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因数分解について

話をしたり文章を読んだりしていると、その人が基礎的な数学のトレーニングを受けたことがある(あるいは、自分でしっかり基礎を勉強したことがある)かないか、否応なくわかってしまうことがあります。その判断基準になる(なってしまう)ことは、いくつもありますが、例えば、以下のことは典型的です。

  • 既約元と素元の区別

  • 単数の概念

例えば、通常の素数の定義

定義A. 自然数$${p>1}$$が素数であるとは、$${p}$$が自分自身または$${1}$$より他に(正の)約数をもたないことである。

は、素元の定義ではなく、既約元の定義です。ですから、この定義で定義されるものは「素数」と呼ばれるよりは「既約数」とでも呼ばれる方が、本来は理にかなっています。

他方、(例えば実数上の)多項式の場合「定数倍を除いて、自分自身または$${1}$$より他に約数をもたない」多項式は「既約多項式」と(正しく)呼ばれ、通常は「素多項式」とは呼ばれないようです。このあたりの用語の使い分けは、要するにあまり整理されていないというわけですが、通例にしたがって運用されているわけです。

素数を「素元」として定義するなら、

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このマガジンのタイトルにある「数学する精神」は2007年に私が書いた中公新書のタイトルです。その由来は、マガジン内の記事「このマガジンの名…

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