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徴用忌避者が出たら家族を身代わりに

 総督府ではこの度、「徴用忌避防遏取締指導要綱」を決定して、20日、情報課が、これについての当局談話を発表した。その内容は、勤労思想普及の一大国民運動を起こして、各町部落連盟に勤労委員会を設置して勤労動員事業を積極的に推進するのと同時に、今まで徴用を忌避して逃げていた者でも、自身の誤りに気付いて当局に自首したならば、この間の罪を問わず、生産現場に出動させる、しかし万一、今後も徴用を忌避する者がいたならば、その家族や親戚、愛国班員などから、代わりの人を出させるというものだ。
(出典:『毎日新報』1945年6月22日、原文は朝鮮語)

・解説

 『毎日新報』は朝鮮総督府の御用新聞で、戦争末期には、当局の意図をそのまま伝える広報紙のような存在だった。
 当時、本土決戦に向けての基地整備などで、日本本土での労働力需要が増大し、朝鮮からの徴用が強化されていた。だが、そこで求められているのは肉体労働に耐え得る青壮年の男子である。すなわち、それぞれの家の「大黒柱」であるから、当然、動員から逃れるために山中に隠れるなどの「徴用忌避」が広まる。
 総督府はこうした忌避者を探し出しては労働現場に送り込んでいたが、さらに本人が見つからなければ「その家族や親戚、愛国班員(日本でいう隣組に相当)」から代わりの者を差し出させることとしたというのである。
 このように、朝鮮における戦時労働動員は、しばしば法的手続きを逸脱した方法によって行われていた。「強制連行などなかった」「法律に基づいて行われていたのだから問題ない」という人がいるが、これが戦争末期の実態である。