司馬遼太郎記念館にて
司馬遼太郎記念館を2年ぶりに訪れた。
来訪者ノートに「刺激を受けてもっと高い所を目指さなければ……覚悟を持って新しいことにチャレンジする」みたいなことを書いた。
2年経ってどう変わったか、そしてその結果と目標達成度とズレの把握、それから頭の中の整理が今回の目的だった。
とは言え、そんな業務報告のようなことをつらつらと書いた所で読む人は面白くないはずなので、記念館レポートを。
門を抜け、司馬さんの好きだった雑木林を抜けると、コンクリート打ちっぱなしの流線型の通路が現れて来る。この建築物は、安藤忠雄氏の建築設計でコンセプトが「感じる記念館」。
司馬作品との対話、自分自身との対話を通じて、何かを考えることのできる空間にしたいというもの。ここは不思議な場所で、この建物を出ると気分も頭の中もとてもスッキリするのだ。まるでお墓参りの後みたいに。
僕自身が特に落ち着く理由は、6万冊に及ぶ書物と司馬さんの著作や万年筆・眼鏡などの愛用品に囲まれているからだ。
もっと言うと司馬さんの頭の中にお邪魔させてもらって、連綿と続く歴史上の人物達と束の間触れていられるような錯覚を覚えるからだ。
記念館の運営は、司馬遼太郎財団が運営していて、ほとんどのスタッフがボランティアでサポートされているのだ。特に感じることは、この空間は愛に満ちていて(それは決して気障な表現じゃなく)、司馬さんの作品が好きで、また人の役に立ちたいという人が嬉々として働いていて、作品の文字ひとつ1つが著者が去ったあともキラキラと輝き少しも色褪せず、訪れる人達に希望を与えているからだ。
司馬作品を愛する人達だけがその空間を形成しているのだ。
ここには来訪者達が書くことのできるノートがある。そのノートは津々浦々から訪れる、様々な人達の気持ちや司馬作品に対する想いや作品を媒介として見え隠れする人生模様が浮かび上がっている。
日々デジタルや情報にあくせくする中で、忘れちゃいけない大切なバランスがそこにはあるような気がした。
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