは非常にやりにくいのでタイムが遅くなるんですけども、何回もやってると対応力が身についてきて、どっちのマットでも同じようなタイムで作業できるようになります。足場の環境の変化に瞬時に対応して体勢を微調整して縛着やカラビナ操作できるように上達しました。
で、しかも、これを雨の日も関係なく同じことやりました。雨の日も通し10本です。マットを変えながら。
当時雨の日の練習が非常に多かったことも覚えています。「雨の中で通しやるから上達するんじゃい」とか言って部分訓練一切しませんでした。
もちろん始めのうちは足元滑るし、タイムは相当遅くなるし、革手はボロボロになるし、メンタル的に練習したくなかったりしますけど、途中から腹くくって雨でも通しだけやり倒しました。
それを続けていたら大雨でもタイム普通に70秒台出せるようになったし、環境によって左右さずに対応できる身体に仕上げれたと思います。実際そんな状態でいつも練習していたので、本番当日の施設がやりやすくて仕方なく感じたし、本番当日のほうがこっちの施設でのタイムより早かったと思います。
私達のチーム以降そういったあえて訓練環境を悪く設定して練習しているチームを見たことがありません。基本的にタイムが遅くなるので、そのあたりは精神的に耐えられないと思います。熟練の2番3番がいたからできただけの話です。
以降、晴れた日にタイムを出そう出そうと何回も繰り返し通ししているのはよく見ますが、私から見たら環境が良いんだからタイム出せて当たり前でしょうといったところで、大事なのは本番の舞台でタイム出すことなので、練習はどこまでプレッシャー与えてもあくまで練習。自分達の施設でたとえ良いタイム出せても、どうせホームで出したタイムなので。
私達のチームは当時けっこう上手いチームでしたけど、自分達が勝てるかも?なんて一瞬も思ったことはなかったです。本番は全く違う場面なので。
勝てるかも?なんて一瞬でも思ったら負けると思ってました。油断するので。
まあでも全て当時の話なんで、再現性はないと思います。周りのチームのレベルが昔と違いますから、でも自分らの強みとか弱みとか、どの部分を強化してくかなどを考えて、練習やって修正してやって修正してを繰り返すのはどの時代も同じですからね。
そこの「思考」を誰よりも深く考えられるか。って結構重要ですよね。私より救助大会について思考してる人間に出会ったことがありません。少なくとも東近畿地区内にはいなかったです。
あとひたすらに練習の量こなせるか。けっこう体力必要ですよね。
最終、私みたいな人生の時間のほとんどを救助大会にあててる変態野郎じゃないと無理だと思います。練習するの好きで練習してたので。休みの日も救助大会のことだけ考えていたので。ただの異常者。
他にも当時取り組んでたことはたくさんありますが、永遠に終わらなくなるのでまた今度追記します。
ではまた。
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