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予兆 | セルフライナーノーツ

アルバム「Redemption」のセルフライナーノーツをはじめます。
1曲1曲に込めた気持ち。ちょっとした制作秘話など。

まずは、「予兆」

この曲は7年も前に作って、当時はリリースには至らず、密かに自分の中であたためていた曲です。

いつだか大自然のいろんな色をこの目で見てみたいと思い立って、北海道の知床へひとり旅をしていた時のこと。計画も立てず無鉄砲に来たおかげで、なんと台風が直撃。しばらく屋外はどこにも行けずに、網走監獄や博物館や、やたらと屋内観光ばかりをしていました。天気が少し弱まってようやく車を走らせても、オホーツク海も山も高原も灰色の景色。やっと見つけたのは池が映したコバルトブルー。無色透明だからこそ映る色でした。

宿に着くものの、その夜は大荒れ。大自然をうねる雨風の音は今まで経験したことのないような迫力で、ひとりで過ごすのがとてもこわくなりました。わたしはその時はじめて、被災して避難している人の心細さや、不安な夜を、ほんの1ミリだけでも、身に沁みてわかったような気がしました。

"ただこんな夜には あなたが無事でいてくれたなら これ以上何も望まない"

この時、涙と一緒にこぼれてきた歌が「予兆」です。


東日本の震災以降、全国各地で地震や水害、自然災害がわたしたちの生活に猛威をふるうたびに、ご縁があれば被災した地域に足を運び、たくさんの景色を目の当たりにし、そこで暮らしていた人たちのお話を聞いて、同じを時間を過ごしました。
決壊した防潮堤、津波にさらわれて建物の基礎だけが残る沿岸部の町、焼けただれた小学校、全壊半壊の家々、崩落した橋、傷だらけの人工林、土砂で覆われた田畑や家屋、がれきの山、混濁した川… どれもこれも泣いていた景色。
自然の力に圧倒されて、人間としての無力を感じると同時に、壊れてもまた建て直し、失ってもまた生きていく人たちの力にも何度も心動かされました。悲しみからも笑顔が咲いてました。
そんなふうにわたしのなかで"命"というテーマが年々大きくなり、自然災害、人災、争いが絶えない今だからこそ歌いたい歌になりました。

人間にとって、"命"ってなんだろう。



予兆

何も出来ない 嘆いたのは
まぶたの裏に あの惨劇が
押し寄せるように 逃れる町
何が出来ると 問いかけた

嵐が去るのを待って
争いが終わるのを願った

ただこんな夜にはあなたが無事でいてくれたなら
これ以上なにも望まない
これ以上 これ以上 これ以上 もう

こんな時ばかり 祈りを捧げる私たちは
命の予兆に 耳を傾けずやってきた
空は色を変え 海は呼吸する 大きな
命の予兆が 目の前に広がる 今もまだ

嵐はいつか去るのに
争いが終わらないのはなぜ

ただこんな夜にはあなたが無事でいてくれたなら
これ以上なにも望まない
これ以上 これ以上 これ以上
これ以上 これ以上 なにも
これ以上 もう


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