Art Outbound Digest / 2023 June 20, 2023 / Pickup Artist "Forensic Architecture"
フォレンジック・アーキテクチャーの概要
Forensic Architecture
設立:2010年
個展 22(主要なもののみ)
グループ展 16(主要なもののみ)
美術館での展示 46回
受賞 35回
メジャーコレクション 3件
展示歴
今回のピックアップアーティストは異色中の異色の人たちです。グループではあるのですが、アーティストコレクティブではないです。
イギリスのゴールドスミス・カレッジ(YBAの主要メンバーを輩出するなどアート系の大学としても名門中の名門ですが、人社系の総合大学で、ロンドン大学という大学連合の一角を占めています)の中にある調査機関「フォレンジック・アーキテクチャー」です。
まずは自己紹介からチェックしましょうか。
例えば私の母校の立教大学には「立教大学アメリカ研究所」という組織があります。
同志社にも同じ名前の組織がありますね。
フォレンジック・アーキテクチャーも同じようなものだと思います。
研究所といってもこの手のものは学内のどこか一室に事務局があって、多少の予算がついていて本を買ったりイベントを企画運営したり、研究紀要を出したりということをする、どちらかと言えばチームですね。日本の国立大学の附置研究所みたいな、立派な建物と教員とポスドクや院生が備わっているようなものではないと思っておきましょう。
どちらかというと「研究会」に近いと思います。実際、主宰者のエヤル・ワイツマンはフォレンジック・アーキテクチャーを「リサーチプロジェクト」と呼んでいます。
それが何で現代アート専門のサブスク記事に出てくるのか?
答えはもうおわかりでしょう。大学に設置された調査機関にしちゃあ、展示会歴が強すぎる。美術館での展示が46回。46回!!! 結成されたのが2010年だから13年間で46回。1年あたり3回以上の超ペースです。
なんだそれ!! 連邦のモビルスーツじゃあるまいし。化け物過ぎるだろ。
というところを今回は見ていきたいと思います。
アートとサイエンスの融合がポイント
で、最初にネタバラシをすると、フォレンジック・アーキテクチャーの強さの淵源は、サイエンスとアートの融合のやたらめったらな完成度にあります。
サイエンスとアートの融合というのは現在の国際公募の最も太い流れがあるところでしてね。何でも良いから絵や写真やスカルプチャを送って来いやというのは、公募を勝ち上がったとしてもそんなビッグなリターンは無いのですが、この「サイエンスとアート」系列だと予算規模が一つ二つ下手すると三つ違うので、当たるとデカいです。
(もちろんライバルも強力ですが)
でも、どうやってそんなところに打って出れば良いのか?
その最高のお手本がフォレンジック・アーキテクチャーだと私は考えてるんです。
そりゃ1ダース以上の研究者が加わってるんだからサイエンス凄いだろうと思うかもしれませんが、だったらなんでそれがアートとしても凄いのかという説明にはなりません。
研究者集団のアウトプットが現代アートになる仕組みがどこかにある。
その答えは?
最後まで読んだらわかります。きっとね。
では参りましょうか。
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