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「自分たちはどうあるべきか」 僕らのいい服、いい道具 10YC × 左ききの道具店 × sheep POPUP Store in Nagoya(3/3)

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中途半端は消えていく。自分たちがどうあるべきか。

山川:最後、業界のことをお聞きします。アパレル業界、オンライン業界、それぞれのフィールドについての今を聞きたいのですが。

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下田:中途半端なところは、なくなっていくんですよね。SPAは、自分たちでデザイナーを抱えて、中国やASEANの自社工場に発注する。そうすると中間コストがかからないから安く作れるんですよね。店舗も自分たちでもって、販売も自らするというモデルを突き詰めたのがユニクロです。もともと5−6年くらい前は「なんちゃってSPA」がすごく増えました。自社でやった方がいい、と皆がユニクロの真似をし始めた。僕は後から思うに、良くない方向に行っちゃったという後悔をしています。そもそも、数量で勝てない限りSPAで一位にはなれない。安易にSPAに走ったブランドは今、軒並み調子が悪いのです。差別化が難しくなり「なんちゃってSPA」が淘汰されつつある。選択肢として、安くて良いものはユニクロ、こだわりのラグジュアリーは、自分が価値やビジョンを個人的に応援するブランドで、という消費になっています。中途半端なブランドは、誰にも投資されないままどんどん淘汰されていく。始めるなら、今はめちゃくちゃ面白いんです。消費が下がっている中で伸びているのは、今僕らがやっているような「誰かのために作っているブランド」なんです。ユニクロさんにできないことを、僕らはしっかりやっていきたい。

山川:僕、服を買うのが好きなんですよ。学生のときに15万円のジャケットを買ったことがある。あのときの「何者かになった感じ」は今でも忘れられません。自分の憧れのブランドにやっと袖を通したときの変身した気分って独特なもの。それを提供できるところが、普通の業界とは違うのかなと感じます。

下田:それが山川さんの「いい」という判断軸なんでしょうね。ファッションで言うと、会社がどう良いことをやっているかも大事なんだけれど、買う自分が納得できるかがすごく大事。そういう意味で、納得してもらえるブランドがこれから増えていくんだろうな、と思います。たとえば台湾っていう国は個人商店が繁栄していて、ああいった商売の仕方はいいですよね。自分たちが生活に必要な分だけ稼いで、心地よいバランスなんだろうな、と。

山川:中途半端な真ん中が淘汰されて抜けていく感覚は僕も感じています。陶器業界もそうです。例えばキャンドルと一緒に使うガラスドームを作れるところを探していたんだけれど、大手メーカーさんだとロットが多すぎる。作家さんの物だと納期が半年以上もかかったりするんです。真ん中がいない。2年くらい探してうようやく今年見つかったばかりです。加藤さんはどう感じますか?

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加藤:うちの店は、セレクトショップなんです。セレクトである、という意味は「左利き」の道具に特化しているということと、店長の趣味嗜好が入っている、というところ。そういう点では広い意味で雑貨店なんですが、この業態は今すごく廃れていっていて。しかも僕らの市場はクリアオーシャンなので、それだけで食べていくのは難しい。でも利益を確保するためにオリジナルを作ろうとすれば、左きき用のはさみ一つ作るにしても金型からつくらないといけない。「最低ロット5000個とか」って言われて結構ハードなんです。そうなってくるとハサミに包丁に、と一気に横断的にやるのは難しいので、小さく進めています。

さっきどう差別化するっていう話が出ましたが、僕も今は差別化は無理だなと思っています。いかに固有化していくか、しかないと思う。その「固」というのは、個社なのか個人なのかわからないけれど、どちらにしても「どうありたいか」というところで、さっきの「応援したい」という気持ちも含めて「自分たちってなんだろう」というのをみんなが見つめ直しているのかなと思います。「なんでここで働いているの?」も含めてみんなは考え始めているんだな、といろんな業界を見て感じてます。


言葉とデザインの考え方

山川:加藤さんがすごいのは、クリエイティブにおいても小売にしても人格をつくるのがうまいんです。左ききの道具店って「めっちゃいい人そう」なんですよ。加藤さんが書いた他のコピーを読んでいても、基本「いい人そう」なんです。企業やものに人格を与える仕事だな、と。それがさっき言っていた「固有化」につながっているし、クリエイティブの力だと思います。

加藤:僕の場合、会社のプロモーションをするにしても意思が必要なんだけれど、そこに僕の意思はない。山川さんみたいに世の中に対する怒りなんかも羨ましいと思う。そんなふうに思っている人を支えたいと思いますね。

山川:会社のコピーを書くときは、会社を人として見るんですか?

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加藤:僕がコピーを書くときに心がけているのは、課題に対する解決策を出すということです。キャッチコピーを考える時も、「答えを出す」っていう意識が強いです。でもいろんな会社のブランディングをしていて感じるのは、言葉って「階段」だなと思っていて。階段づくりの役割なんだな、と。というもの、僕は経営者と話すのだけれど、外の人に言葉は作れないんです。最終的には無理だなと思う。聞いた話を「こうですか?」ってまとめて表現することは簡単です。でもそれだけだと「確かに俺はそう言った。でもちょっと違う」となる。なので、階段だなと。その人が言ったことを固めてひとつの段にしてあげる。その階段を昇ってもらって「ああ、自分が見たかったのはこの景色じゃない」となれば、次の階段を作るみたいな。最近は「解決策としては僕はこれがいいと思いますが、どうですか」という提案ではなく、1個ずつ3−5回の吟味を重ねて、納得を重ねて、最終的にはその人の言葉になるというプロセスを踏むようにしています。そこに導くための階段の言葉がいるんですよ。言葉がないと登れない。山川さんのサイトも作りましたけど、かならず1回は「これ違う」というのがあった。いかに階段を作るか?というのを心がけています。

加藤:山川さんはどんな考えでデザインをしていますか?

山川:僕も、階段です。

会場:(笑)

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山川:僕、デザインには基本自信がないんです。始めたのが遅かったので、そもそもコンプレックスがすごくあった。僕のデザインで良くしてやるぞ、っていう感覚はほぼないんです。話しながら問題解決をする感じ。お医者さんと患者さんの関係みたいな感じかな。お医者さんが大事なのは、まずどんな病気かを診断することですよね。風邪って言われても、本当はそうじゃないかもしれない。デザインも同じです。クライアントがこうしたいって言うけれど、そうじゃないやり方もあったりする。事業の内容からお金のことまで、ちゃんと話を聞かないとわからない。その対話の積み重ねが、結局ブランディングになっていく。ご本人が気づいていないような会社の課題も見つけて、その課題が的確であれば解決もすごく簡単になる。課題を見つけるところにすごく時間をかけています。クリエイティブのところだとそんなに自信もないし。さきほど「固有化」という話が出ましたが、僕は他にない答えを出さないといけないと思っているんです。たとえば、コーヒーが得意なカフェのデザインを依頼された時に、ロゴマークにマグカップなんかを描きがちなんです。でも、そうなったら差別化できない。そのコーヒー屋は、本当のところで何が得意なんだろう?っていうポイントを見つけて、アウトプットすることが価値だと思っています。普通のコーヒー屋さんをデザインすることは難しいけど、弥勒菩薩が大好きなコーヒー屋だったからそれをモチーフにしたりとか。


<ここから質疑応答です>

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Q:価格と納得感のバランスはどうとっていますか?いいものを作って、それに対して払ってもらう必要がありますが、どうやってお客様との関係性を育てるんでしょうか?

山川:僕の場合は価格がめちゃくちゃ重要だと思っているんです。このキャンドルでいうと、上代がめちゃくちゃ安いんです。でも、もともとビジネスでやってこうと思っていなかったし、「食事中に使えるキャンドル」というのがコンセプトなので、少なくとも週に2回くらいは使ってほしい。そうすると、月に1個は買い換えるというサイクルになるんです。その感覚でつけた値段が3000円くらいだった。安いと思うかもしれないし、キャンドルを使わない人にとっては高く感じられると思うんだけれど、その人に買ってもらおうとは思っていないんです。僕の場合は、接客とワークショップでめちゃくちゃ想いや商品の価値について話すので、そこで知ってもらうという作業をしている。すぐには買わなくても、1年後とかにじわじわ理解してくれて買ってもらえることもあります。

下田:僕もそんな感じです。関係性を育てるっていうのすら、失礼かもしれない。自分自身が気づいたときに人は変わるので、知ってもらうことしか僕らはできないんです。で、ある時「あのひとが言ってたことってこういうことか」となって戻って来てくれたりする。たとえば大学生はお金がないから買えないかもしれないけど、いつの日か働き始めた時に買ってくれればいい。その時々で買えるものって変わってくるので。むりやり買わせても仕方がないんです。

加藤:僕らの商売は価格が決まっているんです。納得するときは、納得の仕方がいくつかあると思っていて。買う人が、左脳的に「これはいいよね」と思って買うこともあるけれど、感情の部分で納得することもある。「北欧暮らしの道具店」と「ほぼ日」はめちゃくちゃ意識しているんですが、北欧だと、実際に買ってくれるのは1000PVあるうちの1なんだそうです。1000回行って1回買う。それって、いいですよね。1000回分訪れて、なにか情報を貯めたわけですよ。そうすると人って何か「借り」を感じるんですよ。どこかで返したいと。ある種、エンターテインメントなんでしょうね。僕自身も、10YCの記事を買う前から読んでいました。いいなあって思っていて、何か返したいと思ってた。あとは買うタイミングの問題です。返す=買う、という構造がある気はしています。僕らはTwitterでたわいもない話をしていて、毎日挨拶してくれる人に、何かあった時にお願いする、みたいな感覚なんです。毎日来てくれる営業マンだから、ちょっと買ってやるか……みたいな。それがどんな種類の納得なのかはうまく言えないけれど、人と接する時には受け取っていて、それを買うことで関係性を対等にしているんだと思うんです。

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Q:(10YCの)ウェブを見るとメンズのイメージが強いんですけど、買ってもらいたい人は基本的には男性なんでしょうか?

下田:プロダクトでいうと、レディースはレディースとして作る予定はありません。女性の気持ちはわかりません。わからないのに作ったら中途半端になってしまう。でもいつか10YCに女性が来て、こういうものが欲しいと言われたら、もしかしたら作るかもしれません。男性の写真が多いので、僕らがインスタグラムなどに女性の画像も投稿しないといけないなと思っています。分ける必要はないのかなって思っているから。

Q:みなさん課題解決のためにブランドを立ち上げていると思いますが、目指すところをスタッフ皆で同じ気持ちでやっていくためにどんなことをされていますか?

加藤:うちは常勤スタッフが妻なので、めちゃめちゃ情報共有は早いです。いつも話をしているのでそんなに困ったこともありません。力を入れていくとしたら、自分が家事をやって彼女がもっと仕事をできるようにする必要はあるかなと思います。スタッフ、今後は増やそうと思っていますが。

下田:うちは元々3人で、あとは正社員の子なんですが、ビジョンは共有しています。あと、求めすぎないことは大事かな。ビジョンを共有しすぎて、彼にやらせなくていいことまでやらせてしまうのはダメだなと思う。話し合うことが大事です。その1人も、うちの会社に共感して来てくれたので、もはやこちらから改めて言うことはない。教育っていうのはあまりよくないと思っているんです。巷では「バイブス採用」って言われているけれど、バイブスが合うかどうか。能力が高いとかではなく、そもそも会社の考え方と合っているかどうか。そのすれ違いは、絶対ない方がいいですよね。スキルは教育できると思っているけれど、採用してしまった後にミッションの共有なんて難しいですから。

山川:うちの場合は途中から入ってくれて、1人は気の知れた人だけれど、2人は単純に年齢が10歳も下の人だけれどうちの思想に共鳴して入ってくれました。最初は何も問題がなかった。ただ、ズレは絶対に出てくるなって思いました。絶対に嘘つかない、とかそういう根っこのレベルなんですけれどね。来週から採用をするのですが、その判断に悩んでいますね。教育って1番難しい。フェーズによってニーズも変わってくるので、それをきちんと表現しないと仲間は離れていってしまうとも思っています。

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Q:自分はデザインを学んでいる学生なのですが、将来のことが想像できないんです。会社をやっている方は今後のビジョンをどれくらい明確にもっているんでしょうか?

加藤:僕はコピーライターをやってきて、この仕事は若い時だけだと思っていました。業界的にも50歳とか60歳で現役やっている人は少ない。市場に左右されやすい業界で、広告は最初に切られます。どうやって代替不可能な場所に行こうかなっていうのを考えていました。でも途中で無理だと思った。すべては代替が可能なんですよね。不可能ってことはないことを知ったので、自分で作ることにしました。外の人から仕事を受け続けて出すっていう仕事に対して、僕には才能がないと感じました。子ども2人を食わせていくためにどうしようと思った時に、自分たちで会社を起こそうを思ったんです。自分は何十億と稼いでいる会社をたくさん見てて、そこで学び培ったやり方で、お金をかけずにやったらできると思いました。今実践している最中です。答えはもう少し後でわかるかな。対象を他の企業から、自分の会社の妻にしてみたという。実験の最中です。

下田:まず、うまくいくことはないと思っています。思い描いたようにはいかない、と。そして、決めすぎると逃げられないから、そこまで未来に対してのマイルストーンを置きすぎないようにしています。賞とか、誰かを幸せにしたいとか……

山川:でも、20歳くらいに決めた目標をずっと守れている人っていないんじゃないかな、と思う。オリンピック選手とかぐらいかな。僕も目標とか立てたことなくて、とにかく来たボールを打ち返してきた。ただ、チャンスだけはぜったいに逃さないようにしてきました。ただ、キャンドルもそうだけど、1個じゃだめだなと思ってます。どれかがつぶれても、2個あればなんとかなる。これだけ世の中が変わってきているので、目標も変わるべきです。だから、目標の逆算とかじゃなくて、変化しやすいようにしておくことが大事だと思います。常に出来事を起こした方がいいし、柔軟に対応できた方がいいし、コントロールできる事業とそうじゃないものをいっしょにやったらいい。

Q:明確な原動力があれば、明確な目標がなくても進んでいけますか?

山川:僕は、来週とか来月の目標しかないです。今日の納期の積み重ねで、むしろそれがモチベーションになっている。僕はキャンドルを買ってもらえたら嬉しいし、お店をやっていると、好きなものが一気に届く。その開けた瞬間がめちゃくちゃ嬉しい。そんな個人的で小さな喜びが、日々に点在しています。

加藤:「やりたい」というよりも、「これが自分にできることだからやっている」という感じがあります。ざっくりしているけれど。

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トークイベントはここでおしまいです。長文なのにお読みいただきありがとうございました。2020年も、10YC、左ききの道具店、Sheepをどうぞよろしくお願いいたします!

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Text:Shingo Kato(LANCH)
Photo:Keita Inaba
編集協力:Megumi Danzuka


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次回もがんばります!
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LANCH Inc. 左ききの道具店 代表 / コピーライター。1982年。利き手はクロスドミナンス。名古屋 → 各務原に移住しました。言葉と企画、考えることぜんぶの役。朝型生活、つづけています。
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