英語とサステイナビリティ

仕事で日常的に英語を使うようになって30年くらい経った。人生のおよそ半分の年月を英語と格闘していることになる。
学生の間は英語の勉強が大嫌いで、仕事で必要になって渋々始めた英語だったので、ずっと苦労してきた。にも関わらず、今でも仕事での英語には悩まされている。30年も使っているのにこの程度かと思うと情けなくこともある。

では、若い人たちに英語をしっかり勉強しておくようにとアドバイスをしたいかと言うと、全くそうは思わない。
近い将来、英語だけではなく様々な言語が自動翻訳されてリアルタイムでコミュニケーションできる時代がやってくるのではないかと思う。算盤ができなくても簡単に計算できるようになったのと同じで、英語を話せなくても日本語を話すことができない人たちと話すことができる時代がもうすぐそこまでやってきていると思う。(もちろん、外国語は仕事で使うだけではないので、外国語を習得するのは人生において大きなプラスであることに変わりはない。)

ここ10年くらいで画像解析技術が脅威的に進歩したが、次の10年は音声解析技術の進歩が期待できる。
最近テレビでは人工知能音声がニュースを読み上げている。あまり違和感を感じないレベルにまで技術は進化してきた。
多言語の同時翻訳技術を取り入れたリモート会議システムを開発しているアメリカのIT企業もあるという。これが実現すると、参加者各自がそれぞれの母国語で意見を出し合うことのできる多国間でのリアルタイム会議が成立する。

この技術が実現されると、もうひとつ別のメリットがあると思う。
全世界の現在の人口は70億人。英語を母国語で話す人たちは3.8憶人。
第二外国語として英語を話す人たちは11.2億人。
英語を話すことで繋がる人の数は15憶人だ。
しかし、英語を話せるようになったところで繋がることのできない人たちは地球上に55憶人もいる。地球上の人口の79%を占める。新しい技術は、こういった人たちとのコミュニケーションを可能にしてくれる。

これまでの15憶人の人たちが考えて作り出してきた市場は概ね競争の激しいレッドオーシャンマーケット。製品やサービスもすぐに新しいものによって陳腐化し捨てられ、ライフサイクルがどんどんと短くなる。そうならないために世界中のマーケターは何とか優位に立つためのイノベーションを引き起こそうと四苦八苦している。
一方で、55憶の人たちと共に作るマーケットは相対的にブルーオーシャンマーケット。経済的な側面も考慮すると、サステイナブルな製品やサービスが重要となると思われる。新車を売りつけるよりも、例えばリペアやリサイクルが上手く回る仕組みを作る方が受け入れられる。
つまり新しい技術の実現により、これまでの経済成長前提の資本主義ビジネスモデルが大きく変わるのではないかと思う。そしてそれは人間の未来を明るくすることができるチャンスなのではないかと思う。



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