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葛尾村の未来を描くために

 震災から10年の節目を目前に、葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)も活動の転換点を迎えています。この9年間で、手掛けてきた活動たちは形になり、ZICCAという拠点も完成しました。そうした今、葛力創造舎は葛尾村の未来を描こうとしています。このnoteでは、転換点を迎えている葛力創造舎のこれまでとこれからについてお話しします。


葛力創造舎のこれまで

 葛力創造舎は、通常なら持続不可能と思われるような数百人単位の過疎の集落でも、人々が幸せに暮らしていける経済の仕組みを考え、そのための人材育成を支援する団体です。東日本大震災によって一時全村避難となり人口が激減している葛尾村をフィールドに震災直後から活動しています。

葛力創造舎の活動は、次の3つの軸から成り立っています。

1.コミュニティー・サポート事業

 コミュニティー・サポート事業では、コミュニティーに必要な人材の発掘・育成やコミュニティ内・間での資源循環の仕組みの構築を行っています。

2.パーソナル・サポート事業

 パーソナル・サポート事業では、普通の個人が自立・自走できるためのスキルアップ機会の提供を行っています。具体的には、大学生を対象とした復興創生インターンシップの運営などを行っています。

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3.葛力ブランド事業

 葛力ブランド事業では、上記2事業の原資となる利益創出のための自社ブランド製品・サービスの開発・販売を行っています。具体的には、自分たちで栽培している米を使用した甘酒「ノマッシェ」や日本酒「でれすけ」などの販売を行っています。

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葛力創造舎のこれから

 これまでの活動は、村の人たちの声を聴きながら、必要と感じたものを1つ1つ形にしていく作業でした。そのような活動を続けていく中で、最近は断片的にしてきた活動のつながりが見え始めてきています。これは活動の背景にあるけれども言葉にはなっていなかった村の文化や歴史、またそれらに基づいた当団体のビジョンが少しづつ言葉になってきたということだと考えています。

 葛力創造舎は、村の文化や歴史を改めて認識し、それを踏まえて葛尾村のグランドデザインを描く年として今年を位置付けています。それを実行に移すため、復興庁事業の中で、団体外の方に伴走していただきながらグランドデザインを考える取り組みを行わせていただいております。先日は、一般社団法人BOOT代表理事で西会津を拠点に活動されている矢部佳宏氏にグランドデザインの考え方をお教えいただきました。

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グランドデザインの考え方

 グランドデザインとは、地域全体の未来を構想することです。そのためには、過去・現在をデータに基づいて振り返り、未来について予測することが必要です。図示すると、下図のような過去・現在・未来という3層構造になります。

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①西会津の過去・現在・未来

 まずは、矢部さんが住まれている西会津町の集落の過去・現在・未来を次のように例示していただきました。

【過去:矢部さん引っ越し時】
・世帯数:23世帯

【現在】
・世帯数:14世帯
・平均年齢:68歳

【未来:予測】
・世帯数:5世帯
[課題]
・田畑や山の維持や鳥獣害対策が大変
[解決策]
・普段はITや機械を使って管理していく、また外から人を呼んでくる
→これを持続的な資金をもとにまわしていく
→住んでいない人1人1人がアクティブに動いて大きいインパクトを与える


②葛尾村の過去・現在・未来

 次に、葛尾村の過去・現在・未来を整理しました。

【過去:震災以前】
・人口:約1500名

【現在】
・人口:約400名(住所があるだけですべてが定住しているわけではない)
・高齢化率50%以上
・小中合わせて11名(大半が中学卒業で出ていく)

【未来:予測】
・人口:約100名
・複数拠点で生活している人も多い
[課題]
・地域の維持のために自分から物事を作る起業家が20%程度必要
[解決策]
・当団体がそのような起業家が生まれる仕組みを作っていく


③未来の考え方

 上述のように、簡単に地域の過去・現在・未来を整理しました。ここからより詳細なグランドデザインを作るためには、3つの主語で未来を考えることが必要です。人口構成などが大きく変化する20年後を目安に、次の3つの主語で未来を考えていきます。

1.主語:自分
  「20年後、私は何をしている?」

2.主語:葛力創造舎
  「20年後、葛力創造舎はどうなっている」

3.主語:葛尾村
  「20年後、環境条件から見て葛尾村はどうなっている?」


葛尾村のデータ

 3つの主語から未来を考えてグランドデザインを描くことが最終的な目標ですが、グランドデザインを実効性のあるものにするためには、データを通じて葛尾村の過去・現在を把握することが重要です。そこで、次に、葛尾村に関する様々なデータを改めて整理しました。


基本データを並べる

 まずは、次のように、葛尾村の基本データを並べました。

人口:1419人(15歳未満:135人)※2009年時点

面積:84.3㎢

自治区数:11区

主要産業:畜産、林業(→現在は行われていない)など


データを地図にする

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 これらのデータを地図に書き起こすと上図のようになります。地図にすることで、文字でしかなかったデータが有機的なつながりをもって浮かび上がるってきます。


個人の思い出を重ねる

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 さらに、その地図の上に、個人の思い出を重ねていきました。特に、盛り上がったのは「道をどっちに向かうのがワクワクするか」という話題です。

 葛尾村出身で当団体にてスタッフをしている松本は、50号線を浪江方向に向かうのがワクワクするそうです。浪江との境界近くに実家があるため、昔は車に乗っているだけだったところを今は運転しているというのがワクワクする大きな理由とのことです。

 また、東京都出身でバーテーブル製作のために葛尾村に滞在している建築学生の筏は、50号線を郡山から葛尾村の落合集落に向かって来るのがワクワクするそうです。彼は路線バスで来ることが多いので、バスが通っているこの道がワクワクするのではないかということでした。

 一方、当団体代表の下枝は、50号線を葛尾村から郡山から向かって行くのがワクワクするそうです。幼少期から楽しいことがある都会といえば郡山だったため、50号線を西に進んで郡山に向かうのがワクワクするとのことです。

 このように、可視化されたデータに個人の思い出を重ねていくと、有機的なつながりが深まっていき、葛尾村像がより鮮明に見えてきます。このように葛尾村に対する解像度を上げることは、先述した過去・現在のレイヤーを深く考えることにつながり、ひいては有効な未来予測を可能にします。



今後の動き

 ここまで、地図の上で、葛尾村の人口・自治区などのデータや個人の思い出を重ねていきましたが、葛尾村の過去・現在を深く知るにはまだまだ情報が足りていません。そこで、今後、当団体は、葛尾村の人口構造や産業構造、また葛尾村の文化や歴史などの情報を整理していきたいと考えています。

 また、整理された情報をアーカイブする手段として、このような当団体のnoteを利用していく予定です。そのようにして蓄積された葛尾村の過去・現在に関する情報をもとに、葛尾村のグランドデザインを描いていきます。


一般社団法人 葛力創造舎

 葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)は、通常なら持続不可能と思われるような数百人単位の過疎の集落でも、人々が幸せに暮らしていける経済の仕組みを考え、そのための人材育成を支援する団体です。


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