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ムツゴロウさんの本を読んで欲しい

1971年、ムツゴロウさんが北海道に移り、最初に住み着いたのは、陸からそう遠くない小さな無人島です。
この頃のエッセイは本当に楽しい。自然があふれ、自然への愛があふれています。本当は大変なことも多いだろうに、それを笑いとばす語り口。
この島の一年間と、その後に続く動物王国の初期を語っているエッセイは、おもしろくて、動物と自然が好きな人に特におすすめです。

わたしはテレビに出ているムツゴロウさんを、あまり見ていません。
凄すぎるサービス精神が、なんだか痛々しくて、見てられなかったという感じです。

作家「畑正憲」でムツゴロウさんを知ったわたしにとって、「よーしよしよし」のおじさんには違和感がありました。
もちろん、本の中でもバカなことやってるし、動物たちへの接し方はテレビと同じです。
だけど本を読んでいると、博識で、深く物事を考えている奥の深い人間であることが感じとれます。
テレビの画面で、動物に痛めつけられてもニコニコしている人、という印象が強いのは残念だなと思います。

特におすすめするのは「どんべえ物語」
北海道に住むならヒグマを飼いたいと、かねてからの願いを叶えるべく奔走するムツゴロウさん。
無人島に、母を恋しがって荒れるヒグマを連れて渡ります。赤ちゃんといえども凄い破壊力。
しつけながら、人間に負けることを教え込みながら、ごめんと心の中で謝り続けるムツゴロウさん。
一人と一匹。ふたつの魂と魂の、闘いと成長の物語です。

以前、友だちとの会話の中にヒグマが出てきたことがあって、わたしはこの本を紹介したんです。
これを読んでから、続編である「さよならどんべえ」を読んだら、めっちゃ泣くと話しました。

ちょうど「泣ける本」を探していた友だちは、図書館で「さよならどんべえ」だけを借りて読んだらしいです。
そして「ちょっと苦しすぎて、わたしには良くなかった」と感想をよこしてきました。

あたりまえじゃん!

「どんべえ物語」を読んでいるわたしは、ムツゴロウさんと一緒に、どんべえと向き合い、もじどおり命をかけて必死に子育てをしています。そして、どんべえに愛情を感じています。あふれています。
この感情があるからこそ「さよならどんべえ」を読むと涙があふれるけど、暖かいものも残るのです。

ムツゴロウさんは今頃天国で、どんべえたちと再会を果たしていることでしょう。
「よーしよしよし」なんて言う必要はなくて、ただ黙って寄り添いあえているんだろうなと思います。

ご冥福をお祈りいたします。

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