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月と猫の番外編:空にとらわれた娘

遠い昔、私は女神フレイヤ様の怒りを買い、空の果ての牢獄に閉じ込められた。
フレイヤ様が雲で紡いだ真珠の縄で私はほとんどの自由を奪われてしまった。
そんな私の唯一のお友達は、私が空の色を集めて創り、精霊の息を込めた空と同じ色の猫。
でも、完全な生き物ではないから名前は「ナイン」と名付けた。
完全に1つ足りない精霊の猫。
この子は、私の目や耳や鼻となって、私を飽きさせない様にいろいろなところに遊びに行ってはお話を聞かせてくれる。

ある日、この子がフレイヤ様とフレイ様が話している事を聞いてきてくれた。
「フレイヤ、あの娘をいつまで閉じ込めておく気なの?もう900年も経つのよ。」
「姉さん、私ももう別にいいのだけど、一つ、切っ掛けを与えてやりたいの。」
「どんな切っ掛け?」
「ええ、あの娘が空の気を固めて創ったあの猫に、アスガルドに来たヤマトの王子の魂を閉じ込めたのさ。」
「フレイヤ、それが何の切っ掛けになるっていうの?」
「あの娘が真実の息をあの猫に吹きかければ、あの猫は王子の姿に変わって、あの娘は元の世界に戻れるのさ。」

「え?本当なの?ナイン?
 でも、その方法がわからないわ。 どうすればいいんでしょう?」
「サクヤ、ゆっくり考えればいいよ。ぼくはいつも君といるから、ね。」
まだ、囚われの身だけれど、私には、ナインという希望ができた。

いつになればその切っ掛けがつかめるのか分からないけど、ここにいれば、永遠の時の中で、あなたと私は一緒にいられるもの。

作画:泉麗香

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