ネット中傷被害者の救済に向けて

 SNSで誹謗中傷の投稿をした人物を速やかに特定できるようにする「改正プロバイダ責任制限法」が本日(2021年4月21日)の参議院本会議で可決・成立しました。これによって新たな裁判手続きが創設されます。
(概要)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000734827.pdf
 こうして少しずつでもネット中傷被害者の負担を軽くして救済が進んでいくことを願っています。新しい制度では、迅速かつ公正な判断がされるようにバランスのとれた運用がされることを期待します。

 言葉による精神的な被害は、肉体的な暴力による視覚的に分かりやすい打撲や出血などとは異なり、その被害の深刻さが見えにくいことから、社会的な認知や法的な対応が遅れてきたのではないかと思います。「それくらいスルーすれば良いのに」と言われて軽視されがちなネット中傷は、実際に自分がやられてみないとその辛さは分かりにくいものです。肉体的な暴力を受けた人がいても、もしその傷口や出血を見ることができなければ、相手の実際の痛みを想像し難いでしょう。精神的な暴力は、他者からはとても分かりにくいのです。追い込まれた被害者が命を落とすことになり、ようやく深刻な社会問題として認識されてきました。

 執拗に粘着されて日々嫌がらせを受け続けることで、気にしないようにしていても、いつの間にかじわじわと精神が蝕まれていき、心が疲弊していきます。相手が正体不明の匿名者であれば、どこに潜んでいるのかも分からず、さらに不気味であり不安が増します。

 現代はネット利用者が急速に増えていますが、まだ社会が上手く使いこなせていないのでしょう。SNSでは少しのきっかけで炎上が日々発生しており、対象者に反応が集中して過剰な叩きが起きやすく、また社会問題に少しでも言及すると意見が対立する人たちによる激しい口論に巻き込まれたり、様々なトラブルが起きがちです。しかし、そうしたネット上のトラブルに対処する社会システムが未発達であり、加害者に対抗しようとすると被害者側の負担がとても大きく、多くの人たちは被害を受けても我慢するしかありませんでした。そうした状況の中で、木村花さんなどの悲しい事件が次々と起きてしまいました。

 ネット上のトラブルに対処する「新たな制度」の手始めとして、「改正プロバイダ責任制限法」が上手く軌道に乗ることを切に願っています。

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