西宮に住んでいた(5)

二十数年前のことだから、忘れていることもたくさんある。むしろ忘れていた方がいいと思って、思い出すきっかけになりそうな物を遠ざけていた。

一か月ほど前、その人と初対面だった。その人は阪神淡路大震災当時、神戸にいたと言う。それであの頃の私の記憶の扉が開いてしまったのかもしれない。

神戸は靴の街、なんて言われたりする。西宮に引っ越して数ヶ月後に、靴を作った。
はっきり覚えていないが、神戸市内の靴職人さんのマンションみたいなところで注文した。完全なオーダーメイドではないが、足の採寸をしてもらって、革の種類や色・デザイン・ヒールの高さなどを相談した。ベージュ色の柔らかい革のローヒールのシンプルなパンプスにした。実を言うとあまり履いていなかった。でもずっと持っていた。その靴を最近履いてみたら、ちゃんと履けたし痛くもない。自分の足に合う靴ってありがたいな。作ってから二十五年以上は経っているのに、何の問題もなく履けるってすごい。
それ以外にも靴を作ってもらったことがあった。こっちははっきり覚えている。コーナンで作った。コーナンというのは、今は全国にあるのかもしれないが、当時はたぶん関西に主に展開していたと思う。いわゆるホームセンターなのだが、それはやはり靴の街神戸、コーナンの中に靴職人さんがいる靴屋があってオーダーメイドができたのだ。黒い革のローファーっぽいデザインの靴を作った。これはめちゃくちゃ履いた。これを履いたら足にタコができなくなった。ありがたい。ずいぶん長く履いていたけど、さすがに古くなって履けなくなっちゃったな。
靴作りたい。神戸に行かなくても作れるんだろうけど、また神戸で作れたらなぁ。

最近の神戸はどんな感じなのかな?京都は外国人観光客ですごく混雑しているというニュースをよく聞くけど。
あの頃の神戸は、震災から徐々に復興していく段階だった。観光客も震災前よりもちろん少なかっただろう。
震災の年の12月に初めて神戸ルミナリエを見たときは、本当にすごかった。初年度だったから見に来ているのは地元の人って感じで、一体感があった。とにかく見たことない美しさだった。震災の鎮魂の想いのこもったルミナリエだった。二年目以降は復興が進んだし、見に来る人も地元だけでなくもっと広く観光客が集まるイベントになって、にぎやかさは増したけど、初年度ほどには感動できなくなっていた。もちろんすごくきれいだったけど。

続く




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