見出し画像

八ッ目鳗とドライブ・マイ・カー

浅草の雷門1丁目交差点の角に、とても目立っている店がある。

それが

元祖 八ッ目本舗


店舗の道路の向い側は何度か通ったことがあり、前から気にはなっていたが店に入ったことは無かった。

先日、所用があり浅草に行った際にちょっと立ち寄ってみた。

遠目では飲食店なのかと思っていたが、八ッ目鳗由来の健康食品や漢方生薬を扱っている店のようで、他にもオットセイの滋養強壮剤や中国原産の果実の「なつめ」なども販売している。
(飲食がメインではないが、軽い飲食はできるみたい)

店先を覗いていたら、お店の方が声をかけてきた。

良かったらこれどうぞと言って、「八ッ目鳗キモの油」というサプリのサンプルをくれた。
なんでも目の渇きに良いという。

八ッ目鳗のサプリメント

マスクをする生活になってからというもの、メガネが曇るのでコンタクトを使用する機会が増えた。

コンタクトをすると目が乾きやすいのと春先の花粉の季節には目がゴロゴロしたりするので、もしそれらに効果があるならば使ってみてもいいかなと思ったので、
「これ速攻性はありますか?」と聞いてみた。

「点眼剤ではないので速攻性はないですね。
 続けて服用してもらうと効果がでます。」

とのことだった。

まあ、所謂目薬ではないので当たり前と言えば当たり前か ^_^ ;

「でも、体に良い成分ですので目だけでなく健康によいですよ」

とのこと。

買おうかどうか迷ったが、今回はサンプル品をもらうに留めた。

お店の人によると「八ッ目鳗」は今話題の「ドライブ・マイ・カー」という映画にも出てくるとのことで、最近はネットで調べてわざわざ買いに来る人もいるそうだ。

「へ〜、あの『ドライブ・マイ・カー』に八ッ目鳗の話がでてくるんだ?」

カンヌ映画祭やアカデミー賞を受賞するなど話題になっているので、映画に詳しくない私でも題名ぐらいは知っていた。

あっ、そもそも「ヤツメウナギ」自体を知らない人が多いと思うので簡単に説明すると、
「円口類」とか「無顎類」と呼ばれる原始的水生生物で、名前と見た目はウナギに似ているが、鰻とは縁遠い生物です。
北海道や北東北に生息しているとのことですが、川にダムが沢山できたため数はかなり減っているとのこと。

なぜ「八ッ目」かというと、実際の目に加えてエラ穴が7つ並んでいて、合計8つの目があるように見えるから「八ッ目」。
丸い口で魚の体にかぶりついて、魚の血を吸ったりして生きているのですが、そのかぶりついている姿はちょっとグロイです。

※閲覧注意↓


また店先の商品を見ていると、乾燥した丸ごとの八ッ目鳗が売っていることに気がついた。

珍しい魚を見ると取り敢えず食べておこうというタチなので、この乾燥八ッ目鳗を試しに1本買ってみることにした。

すると店の人がちょっと驚いたように、
「えっ、本当に買うんですか?」と聞いてきた。

店の人が驚くぐらいだから、あまり買う人はいないのだろうと思う。

さらに「そんなに美味しいものでもないですよ」と。

「いやいや、売る気あるんか〜い!」って思ってしまう(笑)

「一つ頂いてきます」と言って、その上でどうやって食べるかを聞いてみたところ、そのまま焼いてお好みで醤油をかけてもよいとのことだった。
水で戻したりして煮込んだりする必要があるのかと思ったが、特にその必要はなくそのまま食べればよいらしい。

ということで、1本購入して店を後にした。

話題の映画「ドライブ・マイ・カー


今話題になっている映画だし、八ッ目鳗の話がでてくるとのことなので「ドライブ・マイ・カー」を見てみることにした。

海外の賞をたくさん受賞していることぐらいは知っているが、予備知識もほとんどない状態で見始めた。

すると、予想外に最初から官能的な映画で、八ッ目鳗の話も割と早い段階で出てきた。
しかも序盤の一番の見せ場となる場面にて。

その八ッ目鳗の話が出る場面のセリフを映画の中から一部引用 ↓

 ある日、彼女は前世のことを思い出すの。
 前世、彼女はヤツメウナギだったの。 
 彼女は高貴なヤツメウナギだった。
 ほかのヤツメウナギみたいに上を通りかかる魚に寄生したりしない。
 川底の石に吸盤みたいな唇をくっつけてひたすらゆらゆらする。
映画「ドライブ・マイ・カー」より

なかなか文学的?でかつシュールな表現でとても印象に残る。

なるほど、これならわざわざ八ッ目鳗を買いに来たくなる人がいるのも頷ける。

映画の論評がしたいわけではないので、内容の詳細にはあまり触れないことにするが、約3時間というかなり長い映画であり、しかも中盤は感情を押し殺した淡々としたシーンが長く続くので、見ていて集中力が切れそうになることももしばしば。

ただ、話が進んでいくうち、感情を押し殺すようになった原因などの話の回収がされていき、終盤になると引き込まれていき、最終的にはなるほど面白い映画だったと思える内容だった。

見終わってみて、内面を描くところがフランス人あたりが好みそうな映画かなと思った。
なのでカンヌ映画祭での受賞は理解できる。

ただハリウッド映画のような派手さ分かりやすさが好まれるアメリカでアカデミー賞を受賞したのはやや意外に感じた。

八ッ目鳗実食

映画も見終わり、いよいよ八ッ目鳗を実食することに。

お店の人に言われたとおり、そのまま焼いて食べてみることにする。

取り敢えず、味見のため一部を一口大に切りフライパンで焼いてみる。

乾燥したものなので焼いたらカリカリになるのかなと思っていたら予想に反して脂が非常に多く、焼いているとどんどん脂が滲みだしてくる。
と同時に独特な匂いもしてきた。

フライパンで加熱すると脂が染み出してきた


どんな匂いかというと、香ばしいのだけれど何とも例えようのない不思議な匂いだ。

まずは何も付けづに食べてみると、水分の少ないウナギのような感じもするし、また別な感じもして何とも表現がしにくい。

嚙んでいるうちにだんだん苦みも出てきた。

ただ、決して旨いものではないけれど、不味いというほどではないかな。

次に醤油を少し垂らしてみる。
なるほど、少し食べやすくなった感じがする。

最後に七味をかけてみる。
独特のクセを隠すととができるので、これが一番食べ易いかな。

ここまで三切れ食べみた。

お酒も飲みながらだけど、なんか体が熱くなってきた感じがする。
血行がよくなったというか、確かに滋養強壮には良さそうだ。

残った分を煮込んだりして食べてみようかと思ったけど、一度にたくさん食べる感じのものでも無さそうなので今日はこのぐらいにしておこうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?