7/13金ゼミ輪読会 ケインズ「雇用、利子および貨幣の一般理論」 第21章 物価の理論


P63「われわれの分析の目的は間違いのない答えを出す機械的操作方法を提供することではなく、特定の問題を考え抜く為の組織的、系統的な方法を獲得することである。」
古典派への批判。現実の失業に対応する事が目的といっている。

Wikipediaから
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%87%E7%94%A8%E3%83%BB%E5%88%A9%E5%AD%90%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%90%86%E8%AB%96
古典派経済学では、市場は自律的に調整されるため、最終的あるいは長期的には失業は存在しないとされていた。しかし、現実には、1929年の世界恐慌では、未曽有の大量失業が発生し、古典派経済学理論と現実との齟齬が指摘されてきた。ケインズは、本書で「需要によって生産水準が決定され、それが失業を発生させる」ことを明らかにして、経済状況を改善し、失業を解消するために、政府による財政政策及び金融政策などさまざまな面からの政策の必要性を説くだけではなく、その理論的根拠を与えた。

P64「これに対して、機械的操作を行うのではなく、いついかなるときにも自分は何をやっているのか、その言葉は何を意味しているのかを心得ている日常言語においては、留保、修正、調整の余地を、後々その必要が生じたときのために「頭の片隅に」残しておくことができる。」
事前に調整できない式や変数などは現実に合わせるといっている。

P65「(一)貨幣量の変化が有効需要に及ぼす影響のうち最も重要なものは利子率への影響を経由するものである。仮にこれが唯一の影響だとすると、その量的効果は三つの要素から引き出されることになろう。(イ)新規貨幣が人々の自由意志によって吸収されるためには利子率がどの程度下落しなければならないかを教える流動性選考表、(ロ)利子率の所定の下落がどの程度投資を増加させるかを教える〔資本の〕限界効率表、(ハ)投資の所定の増加が有効需要を全体としてどれくらい増加させるかを教える投資乗数。」
金融緩和により景気が良くなるメカニズム。
新規貨幣(↑)⇒利率(↓)⇒投資(↑)⇒有効需要(↑)⇒雇用(↑)⇒供給(↑)

P69「完全雇用と言う最終的な臨界点においては、貨幣表示の有効需要が増加すれば貨幣賃金の上昇は避けられず、その上昇は賃金財価格の上昇に完全に比例する。しかしそれ以外にも、以上のように、賃金罪価格の上昇に完全に比例するとは限らないが、有効需要の増加が貨幣賃金を上昇させる傾向を持つ一連の半臨界点的な点が、もっと早い段階で存在する。」
完全雇用になるとインフレになるといっているわけではないが、インフレが起こるような局面であるとは言っている。リーマンショック前のアメリカのイメージが近いかも。また、その前にちょっとインフレ気味(半インフレ)になるとも言っている。

P71「そして技術と装備の状態を所与とすれば、物価水準は一部は費用単位にまた一部は産出量の規模に依存し、産出量が増加すると、物価水準は短期の収穫低減の原理に従って費用単位の増加率よりは効率で上昇するだろう。
産出量があるところまで増加し、この水準で生産諸要素の一代表単位から生み出される限界収穫が最小値-この産出量を生産するだけの生産諸要素は利用可能である-になった時、われわれは完全雇用に到達することになる。」

ここで言われる「完全雇用」は失業がない状態と言う意味ではなく、当該企業が雇用できる限界まで雇用しきったと言う意味。また、物価水準の上昇率については生産量が増加するに連れて良質な原料、労働力が尽きて生産性が落ち、次第に産出量拡大の限界に近づいていくと言う意味。ただし、日本の場合は人口が減少していることも影響しているのでこのままでは当てはまらないかもしれない。