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フリーレンを待つ試練 『葬送のフリーレン』における通過儀礼──フリーレンを楽しむ魔法②

 二次創作はあまり書かないのですが、最初の記事『別れることが決まっているカップル』が意外と好評だったので、ちょっとお喋りをつづけてみることにしました。本業が忙しくなった場合は更新スピードが遅くなります。
 最新展開のネタバレがあるので、未読・コミックス派の方は御注意を。

 『葬送のフリーレン』は二重構造の物語です。
 まず勇者ヒンメル一行の「行きてかえりし物語」があり、それを前提に本編が進みます。不動のキャラクターは長命種のエルフや魔族たち。人間は世代交代が行われます。時間の経過に従って役割をリレーし、物語に必要な要素を代行していきます。
 第二世代であるフェルン、シュタルク、ザインは物語の中で前回パーティの役目を引き継ぐ通過儀礼を体験します。そこから未来のパーティ像が見えてきます。


フェルンの場合

 フェルンは作品の中核を担う第2の主人公です。
 そして前回パーティの魔法使い、フリーレンの代行キャラクターです。物語上はハイターの養い子であり、ゼーリエ−フランメ−フリーレンと続く頂点の魔法使いの後継者でもあります。
 フェルンが物語上、フリーレンの役目を引き継ぐためにはフリーレンを超える必要があります。
 それは一級魔法使い試験でかなり明確な形で顕現します。
 フェルンは水鏡の悪魔シュピーゲルが作りだしたフリーレンの複製体を仕留めます。その際、フェルンから第51話で「フリーレン様を殺せるかもしれません」とはっきりした台詞が出てきます。
 どのように倒すかは、『葬送のフリーレン』における魔法とは何か、という設定に繋がるので、ここでは説明しませんが、フリーレン自身も第53話において「フェルンの一般攻撃魔法ゾルトラークなら私を殺せる」と認め、師弟の間で順当に役目が引き継がれます。
 それは一級魔法使い試験が終わった第60話で登場する「この時代では きっとフェルンの方が有名な魔法使いになるんだろうね」「嬉しいね」というフリーレンの言葉に集約されます。
 その際、フリーレンが持つ聖杖の証は、フリーレンが古い時代、もはや誰の記憶にも残らない歴史の痕跡に自ら退いたことも示しています。
 作中ではフェルンを越える敵が当然のようにいますので、フリーレンはまだまだ活躍しなければなりませんが、パーティの魔法使いという役目はフェルンに引き継がれたのです。
 フリーレンがどんな役目にシフトするのかは、今のところ見えていません。

シュタルクの場合

 シュタルクは非常に分かりやすい戦士アイゼンの代行キャラクターです。そしてアイゼンの一番弟子、後継者でもあります。ただ、シュタルクはアイゼンと喧嘩別れをしてしまっていて、フェルンのように順当な通過儀礼を組むことができません。
 そこで登場したのが魔族リーニエ、戦士アイゼンの模倣者です。
 第20話で師匠の技を模倣するリーニエを倒して、シュタルクは師匠越えを果たします。
 フェルンよりも先にシュタルクは通過儀礼を抜けています。そもそもフリーレンとフェルンのパーティに戦士はいなかったので、最初からは戦士の役目を引き受けてはいますが、アイゼンの後継者としての記号が表に出始めるのはここからになります。
 以降、フリーレンはシュタルクの顔色を窺うことはせず、実力に見合った役目を予告なく振っていきます。すでに彼はアイゼンの役目を遂行しているということでもあります。
 そのため、さらに先に待つ試練も予測することができます。
 シュタルクは師匠より「上」に行かねばならないと思われます。アイゼンがシュタルクに恐怖を感じた設定があるので、彼は師と対等以上であることが示唆されているからです。
 第118話で師匠アイゼンと引き分けた大魔族・血塗られし軍神リヴァーレは生存しています。師匠も倒せなかった敵を倒すことで、シュタルクは師匠を完全に超え、新たな伝説を持つ戦士シュタルクとして名を上げることになるのかもしれません。
 純粋に物語記号を論理的に配置するとそうなる、という予測ですから、もちろん外れる場合もありますが、そうなったらカッコイイですね!

ザインの場合

 ザインはまだパーティに完全に合流していませんが、ハイターの後継者であるのは間違いありません。作中に彼の役目を継承できるキャラクターがほかにいないからです。
 ですが、ザインはハイターの弟子や血縁ではなく、通過儀礼を持たせるのが難しい設定です。
 そこで幼少期にハイターと接点を作り、ハイターの代行キャラクターである兄との間で通過儀礼が行われます。兄との一般的な巣立ちのイベントを通じて、ザインは通過儀礼を終了し、パーティでの僧侶の役割を継承します。
 それは第31話で、ハイターから伝え聞いた通りに「フリーレンが何を考えているか分からなくても(ザインとハイターはこの点も共有しています)」「フリーレンの言葉を信じて」行動することで完了します。
 しかし彼は比較的早くパーティを離れてしまいます。
 そのため、今後、ザインの能力が何らかの形でハイターに匹敵、もしくは優れていることを示すエピソードが追加されるかもしれません。

フリーレンの場合

 以上、三人は一般的な形で、いわば子供を卒業し、パーティメンバーとしての役割を継承済みです。
 しかし主人公フリーレンには、これに相当するイベントが起きていません。
 フリーレンには実質的に二人の師匠が存在します。
 一人は言わずと知れた大魔法使いフランメ。すでに第7話でフリーレンは千年たっても先生の掌の上にいると認めています。フリーレンが師匠フランメを越えるとしたら、それはエンデに着いたときなのかもしれません。
 そして二人目は大魔法使いゼーリエ。フランメ亡き今、フランメの師であったゼーリエはフランメの代行キャラクターになれる存在です。しかし第57話でフリーレン自身が「私は未だにゼーリエが望むほどの魔法使いになれていない」と認めています。
 フリーレンだけが師匠越えの通過儀礼を果たしていないのです。
 そのため、フリーレンの立ち位置は曖昧なままです。パーティの主導者はフリーレンですが、彼女自身は明確な記号を形成できていないことになります。
 少なくともフリーレンの師匠はどちらも超級の実力を持つ存在です。そのためフリーレンが通過儀礼を果たすとしたら、それは壮絶なイベントになることが予想されます。すでに提示されている記号を踏むとすれば、それは人が知ることのない隠れた激闘になる可能性もあります。
 そのとき、フリーレンがどういう存在になるのか、とても楽しみです。

 パーティの未来はまだ判りませんが、ヒンメルたちが4人パーティだったことから、フリーレンのパーティも4人以上にはならない可能性があります。
 魔法使い二人に戦士、僧侶という変則的な編成ですが、『葬送のフリーレン』の世界では魔法がかなり万能なので、これでお話を作っていくことは可能だと思います。またザインの合流タイミングまでは、全く違うキャラクターが加わる可能性もあると思います。

 以上は第118話までの情報で推測した記事です。今後、新しい展開で状況が変わってくる可能性も高いです。そのときはまた、違う記事をまとめるかもしれません。他の記事も宜しくお願いいたします。
 御精読ありがとうございます!

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