ホームランボール

彼女と交際をはじめてまもなく4年になる。

僕より3つ下の24歳。旅行代理店で働いている。

これといった喧嘩もしたことはなく同棲はしてないが適度に会い、いい距離感で関係が続いている。

ただ、そんな彼女にずっとついている嘘がある。

彼女と2回目に会ったときについてしまった嘘。

野球が好きで子供の頃はジャイアンツファンの父親によく球場に連れていってもらいその影響でジャイアンツファンになったという彼女の話を聞き、そんな彼女に少しでも気に入られたい一心で、

”子供のときに松井秀喜のホームランボールを取った”

という嘘をついた。

期待通り、いや期待以上に彼女はその嘘に興味を示し話が弾んだ。あの嘘で多少なりとも距離が縮んだのは間違いない。

でも松井秀喜のホームランボールなんて取ってはいない。

実際には松井秀喜のホームランボールではなく、元木のファウルボールである。

彼女に嘘をついている。
4年間そのことがずっと気にかかっている。
気持ち悪いこの感じがいよいよ我慢できない。
でも別に言わなくてもいいだろうと思っている自分もいる。
言ったとてだから。
これが実はバツイチだったとか、伝えてる仕事とは違う仕事をしているとかだったら話は別だが、松井秀喜のホームランボールではなく元木のファウルボールだったということだから。
言ったとても言ったとてである。

ただ内容関係なく嘘をついていることが問題なのだ。

明らかに打ち明けるタイミングを失ってしまった。
仮に打ち明けたとして彼女の性格からして、笑って受け入れてくれるはず。間違っても激怒することはないはず。いやでも少しは傷つくかな。

さぁどうしたものか。

あぁなんで松井秀喜のホームランボールではなく元木のファウルボールなんだ。
なんで元木のファウルボールではなく松井秀喜のホームランボールじゃないんだ。

なんで。


あぁやっぱり勇気を出して嘘をついてたことを打ち明けてよかった。
肩の荷が下りた。モヤモヤが一瞬にして消え去った。

隠していることは話すことは大事だ。


おかげで彼女も実はバツイチでハッカーだったことを伝えてくれた。


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