民俗学者は、温泉に関心がない?

旧 日本温泉文化研究会HP「研究余録」2013年2月24日記

民俗学について思うことを。民俗学は、温泉を知る上でとても大切な学問分野の一つだと思います。ところが、柳田國男や折口信夫はもとより、現在に至る研究史を見回してみても、民俗学から温泉に関わる積極的な発言はほとんどみかけません。民俗学からは、一顧だにされていないようなのです。

私が知らないだけかもしれないと思い、日本民俗学会のHPで「温泉」をキーワードに機関誌『日本民俗学』掲載の論文を検索してみました。ヒットしたのは、書評と愛媛県温泉郡の地名が付された論文だけです。あるいは、地方の民俗関係学会誌や地域の研究会誌にはあるかもしれないと思い、国立情報学研究所の「CiNii」から「温泉」&「民俗」をキーワードに検索してみたのですが、やはり9本の論文情報しか表示されませんでした。民俗学系の雑誌は、その多くが誌名に「民俗」を冠していますので、「CiNii」に登録されていれば抽出されるはずです。民俗学者が温泉に関心を示していないことは、これでも裏付けられたと思います。前に日本民俗学会にお願いして、同会のホームページに日本温泉文化研究会HPへのリンクを張っていただいたのですが、ほとんど反応はありません。なぜ、民俗学は温泉に関心を示さないのでしょうか。古い文化を探ろうとする民俗学者からも、その現代性を強調する研究者からも、関心が持たれていないのです。

『論集温泉学』を出版していただいている岩田書院の岩田博さんから、民俗学関係の本が売れない、と聞きました。その理由の一つとして考えられるのは、研究テーマが歴史学以上に細分化していることだそうです。多様性の学問である民俗学を、ある意味象徴している現象なのかもしれません。民俗学は温泉研究の要の一つ。今は、民俗学研究者の奮起を期待して、日本温泉文化研究会も魅力的な(民俗学者がそそられるような)学的情報を発信し続けていくことが大切だと思っています。

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