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これ観ました! 芝居見物レポート 七月@新橋演舞場

刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)

新作歌舞伎 😊スペクタクル・眼福・美麗立廻り・異世界
観劇日 2023年7月16日

本作は、人気ゲーム『刀剣乱舞』に取材した物語。日本の名刀が人の姿形をとり、強く美しい刀剣男士として、歴史を変えようと企む時間遡行軍と、軍と結託する異界の翁と媼を撃退します。

時代背景は室町時代応仁の乱の後。義輝を殺害することになる松永弾正少弼久秀を重鎮の梅玉が勤め、将軍足利義輝の愛刀三日月宗近松也、義輝と小狐丸右近(尾上)、弾正の息子久直と同田貫正国鷹之資、義輝妹と髭切苔玉膝丸吉太郎と、飛ぶ鳥を落とす勢いのきらめく花形が勢ぞろい。自らを刀剣男子の父と考えている古太刀の子烏丸は、三代猿之助(現猿翁)一門出身で現在新派俳優の実力派女形、河合雪之丞が勤めています。

ゲームから派生して、アニメはもとより、舞台(刀ステ)、ミュージカル(刀ミュ)、実写版映画などさまざまな形で展開されている『刀剣乱舞』。それだけに、満を持して新作歌舞伎(とうかぶ)として上演するにあたり、物語だけでなく、衣裳や鬘、せりふにいたるまでこだわり抜いた様子が筋書に紹介されています。

関係者全員入魂の一作とあって、それぞれに工夫を凝らしキャラ立ちした6人の刀剣男士。その所作や口跡は歌舞伎らしく、舞踊の裏付けのある立廻りは美しくキレがあります。勧善懲悪ものではあるものの、主の死を受け入れなければならない宗近の切ない心持ちが折節に描かれ、異界の魔神まで現れるスペクタル性とはかない叙情性が絶妙に絡み合う舞台です。

また、ゲームを題材とした狂言のため、歌舞伎についての簡単な説明を最初に導入しており、ゲームやアニメほかの『刀剣乱舞』ファンで歌舞伎は初めてという観客でも楽しめるように工夫されています。これは同じくゲームを題材とした新作歌舞伎で現在配信公演中の『ファイナルファンタジーX』でも行われていました。

開幕前の幕に、『刀剣乱舞』の由来が書かれています

本作は、ゲームほかを知らなくても、新作歌舞伎として十二分に楽しめる演目ですが、アニメファンの筆者の期待にもみごとに応えてくれました。(2023年7月19日)

(参考文献:公演筋書)

©Katsuma Kineya

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