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おすすめ刀剣本⑥「刀装具 新 解体新書」

久々にお勧め刀剣本の紹介です。
今回は刀装具に関する本で2022年1月17日に発売されたばかりの、「刀装具 新・解体新書 著:生田享子」という本です。

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①どんな本?

刀装具といえば、鐔をはじめ、目貫、小柄、笄、縁頭など、拵につく部品の事を指し、刀の着せ替えが出来る部分とも言うべき部品ですが、その刀装具にのみ焦点を当てた本になります。

著者の生田享子さんは、学習院大学史学館学芸員を経て日本刀文化振興協会の特別研究員を務め、同時に国際刀装具会の日本正会員であるそうです。

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(画像出典:LOHAS TALK


②個人的感じたこの本の良い所

・刀装具の大枠を抑えやすい

刀装具というと材質や絵柄が膨大で何から手を付ければ良いか分からず混乱していたのですが、実主体の鉄鍔から装飾性の高い家彫や町彫がなぜ現れてきたのかという刀装具の成り立ちの大枠を冒頭の僅か1Pちょっとで説明してくれているので、時代変化を捉える事が出来ました。
刀で言えば、まず時代毎の姿の変化を理由を交えながら理解出来るような感じでしょうか。
次ページには一覧表にて、誰がどのジャンル(鉄鍔?家彫?町彫?)に属するのかが一目で分かるようになっているので、この冒頭の2Pで頭の中がかなりすっきりと整理されるはず。

・刀装具の楽しみ方が書いてある

刀装具の楽しみ方というのは私の場合は絵が何となく上手いとか、この構図が美しいとか、世界観が好きとか、そんなざっくりとした見方しか出来ておらず、技法など含めた深い見方は一切できていなかったし、描かれた絵をじっくり見て想像する事もしていなかった。
何を楽しむのかがイマイチ理解出来ないまま、何となくぼーっと見て終わっていた。
そんな時にこの本に書いている以下のような文章を見てハッとした。

「豊臣秀吉が権力を持っていた時代は、秀吉の旗印「瓢箪」を描いた刀装具が多くみられるが、徳川幕府が力を持つにつれて姿を消していく。」
(引用元:「刀装具新解体新書P15 著:生田享子」より)

刀装具はその時々の時代にトレンドがあり、文化や思想を表しているのだ。
この見方というか発想は今まで出来ていなかったのでとても収穫があった。

他にも生田さんの感性が読んでいて面白い。
例えば以下の加納夏雄の目貫について。

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(画像出典:PR TIMES

私なんかがこの作を見ても「あぁ躍動感のある波が金で作られている」程度の感想しか持てていなかったのですが、生田さんの感性はとても深いものでした。

「表裏2つの目貫が向かい合う姿はで、爪を立てて対峙する雌雄の龍にも鳳凰にもみえる。」
(引用元:「刀装具新解体新書P68 著:生田享子」より)

た、たしかにっ!
言われてみれば上の目貫は翼を広げた鳳凰に見えるし、下の目貫は口を大きく開けて今にも襲い掛かりそうな龍にも見えます。

そしてまだまだこれだけで終わらず、波であれば水を連想させる四分一など表現しても良いものだが、なぜ夏雄は金を使い表現したのか?という点に対して、

「朝日を受けて輝く生命力あふれる波を書きたかったのであろう。」
(引用元:「刀装具新解体新書P68 著:生田享子」より)

と。
朝日を受けて輝くという所まで想像できるのがとても凄い。
この生田さんの感性と想像力というのもこの本の魅力に感じました。


③終わりに

刀装具の本は過去に沢山出ているのですが、ただ単に刀装具に描かれた図柄について説明するだけのものも多いです。
それが故になかなか入り込める本というか、興味の取っ掛かりになる本というのがなかなかありませんでした。
この本を買って刀装具の楽しみ方が何となくですが分かったというのは私の中でとても大きな収穫で、今後美術館や鑑賞会での楽しみがまた一つ増えそうです。
愛刀の拵えも作りたいので、時間は掛かるかもしれませんが好みの刀装具を集めたいと思います。

「刀装具 新・解体新書」は以下から買えます。
刀と刀装具は切っても切れない関係かと思いますので、刀装具を知れば刀をもっと深く楽しめるかもしれませんね^^
私も頑張って勉強します!!


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

その他のお勧め刀剣本は以下に書いています。

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