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本に書いてある知らない食べ物ってすごくおいしそうに感じる


 架空のお話や、全く違う時代の話に出てくる食べ物ってどうしてあんなにおいしそうなんだろう。わたしはハリーポッターを読みながら「バタービール」という言葉に胸をときめかせ、中世ヨーロッパの質素な食事の代表格として描かれる「ライ麦パン」や「レンズ豆のスープ」という物に想像を馳せて生きてきた。人間はわからない物を想像で美しく補完してしまうものだと思う。特に本を読んだ時に出てくる知らない食べ物は見た目も匂いも全く分からない。だから本で知らない料理にでくわすと尚更、湯気をあげて出されるホカホカのおいしそうな料理を想像してしまうわけだ。


  一体これらの食べ物はどんな味で、どのような見た目をしているのだろうか。これが実際にある食べ物なら、検索してみれば見た目くらいは知ることができる。ただ空想上の食べ物となるともうこれはお手上げである。USJにいけばバタービールはとりあえず飲むことができるけれど、このレベルで有名じゃないと誰も再現レシピなんか作ってくれないのだ。


  私は料理の心得も、新しいレシピを組み立てるだけの科学的知見もない。だから空想上の料理を美味しく再現する、みたいな芸当は到底できそうにない。本に書かれたおいしそうな料理はいつまでも私の手の届かないところにあって、なんか良さそうなものとしてずっと私の中にあるのだ。


  けれどもしかしたら、こういう食べ物は空想だからこそ美しいのかもしれない。実際に食べてみて夢を打ち砕かれる可能性は大いにあるし、なーんだこんなものかという感想になる可能性だって十分考えられる。そうなったら私の夢は一つ消えてしまうわけだし、空想によってワクワクしていた心も萎んでしまうだろう。だから、私の前に天才料理人が現れて私の夢を叶えてあげましょう!と言わない限りは、私はきっと空想の中の美味しいご飯に夢を見続けるのだと思う。

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生活費の足しにさせていただきます。 サポートしていただいたご恩は忘れませんので、そのうちあなたのお家をトントンとし、着物を織らせていただけませんでしょうかという者がいればそれは私です。