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FIRST IMPRESSION 日向坂4期生

歴史の研究をするようになったのは自分が歴史をもたないからだ、そう考えることがある。ただしそこには、本当のことを捉えることの難しい一族について本当のことを語ることへの関心もあった。それをいちばんよく充足してくれたのは、私的な関心を排した確かな関係を事実と結ぶことではなく、自分の願望や目論見を明らかにすることだった。なぜなら、事実は出来事の連なりだけではなく、望むことや求めることにも潜んでいるからだ。
レベッカ・ソルニット『迷うことについて』
おそらく愛するというのは、そういうやり方では駄目なのだ。
舞城王太郎「私はあなたの瞳の林檎」
時間とは心のざわめきにすぎないのです。過去もなければ未来もありはしない。少なくともわたしにはありません。わたしをときに襲うきれぎれの記憶は、一種の強迫観念のようなものです。
W・G・ゼーバルト『移民たち』
ぼくの永遠というのはこういうことなんだ
大島弓子「ロングロングケーキ」

4期生がはじめてメディアに露出した際に受けたおぼろげな印象を、まとめて記録しておきたい。やがてくる(というか今週)「日向坂で会いましょう」を筆頭に、全ては不可逆なので。ティザー動画について言及すると俗流観相学に陥りそうだったためツイートしておらず、記録は「ブルーベリー&ラズベリー」MV公開以降からです。

2022/10/04 「ブルーベリー&ラズベリー」MV公開

■坂道関連のコンテンツでも、ティザー、スタイリング、振り付け、歌詞とうでコンセプトに一貫性を志向することってあるんだ。

■ストンと落とした髪を横並びの一列次々に回転してなびかせていく振り付けがあるからスタイリングは指定されており、同一性を担保。しかし正面を向いた際に個々の決めポーズで差異が演出されており、"似てるような全然似てない僕たち"。

■乃木坂5期生のティザーは41秒から50秒まで動画の時間にひらきがあったが、日向坂4期生のティザーは全動画52秒に厳密に統一。構成も乃木坂と比較するとほぼ同じ。箱推しの需要にこたえ可能な限りフラットに新メンバーを提示、しかし差異は受け手により見出され価値を産出していくという予告(の歌詞)。

■日向坂4期生関連の発信、類似と差異の緊張関係で一貫して受けとれるので(コンセプトの統一)観やすいな。

■類似と差異、それは「日向坂らしさ」(?)との距離感の話でもあり、4期生の発信はこれから都度、日向坂らしい、日向坂らしくないと判断が下され、そのたびにまた対照となる「日向坂らしさ」も変容していく。その様子をコンテンツレベルで先取りしているのはかなりいい。

■卒セレのタイミングでメンバーの漢字を間違えたりする発信元なので、全動画52秒統一の厳密さには異様なものを感じ、昨日までは20%くらいフォーメーションという格差を提示し差異を生む構造も解体されるのではと思っていたが(誰がセンターやフロントか分からないようなMV)そんなことはなかった。

■今の時点で見分けがつかないと言っている人はそういう風に一貫して4期生関連の発信がなされているのだからそりゃそうだし、今同じようにみえてもいずれ(ひなあいなどで)違いが発見され脳汁が出ることまで先取りされているので、オタク手のひらの上感が今までになく強いな。

■4期生の発信が「日向坂らしい」と評される時「日向坂らしさ」なる概念が仮構されるわけだけど、あくまで仮置きくらいに捉えた方がいい。「日向坂らしさ」は流動的。

■重ね重ねだが4期生関連の発信を「日向坂らしい」「坂道らしい」と評するときに解像度が上がったり強固になったりするのは対象となる4期生のイメージばかりでなく、むしろ元々曖昧なものであったはずの比較される「らしさ」の概念の方であるというのには気をつけた方がいい。イメージを拘束しないこと。

■4期生に関する発信を「日向坂らしさ」「坂道らしさ」への接近として安直に受け取らず、類似と差異の緊張関係に宙吊りすること。

2022/10/12〜10/23 4期生ドキュメンタリー・フルバージョン順次公開

■分岐と選択の末の"いまここにも立ってないだろうし"という語りが初めから口に出される世代感。そして清水理央さんは思想でセンターとトップバッターを任されたのね。

■"元気さとフレッシュさがもうずば抜けて他のアイドルよりバッーっていう感じがあって"←こうやって「日向坂らしさ」って醸成されていくんか。「青春の馬」本線。

■webちくまの鳥羽和久氏の連載でこのへんの世代感についてのいい文章があったなーと思い出して検索したら書籍化で非公開になっていたので、買って読むか。

■気が早すぎるけど髙橋キャプテン清水副キャプテンの日向坂幻視しました。

■コロナ禍の足踏みが3年夏のチアで昇華された個人史が、延期につぐ延期で祝祭的な重みを増した東京ドーム公演というストーリーにあからさまに重ねられていて、つまり在野で日向坂っぽい経験した人が一番手なの、オタクケアですか。

■養老天命反転地の聖地巡礼って字面おもろい。宮田さんの動作が反復されるシーン、すごいな

■内容と全然関係ないけどこれ読みたかったの思い出した。

■"見えない努力を続けられるようなそういうアイドル"という理想像は舞台裏の様子を含めて物語的に受け止められることを拒否する久美さんの精神性=キャプテンシーと合致していますね。

■少なくともオタクがアイドルで打順組んだりするノリで公開順が決められているわけではなさそう。こうなってくると、日向坂にまったく関心のない人のドキュメンタリーが観たくなる。

■3人目にして極力BGMとスタッフの声の一切を排した静謐さ志向の演出だ。それはつまり演奏はもちろん親元から一人離れる彼女が母親への手紙を朗読する際の繊細な声の震えを聴き逃さないで、ということ。

■これまで「青春の馬」や「JOYFUL LOVE」といった楽曲が象徴的にとりあげられることによった日向坂ゆえの主題は後景化。続けて観るといい塩梅。

■就活してる!

■すくったヤドカリに水をかける時の手の動作とか、演奏後の(泣いてる?)姉に向けた控えめなサムズアップとか、いいアクションをおさえてるなー。

■石塚さんめちゃめちゃ気になっていたので、ドキュメンタリーとして失敗してるけど一番よかった。興味が人先行なのでコンテンツ自体の出来とか正直どうでもいいです。

■オーディションを落ちては受けてを繰り返してのインタビューの後でボルタリングでてっぺんをとるシーンを撮りたかった思惑が先行しすぎて結果首尾よくいかなかったからめちゃくちゃ蛇足なテロップで補ってる笑

■"太陽を越えた火星のような存在になりたいです"で赤文字の合格。直感しかないシーン。最高です。

■清水さんと同じく「青春の馬」本線で(というか合宿の課題曲に選ばれているのだからドキュメンタリー内で実演されずとも発信元の「これでいく」という意志は最初から明快なわけですが)石塚さんの日向坂についてのキーワードは「がむしゃら」「やさしい」「ハッピーオーラ」か。

■"私がなりたいのは人を応援したり、人を笑顔にすることができる人になりたい、なんかそのまんま、それを具現化したグループなんですよ"まったく屈折のないピュアな概念の具現化を対象に見出してるのはアツい。

■ちょっとしか映ってない平岡さん、言ってる内容もそうだけど話しぶりとか明らかに場を調停できる側の人だ。

■まだ4人目だけどすでに脳汁が出はじめていて、そろそろ手のひらの上で踊らされる準備をしようと思います。

■正源司さんの時は冗談半分だったけど、今回はマジで就活の矯正を経てきた人の言葉遣いなスピーチだ。

■乃木坂5期生の場合は緘口令が敷かれてるのか?というくらいに公式で話題にならない研修期間のエピソードにがっつり言及があって新鮮。合宿期間中の当落の不安が当事者から語られると、俄然落選者の存在が不在ゆえに浮かび上がってくる。

■「月曜日の朝、スカートを切られた」の等身大の解釈アツかった。聴いたことないのでこれを機会に聴く。

■なぜ人は高所にアイドルをのぼらせるのか。乃木中今週は富士登山ですか。

■直前のコロナ療養中の葛藤を山下さんが語っている時のレッスン着/制服のカットバックの演出とかスマートでいいのに、構成としても全く脈絡なく、どうして‥。

■帰結主義的にいえばバンジーのヒット祈願は高所からの落下という強度ゆえにサトミツ氏の動揺を誘い、ひいてはメンバーのレギュラー番組が複数誕生する成果によって正当化され得るのだが、倫理的な側面からみると、宮田さんの過去の発言にあるようにトラウマを生む機会にひらかれている。この両義性。

■宮田さんの発言は出所を覚えてないけど、いまだにバンジーの高所を悪夢としてみるという主旨だった記憶。この発言がなされた時点でチアよりよっぽど倫理的な批判の余地があるヒット祈願だと思ってる。その感情的な懸念と、帰結主義的正当化のバランス。

■"人生のどん底"とか"前が見えない"とかワードだけ拾うと「セルフ Documentary of 日向坂46」の齊藤さんの発言の反復に思い当たったけれど、これは質のよくない言語依存で、言葉尻の一致によってそれぞれの当然の経験の差異を混同すべきでないな、と自省。

■渡邉さんとのミーグリきっかけで応募したというエピソードからほぼ記憶がないけど、映像としての冴えがすごい。

■母親が客席につくところから手紙の朗読終わりまでのところ、一度も平尾さんに寄らず、引きで持続させてカメラの動きもほとんどないの、ベストシーンかもしれない。(2022年10月25日追記。ベストシーンでした。)

■そしてこういう演出をする人は、肉親の声を直接映像に入れるよね、という納得が。

■被写体の真正面にカメラを置くインタビュー、濱口竜介、酒井耕監督の東北記録映画三部作を思い出す。

■電子レンジでwifi弱くなるエピソードめちゃいい。

■もはやただ食べて喋るということを越えてメディア業界で生きる人、生きようとする人の通過儀礼的様相さえ感じてしまうのだが、食リポの考現学とかって存在するのだろうか。

■しかし"りな丼"とかBGMのチョイスとか、かつてないくらいにポップに仕立て上げられたドキュメンタリーで、この意図には重みがある。

■中学2年生が主役のドキュメンタリーだと、正源司さんや平尾さんの時のように、その親元からの自立をシリアスに演出することが困難なのでは、と思う。

■脳が元気になるショット。

■"自分自身、三坂ある中でも、すごくおこがましいですけど日向坂が一番自分らしいって思えるグループなので"、パーソナリティとらしさの解釈一致アツい。

■「アナザースカイ」の画角じゃん。

■"新しい世界へ出発します。"みたいなクリシェも、心地よい編集のリズムとカメラワークでよく活きてる。(ここの背中へのズームかっこいい。)

■わけのわからない(わかるけど)合宿の内容が急に明かされて声だして笑っちゃった。

■書をカメラにみせるシーンがブリッジになってるな。

■藤嶌さん、コミュニケーションに対しての屈託が全くなさそうで、まぶしすぎる。ヤバい。

■母と父からの手紙のマッシュアップだ。

■最終審査のスピーチ、強かった。

■四期生ドキュメンタリーの予告ツイートの動画でも採用されてたし、実際観ている時もすごい‥と思ったカットがサムネになってて、そうだよね!と過去一の共感が。

■寄りで団子をみせて、食べるのは(カメラ前に通行人が行き交う程度に)引きで。

■ドキュメンタリーが全て納品されてから諸々の順番が決定されているのだろうし、8人目にして合宿の内容が少しだけ詳らかになったり、これまで娘→母で反復して書かれた手紙が親→娘と逆向きになったり、アンソロジーの旨味が出てきた。構成の妙。

■きくとしの人物評が正鵠を得ていた。

■インタビューの席上のソワソワして落ち着かない所作から開幕するドキュメンタリー、グッと信頼感が増す。

■発話にシグネチャーを感じさせるアイドル。

■正面インタビューの方がむしろ全体の比率として印象強くなってきたな。

■東京タワーはいくら登ってもいいし、アイドルオタクは『わたしは真悟』を読んだほうがいい。

■"もう将来諦めかけてて、もうなんでもいいやみたいな、投げやりな感じでしたずっと"

■"みんな女の子だから、やっぱ虫とか外とかなんか泥団子とかして遊ばないじゃないですか。それでだんだん自分を閉じ込めていったんだと思います。普通に周りにあわせて、すごいあわせて周りのこと気にしちゃうタイプでした。あの時の言葉大丈夫だったかなとか後から心配になったりとか、してました。"

■YouTubeやTikTokなどの他人と同じことを行為し、それゆえに価値が産出される各種SNSは、同調圧力への迎合と誤解されがちな、抵抗と思う。この切実さを「承認欲求」などといった貧しい言葉でくくるべきでない。

■"ひなちゃんは10年生きるそうです。愛情をかけてじっくり育てれば、20年生きるそうです。"メジャー女性アイドルグループの持続可能期間として的確な数字を含んでそうだし、その数字がペットの最終審査前日購入という打算的行動によって用意された具体性なのは、かなりいい。

■相米の『お引越し』にこんなシーンなかったっけ?

■『はいからさんが通る』を地で行ってる。

■メメント・モリ?

■神戸、モラトリアム、死。モチーフだけだと木村紺の名作『神戸在住』ですが‥。

■喜怒哀楽でほとんど変化がない、ゆえにいいという判断。失敗の美的価値。

■突出してつかみどころのない映像で、12人の大トリとしてもどこか煙にまかれたように終わり、その感触がうれしい。

2022/10/25 日向坂SHIBUYA TSUTAYA来店

■シブツタの4期生パネルの落書き、画像で確認しただけだけど、初出の関係性の矢印の錯綜とキーワードの頻出で、情報量がすごい。アカシックレコードか?

■メンバー間や自発的な(つまりセルフプロデュースとしての)キーワードの発信、月並みだが「名づけ」の権力がよく現れている。一年後どれだけ覚えられているか心許ないけれど、関係性消費のとば口がデビュー直後から十全に設えられていて、とにかくはやい。メタオタク?メタ日向坂?のスピード感。

■(私の狭い観測範囲だと"テレサパン"なんてマジでクリティカルで、"パン"などの変格はあれど他の呼称にブレない強靭さがあり、「名づけ」の権力がよく発揮されている一例と思う。)

■4期生の間でも"エケチェン"が完全にミームとして浸透。

■清水理央さん("りおたむ")に正源司さんと竹内さん("きらりん")が求婚して、宮地さん?が前歯に住もうとしているな。

■渡辺さんが正源司さんのパネルに"私のヨーコ。"とだけ書いてるコメント、めちゃいいな。

■石塚さんの挨拶の字のデカさに、"店長"="くらげちゃん"=平岡さんが"たまちゃんらしくていいね"とコメントしてるの、めちゃいいな。

■平尾×岸→「ぽかちゃんず」
平尾× 藤嶌→「ねむり隊」
平尾× 山下→「はるほのコンビ」
平尾× 正源司→「源平合戦」
平尾さん一人でコンビ名を抱え込みすぎだし、砂丘から砲弾が発射されてる。

■藤嶌さんにドキュメンタリーの自己申告通り、"寝すぎ!"ってツッコミが入ってるの、完璧か?

■正源司さんに猫耳が描き込まれているけど、"きらにゃん"、"きらりにゃん"、"にゃんにゃんきらりん"、"ふわふわにゃんにゃん"、"かわいいにゃん"と過剰に猫扱いされてるのは竹内さんで、"1バンおもしろい神"という評価まで得ている。無敵か?

■富田さん山口さんが、おそらく4期生ほぼ全員のパネルに平等にメッセージを残していて、このホスピタリティに節目節目でビビってる。最高です。