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【つくること】 第6回超映画総合研究所”志田ゼミ” DAY1(2024.9.13)レポート

超映研セカンドシーズン、今期で一区切りとなる第六期、そのDAY.1の開催となりました。
今回プレゼンターのお申込みは定員ぴったりの6名。多すぎると選抜する辛さに苛まれるので、今回は枠の中に収まって良かったです。
また、プレゼンターの中で初プレゼンにトライした方が2名もいらっしゃったことも嬉しかったことの一つですね。一度ギャラリーで参加して様子を見つつ、では次回はプレゼンしてみようと思っていただいたという、その一歩前に出る行動力がどれほど自分にとってのNEXTに繋がることか。
超映研は参加することの意識改革によって、自主性やコミュニケーション力の広がりについても少なからず効果があるのではと、皆さんの動き方を見て感じるようになりました。
前回報告したスピンオフ超映研の開催についても、恐らくそうしたスタンスと同様のアクションだと思いますし、そんな話を聞いたり、状況を確認すればするほど、やっぱり映画にはたくさんの繋がりを生む力が溢れているのだなと思うのです。
では、超映画総合研究所 志田ゼミ第六期。今回もまた、プレゼン作品とプレゼンター諸氏による推薦解説のポイントをご紹介していきましょう。

推薦作『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』2019
監督/ユーソ・ラーティオ、ユッカ・ビドゥグレン
出演/ヨハンネス・ホロパイネン
プレゼンター/りえぞーさん

トップバッターはまさかの北欧メタルバンドの面々が主人公という、サブタイトルを目にしただけで、これは観なくてはいけない、だってこんなにもおかしなタイトルなんだから面白くないわけがない!と思わせる作品です。
志田さんもタイトルは確認したことはあったそうですが、さすがに優先順位としては上位に食い込まず(笑)、この機会にようやく鑑賞され、大なり小なり笑いが止まらないという、最高にブッ飛んだ映画だったとのこと。
プレゼンは今回が三回目となる常連りえぞーさん。毎回個性的な作品を持ってきていただいてましたが、この作品は恐らく一番の個性派でしょう(笑)。まず「これ誰も観てないですよね?」という事前確認から始まり(もちろん誰も観ていませんでした)、本作がフィンランド映画であること、フィンランドはその国のイメージとは程遠い世界有数のメタル大国であること。そして、毎度笑いの要素が足りないフィンランドの国産映画たちの印象を覆すような、可笑しくて楽しくて賑やかな作品を、大規模予算とともに作り上げよう!と製作された、なかなか気合いが入った作品であること、などが熱く語られました。
志田さんからは、北欧のイメージと言えば「かもめ食堂」にアキ・カウリスマキ監督による一連のオフビート作品たちですが、これはまったく真逆のフィールドに位置する最高の音楽映画である、ということを補足されました。
ちなみに、ダメ押しの一言はりえぞーさんからで、「今年フィンランドでパート2が公開となります」とのこと。今回の機会に観ておけば続編パート2も楽しめる!というのはなかなかの殺し文句ではなかったかと。相変わらずのプレゼン・テクニックに感心させていただきました。


推薦作『タレンタイム~優しい歌』2009
監督/ヤスミン・アフマド
出演/パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール
プレゼンター/じゅんじゅんさん

初プレゼンのじゅんじゅんさんは、本作を飯田橋ギンレイホールにて二回、そして今回のプレゼンのためにもう一回鑑賞してきたと。これまで二回も観た映画はないと断言するほどだったので、それだけこの映画に愛をもって接していらっしゃる様子がプレゼン冒頭から伝わってきます。
そして、本作がマレーシア映画ということだけでギャラリーの皆さんの好奇心が一気に作品に向けられたような雰囲気も。さらに女性監督ヤスミン・アフマドの遺作となった作品で、本作完成後すぐに亡くなられたということもあり、思わぬ感情意識が伴って鑑賞してしまう作品でもあるとのこと。
というわけで、プレゼン前半の情報だけでも、既にかなり興味深いレジェンダリーな作品なのだなということが伝わってきました。
例えて言えば、日本のテレビドラマ「北の国から」のような人間ドラマであり、アフマド監督の母親が日本人でもあるとのことで、その影響下か、小津や「男はつらいよ」をリスペクトしているということも、とても興味深いポイントとして共有されました。
またマレーシアという国は多人種国であり、それゆえに様々な言語が自然に飛び交うのが日常であると。映画の中でもそうした状況が多々見られるので、そこには違和感を感じず観てほしいという話も。
音楽はドビュッシーの「月の光」がフィーチャーされつつ、マレーシアのアーティスト、ピート・テオが手がけた歌唱楽曲も印象的で、それについては「これもまた音楽映画の域に入る傑作」、と志田さんからお話がありました。


推薦作「丹下左膳余話 百萬両の壺」1935
監督/山中貞雄
出演/大河内傅次郎、沢村国太郎、喜代三
プレゼンター/野村晴一さん

1935年公開の本作は、大河内傅次郎の当たり役、丹下左膳の外伝的作品。内容もシリアスな剣術映画ではなく、人間ドラマを母体とするコメディータッチの楽しい作品。
プレゼンターの野村さんは今回が三回目のプレゼンとなりますが、前二回もプレゼン申し込むも選抜から漏れてきたので今回の気合いの入り方も違う様子。
持参した本作の監督、山中貞雄作品のDVDボックスを披露しつつ、いかに本作が日本映画史にとって重要な作品かをじっくりとプレゼン。
まずとにかく山中監督による鮮やかな映画術が素晴らしいと力説。作家性がしっかりと出ていながらも、基本的にはエンターテイメント性が何より優れているという点。さらにモンタージュや小道具などでコミカルに展開していることや、人物描写がそれぞれ立っていて、どのキャストも個性を際立たせている見事な演出など、30年代とは思えない斬新な作品となっているとのこと。
ちなみに公開された1935年は、かの石原裕次郎がまだ一歳のときという時代で、その頃はもちろんまだ戦時中。山中貞雄作品は、その戦時の影響もあってこれを含めた全三作しか現存していないという。左膳役の傅次郎はもちろんですが、相手役の喜代三(きよぞう)は芸者あがりの女優で、劇中披露される浪曲演奏も素晴らしいということや、準主役としてそのキャラを楽しませてくれる沢村国太郎が、あの津川雅彦の父親であることなど、思わずへ~と頷いてしまうトリヴィアも満載。
モノクロ古典映画と言えども侮れない作品なので、こうした機会にしか観ることはない作品。是非堪能していただきたいと〆られました。


推薦作「スウィングガールズ」2004
監督/矢口史靖
出演/上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ
プレゼンター/藤田さん

プレゼン初となる藤田さんからは、ゼロ年代、ぴあフィルムフェスティバル出身監督、矢口史靖による音楽コメディー作品が登場。
これには懐かしさもあいまって笑顔とワクワク感が一気に場内へと広がりました。
藤田さんのプレゼンは「ゴーストバスターズ」や「エボリューション」といった、さえないおじさんたちが何とかして苦難を乗り越え、自分たちでできる範囲内だがなんとか達成し一つのラインを乗り越えるといった作品たちの紹介からスタート。
こうした、言って見ればヘッポコたちが偶然と奇跡も含めて巻き起こす大逆転劇(言い方を替えると「なんだかんだで最終的にはなんとかなる」という構成)が大好きで、そこから得られる達成感と共有度は何より強いと説明。
そして本作は、例にあげた世界公開レベルのエンタメ作とは規模が違うが、たとえその舞台が日本の田舎町となってもマインドが変わらないので、とても愛すべき作品なのだと力説。
自分たちの方法論でも夢や希望をある程度の結果として残し、それがしみじみと感じられるのが矢口監督の味とのことで、「ウオーター・ボーイズ」「ハッピーフライト」といった代表作も紹介。
こうした作品の根底に敷かれている主旨を説明されると、映画の観方も如実に変わっていくから面白いと思わされました。たまたまですが先にプレゼンされた「ヘヴィ・トリップ」も同じスピリットを持った音楽映画なので、こうして同主旨な二作が一緒にラインアップされていることもまた楽しい一面でした。


推薦作「37セカンズ」2019
監督/HIKARI
出演/佳山明
渋川清彦、宇野祥平、石橋静河、尾美としのり、板谷由夏
プレゼンター/miwaさん

こちらのmiwaさんも今回がプレゼン三回目。毎回楽しませてくれる作品を推してくれるので、今回も期待が高まりましたが、実はこれまで以上に真摯で繊細な作品がインされたので、miwaさんの映画に対する幅広さをも感じられる機会となりました。
作品はこれがデビュー作となるHIKARI監督によるもので、オーディションで出会った佳山明(めい)にほれ込み、脚本内容も彼女にあわせてかなり手直しをしたくらいのタッグとなったということです。
主人公は脳性麻痺のため体が一部自由に動かないなどといった設定ではあるが(演じる佳山も同様の障がいを持つ)、本作を観始めると、それがどうしたと言わんばかりに、多くの感じ得なかった日常へと主人公が冒険よろしく繰り出していくので、これは想像していた内容と全然違うな…!! とまずは気づかされると解説。
つまり、いわゆる教育映画的ではない、とんでもなくドラマティックに障がいを乗り越えていく映画であると。言い換えれば、誰もが抱えている不確かなもの、それとしっかり向き合い(あるいは対抗し)、自らの力でコンフォート・ゾーンを乗り越えていくという、しっかりとした青春映画であると名言。そのギャップを逆に楽しんでほしいとのこと。
志田さんからは、どうしてこんな作品が成立できたのかが不思議。そして奇跡的と思うほどの傑作!と説明がありました。


推薦作「コンタクト」1997
監督/ロバート・ゼメキス
主演/ジョディ・フォスター
プレゼンター/志田一穂

この超映研ではあまりお目にかからないのはSF映画ではないか、という志田さんの気づきから、あえてSF映画、しかもサイエンス・フィクションではなく、サイエンス・ファクト、科学的にアリではないか、と思わせる作品をピックアップとのこと。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、「フォレスト・ガンプ」と傑作を送り出してきたゼメキス監督が挑んだのは、カール・セーガン原作によるこのSF大作。
志田さんとしては、まず90年代後半当時でも、もしかしたらコレ実際に起こり得るのでは?と本気で思いましたと説明。端的に言えばそれは異星人とのコンタクト=接触ということなのですが、劇中事態が起こってからの展開はその規模感は半端でないにせよ、なるほどと思うほどリアリティーに満ちており、民間から政局まで実にスピーディーに「異星人とのコンタクト」に対する策がとられていく。そんな様子もまたリアリティーを感じさせるので、あわせて楽しんでほしいとプレゼンされました。
最後は自身もUFOを呼ぶ儀式の末、未確認飛行物体を確認、目撃したことがあると告白(笑)。もはや宇宙は地球だけではないと、これまたリアルにメッセージを発信して〆ようとされましたが、あまりにもムー的になってしまいやや反省とのこと。

以上、今回も前回に引き続き、計6作品のプレゼンをたくさんの方々とシェアいたしました。


残り時間は恒例ディスカッション・タイム。往年の日本映画「丹下左膳」に興味が向かったのか、すかさずAmazonプライムで検索した方がこれですかとプレゼンターに問うと、「それはリメイクで、あまり面白くないから観ない方が」と助言。今回プレゼンした1935年の「丹下左膳」はなぜかYouTubeで観れてしまうので、クオリティーが悪くてOKであればそちらをどうぞとリマインド。
また、今回の6作品の中で「泣ける映画」はありますか?という質問も。すると「タレンタイム」のプレゼンターから、自分は本作を二回観て、どちらも泣きました、という頼もしい意見も。
志田さんからはこの6作品すべて観た中で、一本だけ大号泣した映画がありましたと報告あり。その作品がどれなのかはDAY.2のときに明かすということにして、果たしてそのような感情を揺るがす作品に、参加された方々が出会うことができるかどうかは、二週間の鑑賞期間のあいだのお楽しみということになりました。


というわけで、この志田ゼミは推薦作を観て、それについてまた意見交換していくDAY.2をもって着地。そのDAY.2は9月27日になります。
・なぜその作品を観たいと思ったのか?
・どうやってその作品を探して観たのか?
・観た上でどう思ったのか、どう感じたのか?
・そして、その映画から次に思いつく映画とは何か?
そんな意見交換を行い、志田が総括していきます。そうして今回集まった作品たちを今一度最終的にシェアしたところで、全行程終了となります。

さて、この6作品、今回もたまたま集まったものなのか、
あるいは何か意味をもってここに集まったものなのか?

重要な気づきは、再び集合するDAY.2にあります。
このギャラリーは引き続き申し込みOK!
お楽しみに!