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まったく気にしなくていい

 個人営業、法人営業をちょっとやってきてつくづく思うことは、自分が「やってしまったぁ」とか「絶対に問題になるなぁ」と思っていることの99%は相手はなんにも思っていないしほぼ問題にもならない、ということです。むしろ逆にいい方向になったほうが多かったかも。


飛び込み営業


 金融営業時代に飛び込み営業をしていた時の話です。アルミサッシ加工と建具の製作をしている小さな会社に飛び込んだんですが、そこの社長がちょうどお客さんと事務所で商談中でした。
 事務所のドアを開けて大きな声で「おはようございます!社長はいらっしゃいますか?」というと、ドアを開けたすぐ目の前の応接セットのソファーから白髪混じりの日に焼けた社長さんが「朝から何をでかい声で入ってきてんねん!!うるさいんじゃボケ!」と面と向かって怒鳴られました。「出て行け!!」と言われたので簡単なお詫びとともに出ていったんですが、その日の夕方もう一度飛び込み訪問しました。
 「こんにちは!社長さんはいらっしゃいますか?」というと老眼鏡を下にずらした社長さんがこっちを見て「なんや?朝来たにーちゃんか?」といって手招きしてくれました。
 結局受注には至りませんでしたが、自分も昔はよく飛び込み営業をして追い返されたとか、うちの会社の社員にも怒られるまで営業してくるくらいの気概が欲しいだのとか、最後には「にーちゃん、よくもう一回ワシに営業に来たな」と逆に褒められ、麦茶出してくれました。私はただ上司から地図を渡されて、このエリアから受注するまで帰ってくるなと言われていたので、同じところに飛び込むしかなかっただけなんですが。。。
 まぁ、そんなもんです。その日いいことがあって夕方の社長の機嫌が良かっただけかもしれません。ただタイミングだけの話です。



 システムの受託開発の営業時代の話ですが、大手SIerから二次請けし、社内で受託開発をしていました。
 「この仕様通りにやると絶対にまともに動かない」「開発しても意味がない」と詳細設計している社内のSEから言われ、それを元請け窓口担当者に伝えるんですが、先方担当者としてはとにかく仕様通りに一旦作れというだけで全くまともに取り合ってくれません。
 そらそうです。要件定義から基本設計・画面設計、シーケンス図作成と、数ヶ月〜1年程度かけてからの詳細設計・インフラ設計に入っているので、そもそも検討漏れや仕様ミスがあるからこの部分もう一回詰め直したい、だから追加要件詰め期間の数ヶ月分のエンジニアを抱えている追加費用を出してくださいって、なかなかお客様には通りません。お客様に自分たちの詰めの甘さを隠して勝手に手戻りすると、その期間の費用はベンダ負担になる上に下手すると遅延金を請求されかねません。なので要件定義時にお客様が承認ハンコを押したものを盾にだいたい作った段階で「これじゃダメですね」と伝えて追加開発の発注をもらうことになります。(だいたい値切られるんですけどね。)こんなことやってたらシステム開発の大半が失敗するのも当然です。某銀行とか某総務省とか。。。一般家庭が同じことをしたら地獄見ます。
 ちょっと話の道が逸れましたが、こんなプロジェクトを担当したときは必ず元請けと下請けで費用負担について揉めます。このプロジェクトでもご多分に洩れず、元請けのプロジェクトオーナー(PO)と下請けの会社(私)との間で落とし所を見つけるためのやりとりがはじまりました。ここまでは前置きでここあとやっと本題です。すみません。
 要件詰めの段階でおたくの顧客コントロールが悪いと詰めれば、サブシスごとに要件定義を進めていく中で都度情報を渡していたのだから、その時点である程度わかってたはずなのになぜ今頃になって言うのか、など言い合いが始まりました。そこで自社側のPMが元請けPOに自分たちは悪くないという意味を込めて長文メールを送りました。
 その出だしの定型文で事件発生です。

 「いつもお世話になっておりません。○○株式会社のXXです。」

 本人はいつも通り書いたつもりだったみたいですが、心の声が本音がつい漏れてしまったようです。
 同じプロジェクトのメンバがメール文面に気づいて本人に伝えると、慌てて謝罪メールを送っていました。その後すぐにPOに私がアポをとり、メール文面に関する謝罪と、あわせて費用負担はできず全額請求する旨をお伝えすべく訪問しました。
 先方POはメール文面のことは笑ってそんなことはどうでもいいよといい、「お互いの会社の立場から仕事としてやっているだけだから、あとは社長同士で決めてもらいましょう。」ということで、そのまま3人で昼間から飲みに行くことになりました。
 あれから10年ほど経ちますが、そのPOも私も違う会社にいますがいまだに付き合いがあり、あのころはデスマーチを楽しんだねという話をしています。
 そんなものです。自分が「やってしまった!」と思ったことの大半は相手はなんとも思ってないのです。その場で対応しておけば、あとはむしろ良くなるしかないのです。

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