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佐伯哲也のお城てくてく物語

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『城郭図面集』シリーズの著者、佐伯哲也さんがお城の意外な一面や興味深い新事実を紹介しています。
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2023年7月の記事一覧

佐伯哲也のお城てくてく物語 #4

第4回 織田軍は飛び道具がお好き? 戦国中期の天文12年(1543)、ポルトガル人によって種子島に2挺の鉄砲が持ち込まれた。この鉄砲という飛び道具、「戦国」という時代の要請もあってアッという間に普及し、慶長5年(1600)の関ヶ原合戦には6万挺の鉄砲が集まったとされている。  鉄砲を最も着目し、最も大々的に使用したのは周知の如く織田信長である。ただし、各地の小大名といえども早くから鉄砲の存在を知っており、必要性も痛感していた。永禄7年(1564)に、飛騨国高原郷の江馬輝盛が鉄

佐伯哲也のお城てくてく物語 #3

第3回 敵前逃亡は当たり前? 世の中は史上空前の城ブームである。特に山城の人気は絶大で、「城ガール」という造語すら生まれている。  この影響を受けて、テレビでも落城シーンを見ることが多くなった。燃え盛る紅蓮の炎の中で、城主が切腹する、といったお馴染みのシーンである。しかし実際は余程違っていたようである。というのもこのような落城は、史料上ほとんど確認できないからである。城主が戦死して落城する確実な事例は、富山県の場合、魚津城(魚津市)でしか確認できない。天正10年(1582)織