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中国の産後院体験記


待望の女の子が誕生!


2020年4月、中国ではコロナ禍がひと段落し、落ち着いてきた頃、私にとって初めての女の子が上海で産声を上げた。

当初、予定日になってもなかなか出てこず、色々調べても異常が見当たらないからもう少し待ちましょうと医者が言っていたのだが、お腹が痛い痛いと訴える妻の苦しむ姿に、これはおかしいと思い、本人の要望もあり帝王切開にて赤ちゃんを取り出すことにした。

結果的にはこれが大正解だったのだが、娘は出てこようとしていたが、へその緒が何らかの形で絡まった状態で出口に向かって頭を突っ込んでおり、呼吸が困難な状態となっており、危うく窒息死するところだったのである。

また、驚いたことに、中国の帝王切開(剖腹产)の手術スピードは恐ろしく早かった。手術室に入った妻を見届けると全く落ち着かず、手術室の周りをうろちょろ15分程していたのだが、ぱっと自動ドアが開いて看護婦さん二人が「ちょっと!そこのサパニン!(日本人)」と大声で呼ばれて、こいこいと手招きしている。は?もう出てきたの??2時間ぐらい待つのかなと考えてた自分は頭をガーンと殴られたような衝撃を受けた。

「え?私の子供ですか?」

「あんたの子供じゃなかったら誰の子なのよ!笑」

「えええっ…手術終わるの早すぎませんか」

「こんなものよ、はい、よく見てね」

看護婦さんはそう言うと子供にかけてあった毛布をさっとめくり、

「はい、あれがないでしょ、女の子よ、おめでとう」

……ほんとだ、ついてない(笑)息子は二人いるので、ついてますよ〜と言われるのには慣れているのだが、初めてついてないのを見て感動する私。

その後15分弱程で妻も出てきた。ほえ?早くね??

妻は意識もあり、私を見るなり「は〜しんどかった、私もう寝たい」と(笑)

「女の子だったよ!!!」と興奮しながら伝えると、妻はニコッと笑って「我要睡了」(私寝るわ)と言い眠ってしまった。

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中国は人口の多い国である。お医者さんも必然的に手術の件数が多くなり、同じような単純作業の手術に関してはものすごい手慣れており、熟練度がものすごく高い。子供を取り出して、15分もかからずに縫ってしまうあたりすごいとしか言いようがない。

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同仁医院は改修後非常にきれいな病院として生まれ変わり、日本の病院と比べても遜色なかった。

<出産費用>
人によるが、大体8,000〜10,000元
個室で100元/日、帝王切開の手術費2,000元(34,000円程)!
帝王切開後の投薬、経口薬が1,000元弱程
帝王切開しても総額16,000元(約25万円)で日本の半額程
※上海同仁医院

いざ産後院へ


産後、病院に5日程滞在した。妻は帝王切開だったので5日だったが、普通分娩の場合は3日と短い。それもこれも人が多いので、より早くベッドを空けて回転数を上げたいという理由もあるが、中国では一般的に産後一カ月は栄養をたくさん摂って身体を休めるという習慣があり、その延長線上に「産後院」で1か月ゆっくりする、というスタイルが主流になりつつある。

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同仁医院の入り口は野戦病院を思い浮かべるようなテントが至る所で設置されていた。徹底した体温測定と健康QRコード、14日間内の行動記録のチェックを厳しく行っていた。

もちろん、産後院はそれなりに費用がかかる為、中国の全ての妊婦さんが産後に入るというわけではない。上海のような大都市ではお金に多少余裕ある人は産後院へ、そうでない人は家族つきっきりで産後の世話をするか、「月嫂」(一カ月産後の世話をしてくれる人)を雇ったりすることが一般的である。うちはコロナ前に既に産後院と契約をしており、前金で半額を支払っていた。

退院当日、産後院が車で病院まで迎えに来てくれたが、コロナ対策により産後院に付き添いで入れるのは一人と決められており、妻の妹や息子達は娘を一目見ることすら許されなかった。

妻が選んだのは、プロのアイさん(月嫂)が24時間寝泊まりしてお世話をしてくれるコースで、日当たりの良い南側の部屋(北側の部屋は5,000元安かった)を選んだのだが、これは本当に正解だった。日当たりがよいと気分もよくなる。妻が十分な睡眠がとれるよう、夜中はアイさんが娘の世話をしてくれる、これは妻にとって非常にありがたかったようだ。

産後院では、1日三食栄養たっぷりの産後食が出され、味の好みを産後院に伝えれば色々アレンジしてもらえる。初日の食事はめちゃくちゃ豪華だったのだが、それ以降はなんか微妙な感じの料理が続き、「骗人!」(騙されたわ!)と何度もつぶやく妻。仕方なく、妻が食べたいもの(もちろん辛い物や塩辛い物などは禁止されている)を私が家で作ったり、出前を頼んだりするようになった。

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初日の食事は豪華だったが…

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日当たりも良く、部屋も2部屋あり、リラックスした環境で過ごせた。

産後院で受けられるサービス


各産後院と選ぶサービス(金額が違ってくる)によって変わってくるが、ヨガ、ストレッチ、マッサージ、お灸、子育てに関する授業、SPA等色々なサービスがあり、産後院代に含まれているものや、お金を別途支払って受けれるサービスも色々あって、産後の女性にとっては至りつくせりなところがある。

驚いたのは、スイマーバという浮き輪みたいなものを首につけて、お風呂にぷかぷか浮かせて手足を動かして訓練する機会が4,5回あったことである。

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最初は娘も「一筹莫展」(途方に暮れる)な感じでどうしたらいいのか分からないといった感じだったが、次第に慣れて手足をばたばた動かして泳ぐ(?)ようになっていった。見てるこちらは水の中に溺れてしまうのではとはらはらして見ていたが…

あっという間の28日間


当時私は会社にお願いをして、午前は在宅勤務で、息子達の朝ごはんと昼ごはん、夜ご飯の支度をしてから会社に出社、5時には退勤し産後院へ行って妻と娘に会いに行く、帰宅後夕食作って家事をこなして、というハードな生活を1か月弱続けた。大変だったが、料理のレパートリーも増えたし、腕も上がったので良かったなと。何よりも妻の負担を少しでも減らすことができたのでそれだけで満足だった。

産後院に滞在した時間は28日間(45日間コースというのもある)だったが、長いようであっという間に過ぎて行った。妻は帰宅後大変な毎日になるのだが、やっぱり自分の家がいいと喜んでいたし、息子達も初めて見る妹に興奮していた。

なんだかんだで最初はその費用の高さに面喰い、かなり躊躇した中で契約をしたのだが、終わってみれば色々細かい部分で不満はあったが、総合的には妻に産後院に入ってもらってよかったなと思った。ここでけちって、苦労させて一生恨まれるよりはよっぽどいい。金なんて健康でさえすればいくらでも稼いで取り返せばいいのだ。

もし、今後中国で出産予定がある方は、是非産後院に入ることを検討されてはいかがだろうか。

※価格帯の違う産後院を数件見学したのだが、上海で3万元以下のところは本当にやめた方がいい、野戦病院のようにカオスな状態で、一人のアイさんが4,5人の赤ちゃんを見るという体制になっているので、子供に何かがあったとしたら後悔しても後悔しきれない。清潔感のあるところ、1対1でママさんと赤ちゃんを世話してくれるところをお勧めする。10万元以上のところはお金の無駄。ただの金持ちの道楽。

<おまけ>




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