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ただ笑っていて | セルフライナーノーツ

Redemption 最後のセルフライナーノーツ。

「ただ笑っていて」

曲を作っている時、自分が紡いだメロディと言葉に涙が溢れ出すことが稀にあります。モヤモヤの奥にある核心に触れて、湧いてきた感情の真意に気づいて、ほんとうの声が生まれる。わたしにとってそれは私自身を救う瞬間。「ただ笑っていて」この曲もそうです。

幼い頃、父が何に苦しんで怒っているのか、母が何に悲しんで泣いているのか、わたしにはまだ理解できなくて、部屋が悲しみと怒りで充満するたびに、不安な気持ちでいっぱいになりました。そんなある夜、リビングから聞こえてきた両親の声に目が覚めて襖からこっそり覗きこむと、お笑い番組を見ながら仲良く笑っているふたりを見つけました。自分のことのように嬉しくてにんまりしたの覚えています。その日はきっと幸せな気持ちに包まれて眠ったのだろうと思います。
わたしの胸には、楽しかった思い出と一緒に、あの時の悲しみや、「笑ってほしい」という願いが、幼少期の原体験として染み付いていました。

そして今。この歌を歌いながら心に浮かんでくるのは、住んでいた場所を追われて、難民キャンプで命をつなぐ子供たち。目の前で家族を亡くし、泣き叫ぶ子供たち。破壊された町で泣くことにも疲れ果て「戦争をやめて」と訴える子供たち。連日、ガザの子供たちの姿をSNSで目にしています。

大人になった今、幼少期のわたしから届いたメッセージ。
世界中の子供たちから、大人たちへのメッセージ。

争わないで。笑っていて。

2015年 カンボジア 子供たちの笑顔が輝いていた!
写真 石井麻木 



ただ笑っていて

どうして泣いてるの?ママ どこか痛いの?
小さいわたしに泣きついて 今も覚えてるよ

ただ立ち尽くして 理由もわからなくて
あれからわたしに悲しみがずっと染み付いてるんだ

あのね
ただ笑っていて ただ笑っていて
ただ笑いかけてほしかっただけだったの
だから
ただ笑っていて ただ笑っていて
ただ笑いかけて笑っていてほしかったの

どうして怒ってるの?パパ 何か辛いの?
小さい団地で居場所もなくて 今も覚えてるの

部屋の片隅で 理由もわからなくて
あれからわたしに悲しみがずっと染み付いてるんだ

あのね
ただ笑っていて ただ笑っていて
ただ笑いかけてほしかっただけだったの
だから
ただ笑っていて ただ笑っていて
ただ笑いかけて笑っていてほしかったの

もう大人になったよ 今だからわかるよ
でもあれからわたしに悲しみがずっとずっとずっと… 染み付いてるんだ

あのね
ただ笑っていて ただ笑っていて
ただ笑いかけてほしかっただけだったの
だから
ただ笑っていて ただ笑っていて
ただ笑いかけてほしかっただけだったの
ただ笑いかけてずっと笑っていてほしいの

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