9/14金ゼミ輪読会 ケインズ「雇用、利子および貨幣の一般理論」22章 景気循環に関する覚書

22章は理論だけでなくケインズの考えも多く記述されている章である。
景気循環に対する考えなど何故景気が悪くなる理由を消費が少ない事にからという学説に対する意見など、ケインズは景気循環に対する議論が多い。比較するとシュンペーターは経済成長に着目した話が多い。
またシュンペーターは若い頃(オーストリアにいた頃「経済発展の理論」等)は天才のひらめきで実現される革新を重視している様だが、1940年代、アメリカに移ってからは組織的な革新を重視する様に変化している様に思われる。これは組織が発展していたアメリカに渡った事も影響しているのではないかと想像される。

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アメリカの鉄道債券あたりから広く大衆から資金調達する様になり、金融市場が発展し始めた。鉄道建設に莫大な投資が必要になった事が一因。
大衆投資家ー所有と支配の分離ー景気が加熱すると美人投票の状況になりがち

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資本の限界効率=どれだけ収益を上げられるかという期待←これが下がると不況になるという事
それまでの考え:貨幣自体には価値はない。経済活動の為の交換手段
ケインズの考え:流動性自体に価値がある。
経済の循環は資本の限界効率が低下し、その後に金利が低下する。
資本の限界効率が崩壊してから流動性選好が上がるので、金利が上がる。
景気が悪くなると対策として金利を下げるが、ケインズは金利を下げると景気が良くなるとは言っていない。逆に金利を上げる事で景気の期待を上げる事が出来るかもしれないと言う考え。

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みんなの期待が上がらないと金利を上下させても効果はない。
金利:お金の価格
賃金:労働力の価格
ケインズは重商主義(関税などで障壁を作り有利な環境を整える)の方が古典派(市場の調整機能に任せる;アダム・スミス)よりましであると考えた。

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古典派;小さな政府と市場調整。金利:独立変数、物価:従属変数-ケインズは逆(金利:従属変数、物価:独立変数)と考えた。価格は後から決まる。待っていれば均衡するという考えに対しては懐疑的。

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景気が良すぎるー過剰に加熱すると、過剰な期待に基づいて投資限界以下の案件にも投資されるようになる。その結果人々は幻滅し、景気が冷え込むきっかけになる。
問題は資金規模ではなく、期待と現実のギャップ。
根拠のない期待を作る政策は後で人々が幻滅するので景気は悪化する。
失業が多い状態とは過少投資の状況とも考えられる。

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好景気を冷ますためには金利を上がるのではなく、所得の再分配によって行うべき。
高所得者;消費性向が低い
低所得者;消費性向が高い。お金を渡せば使う
低所得者へ再分配すると景気循環が活発になると言う考え。
福祉政策の一部は低所得者への再分配の一種とも取れる。

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景気対策は①期待の振れ幅を狭める事と②期待の平均値をあげる事に大別される。⇒量+質の需要を喚起する政策

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大恐慌が発生した理由の一つは農産物のストック過剰がある。たとえ過剰になっても農産物の供給量を変えることは難しい。
さらに、不況になることで物価が下がり、さらに在庫の価値も下がるという悪循環になった。

1920年代ごろのアメリカの自動車生産では既にジャストインタイムのような生産が行われていた。この発生した理由は自動車産業の成熟により需要喚起策の一つとしてモデルチェンジが行われるようになったが、その結果開発業務が増大し、そのコスト増加分を抑えようという原価低減の方策の一つとして発生したと言われている。