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箱根駅伝は嫌い。

大晦日も正月も返上するだけの価値はある。

たくさんの人に見てもらえる巨大中継。

やりがいの塊。自分がもし日テレのスポーツディレクターだったら、喜び勇んで全身全霊で取り組んでいただろう。

なんといっても視聴率が違う。だからこそ巨額な予算をかけて大規模に中継を行なっていることがよく分かる。日本のロードレース中継の最先端を突っ走っている。同業者のお手本のような中継体制。

でも大嫌いだ。

こうした素晴らしい中継技術を、下品に使いすぎだ。

トラブルが起きたとき。誰かが苦しみ始めたとき。その対応が早すぎる。その準備が出来すぎている。いい記録が出そうなときや、強豪大学が順調に進んでいるときは、実に平凡な中継だ。なんてことはない。ただあるときどこかでトラブルが発生した瞬間、嘘のような速さで移動カメラが苦悶の表情を捉える。トラブルの背景も取材バッチリ。1位や2位は何処へやら。苦しい、大変、師や友の激励と涙で画面と音声が埋め尽くされる。

素晴らしいセンスだなと思う。匂いがするとでも言うのだろう。トラブルの。

チラチラとザッピング程度にしか箱根駅伝は見ない。その短い瞬間にそのような場面に遭遇したとき、本当にやりきれない気持ちになる。日本最高峰のスポーツ中継技術の使い方に悲しくなる。そして、「全国ネットで高視聴率を取るにはこうやってやらなきゃいけないんだよ。しっかり勉強しな。田舎のスポーツディレクターくん。」と頭を殴られた気がしてクラクラしてくる。

そう。これが自分の仕事に必要なことであることも理解はしているのだ。みんな好きなんだよな〜トラブルが。分かってはいるつもりだ。

でも自分はやらない。僕がこれまで取材を重ねてきたアスリートたちは、僕が下品じゃないスポーツディレクターだったから、真正面から取材に向き合ってくれたと信じている。田舎のディレクターだから、そこまで視聴率と向き合わずに済んだ幸運に感謝しながら、僕は最後まで下品じゃないスポーツディレクターであり続けたいと思う。







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