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「本当のVR元年が始まる。」日米双方から見たVRライブ普及の鍵は、コミュニティ!?

「加藤さんに会う前から、投資はほぼ決めていたよ」

VR業界の動向を追い続け、オールインワン型のVR機器『Oculus Quest』が日米で販売数を伸ばしていることに着目していた亀井智英さんは、VARKへの出資について、こう語ります。

VTuberによるVRライブサービスを提供する「VARK」。『Oculus Quest』に対応した唯一のVRライブプラットフォームとして、今後はそのサービス拡大に向けて出演者をアニメキャラクターやリアルアーティストへと広げていきます。「VRをもっと多くの人に体験してもらいたい」代表・加藤卓也が各界のトップランナーとの対談を通じて、コンテンツ制作や普及活動について模索していく本企画。

第一回のゲストはTOKYO OTAKU MODEの創業者 亀井智英さんです。現在はアメリカと日本を行き来する生活を送られており、両国のオタク文化やVR市場についての知見をお持ちの亀井さんに、「VRライブ」をもっと広げるためのヒントを、お伺いしました。

<Profile>
亀井智英(かめい・ともひで)
Tokyo Otaku Mode Inc. 創業者。Facebookというプラットフォームにいち早く着目し日本のオタク文化を海外に発信し続けている。発起人として2018年に「第一回 VTuberサミット(https://blog.otakumode.com/2018/07/20/v-tuber-summit-1/)」を開催。VR業界内外に衝撃を与えた。
VRの未来を語る『VR is Now』
VRライブサービス「VARK」を運営する株式会社ActEvolve代表の加藤卓也が、様々な業界関係者と対談し、VRとの出会いや最新状況、未来について話す連載企画です。

VRの進化を感じた、VARKの没入感

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ー2018年に「第一回 VTuberサミット」を開催し、VTuber業界との交流もある亀井さんが、なぜ今回VARKに出資しようと決めたのでしょうか?

加藤:あのサミットは、業界内では伝説です。今でこそ「VR業界一丸となって盛り上げよう」という雰囲気ですけど、当時は会社同士のライバル感が強かったですからね。

亀井:そういう状況だと、知らなかったんですよ(笑)。僕が別の業界の人だったから、開催できたんでしょうね。今年は5Gがはじまるし、Oculus Questが売れていると聞いて、そろそろ本格的にVRの波が来るんじゃないかなと思っていました。僕個人としても何かVR業界と関われないかなとは思ってたので、会う前から出資はほぼ決めていました。

ー亀井さんがVRをはじめて体験したのはいつですか?

亀井:2016年頃ですね、あまりいい印象はなかったです。デバイスが高価で手が届きにくいし、視覚情報は確かにすごかったんですけど、リアリティがないというか。人が感じる意識や感覚のところにもう少しフォーカスして開発していく必要がありそう、と感じたことを覚えています。

ー今回VARKを体験してみて、いかがでしたか?

亀井:昼間のカフェで体験させてもらったんですけど、ここまで進化していたのかと驚きました。没入感がね、すごい。

加藤:亀井さんがVRやっている時、近くにいた子供たち、寄ってきていましたね(笑)。

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亀井:そうそう(笑)。2018年夏に見学させてもらったモンスターズメイトのホログラフィックライブを思い出しました。ステージ上のフィルムに映像が投影されるライブで、最初は違和感を感じたものの、慣れてくると楽しいんです。会場にいる300人が一斉にスマホをタップするとスクリーンに花びらが舞ったりして、一体感も生まれる。「この場にアーティストがいなくても、こんなに満足度が高いのか」と驚きました。それがOculus Questでできるようになっているとは、思わなかったですね。

加藤:キャッチアップ力が高い方ほど、亀井さんと同じ頃に一度VRを体験していることが多いです。ただ、当時のVRは高スペックのPCや機器が必要で、何十万円という設備投資が必要でした。部屋中にセンサーをつけて、電源タップを5個使って…「誰が使えるんだ!」と思うほど手が届かない上に、コンテンツもあまりよくなかった。それが2019年、Oculus QuestというこれだけでVRを楽しめるハードが出来て、価格は約5万円。かなり手にとりやすくなったと思います。

「ニッチに届ける」現状のVARK。アメリカでのVRとは?

ーアメリカと日本の両方で過ごされている亀井さんから見て、VRの楽しみ方に違いは感じますか?

亀井:アメリカはVRをゲームに使う人がすごく多い印象です。音楽コンテンツもあるにはあるけど、版権が厳しいことがネックなのかな。

加藤:VARKは今、VRライブの中でも日本のオタクに向けたニッチ中のニッチなコンテンツです。Oculus Questに対応したことで、遠征してライブに行くくらいの価格で、VRの世界に来られるようになりました。例えばの話ですが、今のVARKをアメリカに持っていった場合、受け入れられるものですか?

亀井:うーん、アイドルやアニメをメインコンテンツとして、とするとちょっと難しいのかな、という感覚はあるかな…。というのも、アニメや漫画に関する感覚が日本とアメリカだと大きく違うんです。日本は大人も楽しむものだけど、アメリカでは基本的に子供のためのもの。アメリカで大人がアニメや漫画を好むことは「オタク」に分類されるんです。そもそもVRを持っている人はアメリカでもニッチでしょう?

加藤:そうですね。

亀井:だから、ニッチコンテンツとして刺さる可能性は大いにあると思う。オタクと呼ばれる人々は、自分の好きなもの・世界観にお金を使う人たち。社会活動として飲みにいくよりは、家で好きなことに没頭したり、同じ価値観の人たちと会っていたい。そうなると、VR同士でどこかの街で出会うとか、そういうことに可能性を感じますね。

加藤:コミュニケーションの場として使うということですか!

亀井:アメリカは国土が広いので、同じ趣味の人を近くに見つけることが難しいんですよ。ロサンゼルスで開催されるアニメイトには、全米からオタク達がコスプレをして集まるんですよ。

加藤:それはすごい…!

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亀井:ニッチの世界だからこそ、共通の人と知り合える場がVRの中にあれば、かなり支持されそうですよね。アメリカはそもそも恋人や友達を探すマッチングサイトが盛んだから、あまり抵抗ないと思います。

加藤:アメリカでVRが広がっている理由がわかりますね。VARKを運営していると、VRの中でも「人は結局人と出会いたい」のだと感じるんです。ライブの前後にユーザー同士Twitterで交流するようになっていて、コミュニティが生まれはじめている。これがすごく面白くて、今後はVARKの中でこの流れを生めないかなと思っていたところなんです。

ー「VR=仮想空間」と考えると遠く感じてしまう方でも、同じものを好きな人同士が繋がる場所だと考えると、かなり親近感が沸きますね。

加藤:VRライブというニッチすぎる場所で出会って同じ体験をすることで、VARKが友情自動生成装置になっていくのではと感じます。アイドルに会いにいくことから、いつかは仲間に会いにいくようになっていくといいなと思っていて。

亀井:VRは没入感がすごいから、助長する気がする。これまではライブ会場に行って一緒に応援していたファン同士、ライブ会場が二次元に変わるだけ。移動しなくてもVR上で出会えて一緒に楽しめて、SNSで繋がるという形に変わっていくといいですよね。

VARKを広める鍵は、コミュニケーションにあり!?

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ー出資を受けてさらにコンテンツを充実させていきたいVARKですが、このサービスを広めていくための悩みなどはありますか?

加藤:「世界中の人を集められるライブハウスで何をプロデュースすべきか」は、永遠の課題です。出演者の幅を広げていくことは一つの軸として、「その先僕たちは一体何をしようか?」と、まだ迷っているんですよね。

亀井:オタクの文化から、もう一段昇華して欲しいという期待はあるよね。他のジャンルのアーティストやDJがVARKでライブをしたら、全然違う景色になると思う。これまでVRに興味がなかった人にも来てもらえるきっかけを作るというか。

世界的なDJのZEDDが「ゼルダの伝説」のミックスを出したように、ゲームにインスパイアされて音楽を作ったりプロデュースする有名アーティストは多いよ。そういう人たちがVRライブをすることって、難しいことじゃ無い気がする。

加藤:なるほど…。

亀井:オタクの世界だけで閉じていると、なかなか他からは入ってこれないからね。この進化を知る人が増えれば、新しいVRライブはどんどん生まれると思う。今年はオリンピック・パラリンピックの関係もあってライブできる場所が限られているから、チャンスかもしれないよ。

加藤:ライブ業界は、東京ドームだけでも年間一千億売り上げがあるような大きな市場なんです。そこにVRライブの選択肢があることを知ってもらえたら、嬉しいですね。

亀井:じゃあ、「VRライブ=VARK」だと選ばれるように、加藤くんが色々な人に伝えていかないとね。Oculus Questに対応しているVRライブはVARKだけなんだよね?

加藤:そうです!

亀井:「面白そうな人がいるところに会いに行って伝える」って社長にしかできないことだから、率先してやっていくと良いと思う! 佐渡島(庸平)さんはコミュニケーションやコミュニティ作りが上手いから、話を聞いてみたら良いんじゃないかな。他の出資者さんとか他業界の人とも、どんどん対談をしていったらいいんじゃない? 

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加藤:それいいですね! あまり表には出ない方だったのですが…頑張ります!
良いものが必ず売れるかと言われると、そうでは無い場合も残念ながらあると思います。とはいえ、VRライブを楽しんでいる方は、すでに何百人・何千人といて、ようやく上り階段に足をかけたと思っています。Oculus Questという手に取りやすくなったハードと、5G。本当のVR元年があるのだとすれば今だという要素が揃っています。圧倒的に、世界は明るいと思っています。

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対談中、VRライブの現状や加藤の悩みにも真摯に耳を傾け、実践的なアドバイスをお話しくださった亀井さん。「世の中に伝えたくてもプレゼンが苦手…」話していた加藤も、「自分が出ていかなければ」と決心がついたようです。

サムネイル撮影の際には、亀井さんがOculus Questをかけてくださるという、お茶目さを感じる場面も。亀井さん、楽しい取材をありがとうございました!

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そして、対談の中での亀井さんのアドバイスを元に、加藤が出資者の皆さんや業界関係者のみなさんとVRやVRライブの未来を語る連載がスタートします!

VARKはここから、どんな進化を遂げるのでしょうか。

次回はVR業界の初期から注目し続け、ご自身でもコンテンツ制作を行っているコルクの佐渡島庸平さんです。漫画・書籍でヒットを生み出し続けてきた編集者からは、どのような話が聞けるのでしょうか。お楽しみに。

取材・執筆:柴田 佐世子(LABOUSSOLE.LLC
編集:柴山 由香(LABOUSSOLE.LLC
撮影・バナーデザイン:小野寺 美穂(LABOUSSOLE.LLC

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