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日本刀の茎の黒錆びは除去NG!

今回は注意喚起系の記事になります。
現代刀など新しい刀を除いて基本的に日本刀の茎は以下のように錆びてます。
このような錆を見るとついピカピカにしたがる人が一定数いるようですが、日本刀の茎の黒い錆びは絶対に取らないで下さい
(但し赤い赤錆は定期的に除去しましょう)

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赤錆は以下のようなオレンジ色の錆びです。

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(画像転載元:防長古美堂

①なぜ茎の黒錆びをとってはいけないのか

それは茎の黒錆が日本刀の重要な歴史を表しており、見所の一つになっているからです。
日本刀はつい刃文などのある刀身に目が行きがちですが、茎ほど情報が詰まったところはありません。
茎の錆びは時代を最もよく表している箇所でもあります(後述)。
特に刀工の名が茎に刻んである場合、その部分は唯一製作当初からいじられていないことになります。(偽銘を除く)
一方で刀身の方は何度も研がれて制作時の状態に比べてかなりやせ細っているかもしれません。
茎を見ればもともとの刀身の厚みなども分かったりします。
それ以外にも、刀の偽物(偽銘)を見分ける際の重要な要素の一つに錆びの付き具合があります。
他にも、見る人が見れば錆びから再刃(刃を焼き直した)を見抜けるそうです。
再刃は美術品としての価値が殆ど無くなると言われており、現代のように刀を美術品として見ている現代においては再刃は嫌われています。
また、黒錆が表面をコーティングしているので悪い赤錆が浸透しづらく、刀を保護する効果もあります。


②茎の時代による錆びの変化

それぞれの時代により製法や材料が違うと考えられている為、必ずしも同じように錆びていくかは分かりませんが、時代毎の錆びを比較してみます。
錆びは製作当初は当然ありません。
何百年と時が経つにつれて黒く艶やかな美しい錆びに成長していきます。

・製作直後
もともとは刀身と同じ銀色をしています。
そして鑢目という細かい線が茎に入っています。

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・150年位経った比較的新しい錆び
部分的に黒くなっていきます。鑢目もまだしっかり残っています。

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(画像転載元:刀の蔵 月山雲龍子貞一造 明治二己年仲夏

・400年位経った錆び
均等に黒錆びが満遍なく付いています。このように黒錆びでしっかりコーティングされていれば悪い赤錆等が侵食しづらくなります。
鑢目が少し見えづらくなります。サラサラとした柔らかい肌触りです。

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・800年近く経った錆び
時間と共に表面が朽ちてトロンとした艶やかな黒い錆びになります。
触るとしっとりしています。

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経過した年数により錆びの色味が変わっているのが分かると思います。
なので例えば800年近く経過した平安末期~鎌倉初期の生ぶ太刀(摺り上げられていない太刀)で茎が400年前位の錆色をしていたら何か怪しいと疑った方が良いわけです。
つまり茎の錆びはその時代を断定する決め手となる場所であり、その錆びを取ってしまうと美術品としての価値が下がる他、文化財の破壊になってしまうわけです。
何百年と掛けて付いた錆を取ってしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。(錆び付けという方法がありますが、自然な錆びとはどうしても異なるようですね)

③終わりに

この記事を読んで、茎の錆びの重要性を少しでも理解頂けたら嬉しく思います。全部をピカピカにしたいのは何となく理解出来ます…でも我慢して下さい。
この辺りはあまり知られていない気もするので是非多くの方に知って頂きたいです。
ただ、注文打ちした現代刀に保管ミスで錆びが付いてしまったので取ってもらいたい、などは全く問題ないと思いますので刀工の方に相談して除去してもらうのが良いと思います。
古い刀の茎は絶対にピカピカにしてはいけません。
以下の動画内でも「清磨の茎をピカピカにした人の話」が登場しますが、こういう人がいるから怖い…
(※動画のUP主が茎をピカピカにしたわけではありません)


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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