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砂山にトンネル、からnote始めます

 noteに登録してからずいぶんと長いあいだ「最初に何を投稿しようか?」を行ったり来たりしていた。過去の旅のことを書こうか、昭和の池袋の思い出を書こうか、いや完全創作の短編も発表したいなと、書き出しては途中で止まっている小間切ればかりが溜まっていった。ああでもないこうでもないと自己否定が続き、寄り道、遠回りして、引きこもってふて寝して、明日にしようと一杯飲んで、干からびた自尊心を蹴り石にして次の世界に開く扉の前を幾度も通り過ぎた。そんな自分が情けなくてしばらく凹んでいたが、くたびれて力が抜けたら、ふとできそうな気がしてきた。
 2023年の1がぞろぞろ並ぶこの日に、ともかく最初の文を上げてみよう。そこから世界が動き出すよう小さくお祈りしよう。
 小学校に上がったばかりの娘を連れて日本ではないどこかに住もうと長い旅に出たころ、よく新しいことわざをつくる遊びをした。その時に生まれた傑作のひとつに「砂山にトンネル」というフレーズがある。タイの島のビーチの波打ち際で砂遊びをした時にできたものだ。
 このビーチの砂は貝殻が粉状になっているので海水を含むと溶けたようになり、山を作ってトンネルを掘っても波が来るともろもろと崩れてしまう。それでもトンネルを作り続けてしまうのが面白くて娘と掘り続けた。
 強固な山を積み上げることは人生の心がけとしてとても大事だ。けれどもそこにトンネルを掘りたいという衝動を抑えないこともまた尊い。どこに行くかも決めず放浪する暮らしを選択した、あの頃のやけっぱちで軽薄で刹那的な人生観を表現しているなぁと思う。自由の代償を埋め合わせるようだったその後のお話は、これからおいおい書いていくのでぜひお楽しみに! 
 

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