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衆議院を連邦議会にしたったー

 突然ですが、日本の下院、つまり衆議院は小選挙区比例代表並立制が取られています。この制度では、小選挙区の議席数と比例代表の議席数は完全に分離しています。これを執筆している2022年6月29日現在では小選挙区が289議席、比例区が176議席です。

 ところで、世界には衆議院選挙で採用される小選挙区比例代表”並立制”とは別に、小選挙区比例代表”併用制”と言う制度が存在します。この制度を採用している代表的な議会はと言うと、タイトルにもある連邦議会、ドイツ連邦議会です。小選挙区比例代表併用制とはどのような制度なのでしょうか。

小選挙区比例代表併用制とは?

 この制度では、法定定数全部の割り振りを比例代表で決定します。ドイツ連邦議会の場合は法定定数が598ですから、598議席を比例代表で決定するという事ですね。では小選挙区制度はどのように扱われているのでしょうか。

 小選挙区には法定定数の半分である299議席が配分され、日本と同じように選挙区内で得票数が1位の候補が当選します。この時、小選挙区で当選した人たちは必ず連邦議会に議席を獲得します。ここは日本と同じですね。

 ここからが並立制と併用制の違いです。2段落前で598議席を比例代表で決定すると述べました。この時、各党には比例代表で獲得した議席数から小選挙区で獲得した議席数がマイナスされ、その差が比例代表に回ってくるのです。例えばA党が小選挙区で50議席、比例代表で70議席を獲得したとします。この場合は70-50=20議席が比例名簿の議員に回ってくるのです。

 ここで今読んでいる人はこのような疑問を持ったのではないでしょうか。「ちょっとまって!もし小選挙区の獲得議席が比例代表で獲得した議席数を上回ったらどうなるの?」と。ここで大事なのが「小選挙区で当選した人たちは必ず議席を得る」という事です。ですから、比例代表で獲得した議席数を超えて議会に議席を持ちます。この時、比例獲得議席数を超えて獲得した議席の事を超過議席と言い、実際にドイツ連邦議会では138議席が超過議席です。これは無所属候補や比例区で議席を獲得できなかった政党によるものが多いようです。

実際に議席を確認してみる

 では、もし上記の制度で2021年衆議院議員総選挙が行われた場合、今現在の衆議院はどのような構成になっていたでしょうか。以下の画像は私が実際に試してみた結果です。(選挙区が289議席、法定議席が465議席のままで計算した点はあらかじめご了承ください)

ぱっと見た感想

・自民党が馬鹿みたいに割を食らう
・立憲民主党は思ったほど伸びない
・公明党、維新の会、共産党、国民民主党と言った中規模政党が躍進する
・選挙区に地盤のない小規模な政党が壊滅する

と言ったところでしょうか。自民党が72議席減らすのは、現行制度の場合比例代表の議席は選挙区議席に加算される形だったからで、実際、前回の2021年衆院選で自民党が獲得した比例議席は72議席です。立憲民主党の議席数が微増にとどまったのは、現在の比例制度が11ブロックに分かれており、比較的大政党に有利と言う側面からだろうかと予想しています。(実際にブロックを分けて計算してはいないので実際は分かりません)

 中規模政党が躍進したのとは裏腹に議席を失ったれいわ新選組は、なぜ議席を失ったのでしょうか。それは、ワイマール憲法時代の反省によってできた、ある条項による結果なのです。

 詳細は端折りますが、当時のドイツは完全比例代表制で、少数政党が乱立し政治が不安定化、ナチスドイツの権力掌握を許す一因となりました。その反省から現在のドイツには足切り条項があり、
・比例票獲得率が5%以上である事
・小選挙区で3議席以上獲得する事
のどちらかを満たさないと比例代表で議席を獲得できないのです。それによって比例得票率が3.8%のれいわ新選組は議席が獲得できないのです。逆に、社民党は沖縄2区で当選しているので超過議席として議席を保持しています。

最後に

 かなり設定が適当ではありましたが、少しは雰囲気を味わってはもらえたでしょうか。どちらの制度が優れているかはここでは考えませんが、このような制度も存在し、その結果はこのような感じになるという事を頭の隅に置いて貰えたら私としてもうれしい限りです。ここまでのご精読ありがとうございました。それにしても…これでも自公でギリギリ過半数を超えているんですよね…


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