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ジェインがんばれと応援しながらジェイン・エアを読んだ

19世紀イギリスにもおしんがいた

ブロンテ三姉妹の長女シャーロットが書いた「ジェイン・エア」は、国語の便覧に載っているぐらいには有名である。
それでこの度読んでみたが、大変面白かった。

主人公のジェインはあんまり美人じゃない孤児である。
そんなジェインに畳み掛けるように襲いかかるピンチまたピンチ。
彼女はそれを健気に乗り越え、たくましく教養溢れる感じに成長し、最後には幸せを掴み取る。
まるでNHKの連続テレビ小説のようであった。

主人公があんまり美人じゃないというのは大切なところである。
以下Wikipediaから引用する。

小説のヒロインはたいてい美人に描かれるが、この作品のヒロイン(ジェーン・エア)は美人ではない。しかも孤児であることに対する不満、男女平等意識という反骨精神を描き、また女性から告白するということも、当時の社会常識から大きく逸脱した行為である。財産や身分にとらわれず、自由恋愛して結婚するという点は、ヴィクトリア朝の文学において画期的であった。

Wikipedia「ジェーン・エア」URL:https://w.wiki/3MZ7

男どもがやばい

そして出てくる男どもがマジでろくでもない。
19世紀はこれが当たり前だったのだろうが、あまりにもひどい。
ハラスメント男ばかりである。
こいつらはなぜか常時ジェインに対して詰問口調で、さらには命令口調である。

その上この男どもは明らかにジェインが好きなのに、自分からは告白せず、ジェインも自分を好いてくれるのか確かめるべくあの手この手の陰湿な技でねちっこくジェインを試そうとする。

前半に出てくる男は重婚詐欺野郎で、それを隠してジェインに求婚したあげく、すぐyesと言わないと僕はどうなるかわからないぞと言いながら腕まくりをしだす。
DV男になる予感しかせんのよ。

後半の男はサイコパスのモラハラ男である。
こちらもジェインに求婚した挙げ句、僕は神の使徒だから、僕との結婚を拒否するということは神の意思に背くことになるんですよ、などとのたまう。
ここまででも強烈なのだが、挙句の果てに「僕と結婚してくれたら君をずっと監視して、教育してあげる。立派な神のしもべにしてあげよう」とゾッとするようなことを言い出す。
ホラーである。

やべえ男にジェインは立ち向かう

そんなやべえ男どもを相手にしてジェインは信念を貫きつつも柔軟に相手をかわしていく。
真正面から相手にぶち当たってしまうと、男のDV・モラハラパワーにやられて言いなりにされてしまう可能性がある。
言うことを聞きそうな、それでいて全く聞いていないという高度なネゴシエーションが求められる。

彼女は若い上に男性経験なんて皆無なのだが、かなり辛抱強く、細心の注意を払ってそれをやり遂げる。
立派だった。
僕は恐ろしい男を前にして一歩も引かない彼女を心の底から応援した。
ジェイン頑張れ、クソ男に負けるなと心のなかで呼びかけながら読んだ。

読みながら己を恥じる

しかしジェインに襲いかかるクソ男どもを観察しながら、私は我が身を恥じた。
これまでの私もDVクソ野郎・モラハラクソ野郎だったことがなかったか。
当然女性に手を上げたことはない。
が、それでも相手を怖がらせことがあったように思うのだ。
あるいは強いて己の言う通りにしようとしたことはなかっただろうか。

女性からしたら男は圧倒的に強いのである。
男の自分に当てはめると、つねにボブ・サップと対峙しているようなものだ。
仮に目の前でボブ・サップが不機嫌そうに身じろぎしたらどうか。
この世の終わりのような恐怖に苛まれるのではないか。

残りの人生、あんまり女性と触れ合う機会もなさそうだが、これからはつねににこやかであろう。
決して何かを強いまい。
ゴールデンレトリバーみたいに愛想よく生きるのだ。
女性扱い力の低い私にとって、ジェイン・エアは啓蒙の書でもあった。

まとめ

この手の小説はなんというか、登場人物の性格に共感できるかどうかで楽しめたり、楽しめなかったりしてしまうと思う。
相性があるのは確かだ。

しかし自分はこの本を読んで本当に良かった。
有名な本なのでおすすめするのもアレだが、まだ読んだことがないという方がいらしたらぜひ読んでみてほしい。

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