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【あたしンち】石田にとっての「恋の定義」を考える

バレンタインデーを迎えると毎年決まって思い出すのは、6巻No.14の石田のセリフ。

「同じクラス内で告白するとかって 苦しい
両思いはめったにないじゃん お互い逃げ場なくなるじゃん」

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夢見な小学生の私にとって生まれて初めて感じた衝撃。恋愛は頭の中でするものという学びを得ました。

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↑ 当時の私の心情

そんな幼き日の私は石田はユズヒコに対し恋愛的な好意を抱いていると勝手に妄想してきました。作中で石田の心情が開示されるシーンが少ないため、バイアスのかかった妄想を小学校→中学校→高校と年を重ねながら脳内で繰り広げてきたのです。

石田ゆりはユズヒコに対しどのような気持ちを抱いていたのか。小学生だった昔から少し大人に近づいた今、ほんの少しの冷静さとあの頃の熱量を元に石田の心情を妄想します。

※以下、公式に言及されていないキャラクターの心情を考察するため、特に石田への思い入れがある方など、人によっては気分を害する恐れがあるかと思われます。読み進めていただける場合にはご注意ください。


下校中に出会う石田とユズヒコ

あたしンちを読み返していく中で、石田の心情が開示されているお話を2つ見つけました。1つは雨の降る帰り道で、石田とユズヒコが出会う18巻No.21。

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もう1つは雪が降る帰り道で、須藤ちゃんと買い物帰りの石田と歌を口ずさむユズヒコが出会う21巻No.27。

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どちらも下校時のエピソードであること、石田とユズヒコが2人きりで出会うなど共通点を含む2つのお話。ちなみに各エピソードの時系列は、2人の服装から「18巻No.21」→「21巻No.27」であると読み取れます。この2つのお話から感じたものは、描かている石田の心情の違いです。

18巻No.21で開示された石田の心情は石田自身に焦点が当てられたもの。お腹をかく姿をユズヒコに見られた恥ずかしさから、石田は赤面したと考えられます。

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21巻No.27で開示された石田の心情は、18巻で描かれた心情とは対極的にユズヒコに焦点が当てられたものです。

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コマの中に描かれる「はず…」は、

( ユズピは歌っていたはず… )

という推測の意味にも、

( 人前で歌っているユズピ、なんて恥(は)ずかしいのだ )

という恥じらいの意味にも解釈することができます。

どちらの場合もユズヒコに焦点が当てられた気持ちに対し、石田は赤面したと考えられます。しかし2つの心情の差異から石田がユズヒコに抱く気持ちを断定することは難しいです。


石田にとっての「恋」

2つのお話を見比べていた時に気になったのは21巻No.27のワンシーン。須藤ちゃんと下校する石田が口ずさんだ歌の一節です。

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♫愛は夜ふけすぎに~ 
♫好きへと変わる~だろ

須藤ちゃんが石田の口ずさむ歌詞の間違いを指摘する様子から、これは山下達郎さんが歌う『クリスマスイブ』であることがわかります。

石田の口ずさむ一節の正しい歌詞は以下の通り。

雨は夜更け過ぎに 雪へと変わるだろう

ちなみにこの日の天気は作中に文字で書かれています。

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↑ 須藤ちゃんと買い物をしている時の天気

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↑ 須藤ちゃんと別れユズヒコと出会う直前の天気

もしかしたらこの日の天気は、ユズヒコに対する石田の気持ちを暗示しているのではないでしょうか。

① 雨が降り注ぐ薄着の季節に2人で出会った下校時には、石田はユズヒコに対する「愛」しか感じていなかった。
② 薄着からコートに変わる季節に近づくにつれ、石田の感情は以前と異なる感情へ少しづつ変化していた。雨がみぞれに変わったように。
③ みぞれから雪に変わるタイミングで出会った下校時、この時にユズヒコに対する石田の気持ちは「恋」に近い感情に変わったのかもしれない。例えば自分と同じく道端で歌を口ずさむユズヒコの姿に親近感を感じたとか…。

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お腹をかくところを見られてしまった雨の日の帰り道と、ユズヒコの口ずさむ歌を聴いてしまった雪の日の帰り道において、石田が感じた心情の焦点が変化したこと。それはユズヒコに抱く気持ちの変化が影響していたとしても不自然ではないと感じます。


石田にとっての「愛」

石田がユズヒコに対し「恋」を抱いていたとすると新たな疑問が浮かびます。「恋」の前に現れたゆずに対する石田の「愛」とは何を示すのでしょうか。

これは石田が登場するお話の中で、唯一ユズヒコが登場しない21巻No.31に描かれているのではないかと考えます。

石田が初めて登場した4巻No.17。石田はクラス内で少し浮いた存在として描かれています。

「スドーちゃんみたいなクラスの人気者と
仲良くなれるタイプじゃないしな」

21巻No.31での発言から、石田本人もクラスメイトの冷ややかな視線を認識していたことがうかがえます。4~6巻に登場する石田が口にする語尾に「」が多く表記されていることから、石田は他者に対する不安に近い感情を抱いていたのではないでしょうか。

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しかし巻数を重ねていくうちに、石田がユズヒコや須藤ちゃん、他のクラスメイトと交流するシーンが多く見られるようになります。

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↑ ニキビを根こそぎ取れた感動を表現する石田

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↑ 飽きるハラセンのものまねを披露する石田

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↑ 空想の目玉焼きハンバーグの上にピンポン玉を乗せる石田

クラスメイトに発する石田の発言のトーンも心なしか高くなっているように感じるのは私だけじゃないはず。

教室になじめていなかった石田がクラスメイトと打ち解けるきっかけとなった須藤ちゃんとユズヒコ。もしかしたら石田にとっての「愛」とは、恩を感じる2人への感謝の気持ちなのかもしれません。

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恋の定義

石田はユズヒコに対し「愛」を感じ、雪が降る季節に「恋」に変化したという結論に達した私の妄想。ここから得た気づきは恋の定義は人それぞれであるということ。

様々な漫画を読んでいる際、初恋を感じているであろうキャラクターが「この感情は一体…?」と悩むシーンを度々見かけます。漫画だけに限らず現実においても友情と恋のラインに悩む方は年齢を問わず存在しているはず。そんな問いに悩む理由は恋の定義が千差万別であり、百人百様であるからではないでしょうか。

今回の妄想で辿り着いた石田にとっての「恋」とは、相手に焦点の当たった心情が芽生えること。そして恋は「愛」≒「感謝」の延長線上に存在していた。

自分にとっての「恋の定義」はどんな言葉で表すことができるのだろう。例えばあたしンちに登場する恋心を抱くキャラクターを参考に考えてみると、この問いの答えに近づくことができるかもしれません。

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