見出し画像

share

人混みを避けて、人を避けて、無言の街歩き、奇妙な暮らしに慣れかけた私の背中を不意に誰かがひとたたき。

ふりかえると品格漂うお年を召した美しいご婦人だった。

私は落とし物でもしたのかと、お礼の言葉の準備をしかけたけれど、ご婦人は私の持ち物に目が止まった様子。

「これ、般若心経が書いてあるのね、どこで買ったの?」「これは美術館に仏像を観に行った時に買ったものです。誰にも気づかれないかと思ったのですが…」「わかりますとも、絵が書いてあるし、本当にいいわ!」「わかるひとにはわかるのですね、うれしいです。」「突然、声をかけてごめんなさいね。でも、とても素敵。」「いいえ、褒めてくださってありがとうございます。」「それでは。」「それでは。」

気づいてもらえたこと、わざわざ声をかけてくれたこと、褒めてくれたこと、短いけれど朗らかな会話が出来たこと、優しい気持ちのふれあい。

素敵な気持ちこそもっと伝えなきゃ、分かち合わなきゃ。

今日は、久しぶりに柔らかな気持ちを味わえたうれしい一日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?